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進め方

会社を売る時期を考えるときの材料 国の白書とガイドラインにある年齢・期間・準備

会社を売る時期を決めるのは社長ご自身です。この記事は時期の助言をせず、中小企業白書(2026年版)と国のガイドラインにある、経営者の年齢・後継者の状況・M&Aにかかる期間・準備の中身を、出典と図表の番号つきで並べました。

書いた人

M&A仲介の通信簿 編集部

国の「M&A支援機関登録制度」の届出を毎月取り込み、仲介会社の手数料を同じ条件で計算して載せています。記事は中小企業庁のガイドラインなど公的な資料にもとづいて書き、仲介や交渉、価格や税の助言はしません。

卓上カレンダー・砂時計・決算書のファイル・会社の建物の模型が並ぶ机と、カレンダーを見つめる社長と案内役のアイソメトリックのイラスト
社長

65歳になりました。会社を売るとしたら、いつごろがいいのでしょうか。

案内役

いつ売るかを決めるのは、社長ご自身です。このサイトは時期の助言はしません。そのかわりに、国の白書とガイドラインにある「考える材料」と「準備にかかる時間」を並べます。

先に結論

  • 売る時期を決めるのは社長ご自身です。ここでは、国の白書とガイドラインにある材料だけを並べます
  • 2026年版中小企業白書によると、2025年は中小企業の経営者の半分以上(52.5%)が60歳以上でした。後継者がいない会社の割合は50.8%で、2016年の66.0%から下がっています
  • 事業承継ガイドライン(第3版)は「経営者が概ね60歳に達した頃には事業承継の準備に取りかかることが望ましい」と書いています
  • 中小M&Aガイドライン(第3版)は、買い手とのマッチングに「数か月~1年程度」、成約したあとの引き継ぎに「3か月~1年程度」かかることが多いと書いています。最初の相談は、直近3年分の決算書などの写しで足りるとしています
  • 時期を考える材料として、今の金額での手取りの見込みも計算機で見られます:譲渡額5,000万円で計算する

国のデータで見る経営者の年齢

説明会で、社長と同じ年ごろの経営者たちが並んでグラフを見ている場面
社長

ほかの会社の社長は、何歳くらいなのでしょう。

案内役

2026年版の中小企業白書に、中小企業の経営者の年齢の分かれ方が載っています。2025年は、60歳以上の経営者が半分を超えました。

中小企業庁の「2026年版 中小企業白書」(2026年4月24日閣議決定)の第1-1-45図は、中小企業の経営者の年齢の分かれ方を示しています。2025年の割合を、10歳ごとにまとめると次のとおりです。

経営者の年齢 2025年の割合
50歳未満 17.6%
50〜59歳 29.9%
60〜69歳 27.2%
70〜79歳 19.6%
80歳以上 5.7%

10歳ごとの割合は、白書の図にある5歳ごとの割合を足したものです。60歳以上を足すと52.5%になります。白書は「中小企業の経営者年齢の水準は依然として高く、2025年は60歳以上の経営者が過半数を占めている」と書いています。

白書は、倒産ではなく事業をやめたり会社を解散したりした会社(休廃業・解散した会社)の経営者の年齢も示しています(第1-1-43図)。

  • 2025年の経営者の平均年齢は71.5歳でした。2016年は67.4歳です
  • 2025年は、70代が39.3%、80代以上が24.4%でした
  • 白書は、2016年以降、「70代」「80代以上」の割合と平均年齢が上がる傾向にあると書いています

後継者がいない会社の割合

社長

後継者がいない会社は、多いのですか。

案内役

白書によると、後継者がいない会社の割合は下がってきています。それでも2025年で、およそ半分です。

2026年版中小企業白書の第1-1-44図は、中小企業のうち後継者がいない会社の割合(後継者不在率)を、経営者の年代別に示しています。

経営者の年代 2025年の後継者不在率
全体 50.8%(2016年は66.0%)
60代 36.3%
70代 26.5%
80代以上 21.3%

「全体」には、経営者の年齢が分からない会社も含みます。白書は、全体として後継者不在率は下がる傾向にあり、60代以上でも同じように下がっていることから、「後継者不在の解消が一定程度進んでいる」と書いています。

