社長
会社を売ることを考えはじめました。仲介会社に払う手数料は「5%くらい」と聞いたのですが、本当にそのくらいで済むのでしょうか。
案内役
会社が小さいほど、5%では済まないことが多いんです。料率よりも「最低手数料」で決まるからです。国に登録された2,600機関の届出を同じ条件で計算した結果で、一緒に確かめていきましょう。
先に結論
- 譲渡額3,000万円の会社なら、手数料(税込)の中央値は330万円で、譲渡額の11%です
- 会社が小さいほど、料率ではなく最低手数料で手数料が決まります。譲渡額3,000万円では54%の機関が、最低手数料で手数料が決まりました
- 手数料の高い方から1割の機関に頼むと、譲渡額3,000万円でも手数料は1,650万円以上になります。手元に残るのは、譲渡額の半分に届きません
- 契約の前に、最低手数料・手数料の基準となる金額・着手金と中間金の3つを、必ず書面で確かめてください
- あなたの会社の金額でも、同じ計算ができます:譲渡額3,000万円で全機関の手数料を計算する
手数料はどうやって決まる?(レーマン方式)
社長
そもそも、手数料はどうやって計算するのですか。
案内役
多くの仲介会社は「レーマン方式」です。基準となる金額を段階に分けて、段階ごとに料率を掛けて足します。
よくある料率表は次のとおりです。
| 基準となる金額 | 料率 |
|---|---|
| 5億円以下の部分 | 5% |
| 5億円を超え10億円以下の部分 | 4% |
| 10億円を超え50億円以下の部分 | 3% |
| 50億円を超え100億円以下の部分 | 2% |
| 100億円を超える部分 | 1% |
たとえば基準となる金額が7億円なら、5億円×5%と2億円×4%を足して、3,300万円(税