会社を社外に引き継ぐ動きについても、白書は数字を示しています。

  • 国内の企業のM&Aの件数は近年増える傾向にあり、2025年は5,115件でした(第1-1-46図)
  • 国が各都道府県に置く事業承継・引継ぎ支援センターでは、第三者への引き継ぎの相談者数が2024年度に16,045者、成約件数が2,132件でした。白書は、どちらも増える傾向にあり「中小企業においてM&Aが活発化している」と書いています(第1-1-47図)
  • 白書のコラム(コラム1-1-4)は、「今後事業承継・M&Aを本格的に検討する必要のある60代以上の経営者も多く存在して」いると書いています

売ることを考えた会社が挙げた心配ごと

社長

売ることを考えたほかの社長は、何を心配しているのでしょう。

案内役

白書に、中小企業への調査の結果が載っています。いちばん多かったのは、売ったあとの社員の扱いへの不安でした。

2026年版中小企業白書の第2-2-81図は、会社や事業を売ること(M&Aの売却)を考えるうえでの問題点を、中小企業に聞いた結果です(2025年11〜12月の調査、12,031社、いくつでも選べる答え方)。

売ることを考えるうえでの問題点 割合
売却後の従業員の処遇への不安 8.0%
組織文化の違いによる摩擦 4.7%
仲介手数料の負担 4.0%
適切な相談相手の不在 3.9%
売却金額への不満 3.6%
売却手続きの煩雑さ 3.4%

答えた会社の82.4%は「売却を検討したことはない」と答えていて、上の割合は答えたすべての会社に対するものです。同じ調査で、2019年以降に会社を売ることへの印象が「変わらない」と答えた会社は81.1%、「マイナスのイメージになった」は11.0%、「プラスのイメージになった」は7.9%でした(第2-2-80図)。

社員に伝える時期は家族と社員に、会社を売ることをいつ・どう伝えるかに、仲介手数料はM&A仲介の手数料の相場にまとめています。

準備から引き継ぎまで、どのくらいかかるか

社長

売ると決めてから、実際に引き継ぐまで、どのくらいかかるものですか。

案内役

ガイドラインには、段階ごとの目安が書かれています。相手探しと引き継ぎの目安には、「個別のケースにより異なる」という前置きがついています。

国のガイドラインに書かれている時間の目安を、段階ごとに並べました。

段階 ガイドラインに書かれている目安 出典
準備を始める年齢 経営者が「概ね60歳に達した頃」には準備に取りかかることが望ましい 事業承継ガイドライン 32ページ
家族や社員に継ぐときの移行 後継者を決めてから引き継ぎが終わるまで(育成の期間を含む)、3年以上かかる割合が半数を超え、10年以上かかる割合も少なくない 事業承継ガイドライン 14ページ(図表16)
買い手とのマッチング(相手探し) 希望する買い手とのマッチングには、通常、数か月〜1年程度 中小M&Aガイドライン 30ページ
成約したあとの引き継ぎ 引き継ぎの作業に、3か月〜1年程度かかることが多い 中小M&Aガイドライン 57ページ

事業承継ガイドラインは、引退する年齢の平均が70歳前後であることをふまえて、「概ね60歳頃には事業承継に向けた準備に着手することが望ましい」と書いています(14ページ)。図表16は民間の調査(2021年8月)をもとにしたものです。

仲介会社との契約の期間についても、中小M&Aガイドラインに目安があります。ほかの会社に頼めなくなる決まり(専任条項)があるときは、契約の期間は「最長でも6か月〜1年以内が目安」とされています(40ページ)。

会社を売るまでの流れ

社長

売ると決めたら、どんな順番で進むのですか。

案内役

事業承継ガイドラインは、準備から実行までを5つのステップに分けています。会社を売るときは、ステップ4で「M&Aの工程」に進みます。

事業承継ガイドライン(第二章、32〜46ページ)の5つのステップです。

  1. 事業承継に向けた準備の必要性の認識
  2. 経営の状況・経営の課題などの把握(見える化)
  3. 事業承継に向けた経営の改善(磨き上げ)
  4. 家族や社員に継ぐときは事業承継計画の策定、社外に引き継ぐときはM&Aの工程の実施
  5. 事業承継・M&Aの実行

ステップ4のM&Aの工程は、次の順に進みます(44〜46ページ)。

  1. 意思決定
  2. 仲介者・FA(ファイナンシャル・アドバイザー)の選定
  3. 会社の価値の評価(バリュエーション)
  4. 買い手の選定(マッチング)
  5. 交渉(社長どうしの面談など)
  6. 基本合意の締結
  7. 買い手による調査(デュー・ディリジェンス)
  8. 最終契約の締結
  9. クロージング(株式などを渡し、代金を受け取る)

ガイドラインは、会社の価値の評価で出た金額が、そのまま譲渡額になるわけではないとも書いています。交渉の結果、当事者どうしが最後に合意した金額が譲渡額になります(45ページ)。

準備の中身:見える化と磨き上げ

社長

準備というのは、具体的に何をするのですか。

案内役

大きく分けて、会社の今の姿を分かる形にする「見える化」と、会社をよくする「磨き上げ」です。会社を売るときは、株式と事業に使う財産の整理が「最低限」必要だと書かれています。

事業承継ガイドラインと中小M&Aガイドラインに書かれている準備の中身です。

見える化(事業承継ガイドライン 33ページ)

  • 社長の個人の不動産を事業に使っていないか、会社の借入れの担保、社長と会社のお金の貸し借り、社長の個人保証など、会社と個人の関係をはっきりさせる
  • 「中小企業の会計に関する指針」や「中小企業の会計に関する基本要領」などを使って、決算が適正に処理されているかを点検する
  • 持っている自社の株式の数を確かめ、株価を評価する

磨き上げ(事業承継ガイドライン 36〜39ページ)

  • 本業の競争力を強くする(強みを伸ばし、弱みを改める)
  • 経営の体制を点検する(社員の役割と権限をはっきりさせる、規程やマニュアルを整える)
  • 事業に要らない資産や売れ残りの在庫を処分し、余分な借入れを返す
  • 会社のお金の状況を、早く正確につかめるようにする

株式と事業に使う財産の整理(中小M&Aガイドライン 35〜36ページ)

  • 会社の全株式を渡す場合は、基本的に社長がすべての株式を持っている必要がある。ほかの株主から買い取ることが必要な場合もある
  • 株主名簿が正しいか、実際には出資していない人の名義の株式(名義株)がないかを確かめる
  • 大切な不動産や設備が第三者の名義になっていないか、担保が付いていないかなどを確かめる
  • 会社の財産と社長個人の財産を、はっきり分けて整理する

判断が遅れたときに起こりうること

社長

もう少し考えてから、と思っているうちに時間がたってしまいそうです。

案内役

ガイドラインは、判断が遅れたときに起こりうることも書いています。事実として並べておきます。

国のガイドラインには、次の記述があります。

  • 中小M&Aをより早く検討して実現することで、社員の雇用を守り、地域の取引のつながりを保てる。社長自身の手元に残る代金が多くなるケースもある(中小M&Aガイドライン 30ページ)
  • 決断が遅れれば遅れるほど、M&Aの選択肢は狭まる傾向にある。業績がよくないときは、資金繰りが尽き、廃業の費用すら出せない状況になるケースもある(中小M&Aガイドライン 31ページ)
  • 先代の経営者の死去や体調の悪化といった、思いがけない事情で事業を引き継ぐケースも少なくない。個人事業者では、こうした事情による引き継ぎが約6割を占める(事業承継ガイドライン 16ページ、図表17。2016年11月の中小企業庁の委託調査)

時期を考えるときに確かめたいこと

時期を考える前の確認として、引退後の過ごし方、後継者の候補と親族の了解、決算書などの書類、株主名簿と株式の持ち主、会社と個人の財産・保証を示した図
社長

時期を考える前に、何を確かめておけばいいでしょう。

案内役

国のガイドラインで、事前の準備として挙げられていることを、確かめる項目の形にしました。

  1. 引退したあと、どう過ごしたいか。事業にしばらく関わりたいのか、別のことをしたいのか(中小M&Aガイドライン 35ページ)
  2. 家族や社内に、後継者の候補がいるか。身近な親族(特に子や兄弟)の了解はあるか(中小M&Aガイドライン 34〜35ページ)
  3. 直近3年分の税務申告書・決算書・勘定科目内訳明細書がそろっているか(中小M&Aガイドライン 34ページ)
  4. 株主名簿は正しいか。社長がすべての株式を持っているか(中小M&Aガイドライン 35〜36ページ)
  5. 会社と社長個人の財産・借入れ・保証の関係がはっきりしているか(事業承継ガイドライン 33ページ)
  6. 仲介会社に払う手数料は、自分の会社の規模でいくらになるか(手取りの計算機)

業績が変わると、売れる金額も変わります。譲渡額1億円で計算するのように、いくつかの金額で手取りを比べられます。

よくある質問

社長 何歳までに売らないといけない、という決まりはありますか?
案内役

国のガイドラインに、売る年齢の決まりはありません。事業承継ガイドラインは、準備に時間がかかることから、経営者が「概ね60歳に達した頃」には準備に取りかかることが望ましいと書いています。60歳を超えている場合は、すぐに身近な支援機関に相談するよう書いています。

社長 売ると決める前に、相談してもいいのですか?
案内役

中小M&Aガイドラインは、意思決定がまだ済んでいないから相談を控えるのではなく、「意思決定がまだ済んでいないからこそ相談することが必要」と書いています。国が各都道府県に置く事業承継・引継ぎ支援センターは、意思が決まっていない段階の相談も受け付けています。相談は無料です。使い方は事業承継・引継ぎ支援センターの使い方にまとめています。

社長 業績が悪いと、売ることはできませんか?
案内役

中小M&Aガイドラインは、会社が小さかったり、赤字や債務超過であったりしても、買い手が事業の価値を認めて「ぜひ譲り受けたい」と申し出ることは大いにありうる、と書いています。一方で、業績がよくないときは、判断が遅れると資金繰りが尽きるケースもあるとしています。

社長 準備に、お金はかかりますか?
案内役

事業承継・引継ぎ支援センターへの相談は無料です。仲介会社などに依頼するときは手数料がかかります。手数料の額は機関によって大きく違うので、手取りの計算機と通信簿で届出を確かめてください。

社長

いつ売るかの前に、引退したあとのことと、書類がそろっているかを確かめてみます。

案内役

どちらも、ガイドラインが最初の準備として挙げていることです。決めるのは社長ご自身なので、材料をそろえたうえで、無料の公的な窓口でも話を聞いてみてください。

このデータについて

  • 経営者の年齢・後継者不在率・M&Aの件数・センターの相談者数などの数字は、中小企業庁「2026年版 中小企業白書」(2026年4月24日閣議決定)第1部第1章の第1-1-43図〜第1-1-47図とコラム1-1-4(Ⅰ-51〜56ページ)、第2部第2章の第2-2-80図・第2-2-81図(Ⅱ-118〜119ページ)によります。取得日は2026年10月12日です。図の多くは、民間の調査のデータを白書が加工したものです
  • 経営者の年齢の10歳ごとの割合と「60歳以上52.5%」は、白書の第1-1-45図にある5歳ごとの割合を足したものです
  • 時間の目安と準備の中身は、中小企業庁の事業承継ガイドライン(第3版・令和4年3月改訂)と中小M&Aガイドライン(第3版・令和6年8月)の記述です。ページ番号は、それぞれのPDFに書かれた番号です
  • このサイトが計算した試算ではありません。当サイトは仲介や交渉、価格や税についての助言、売る時期の助言は行いません

出典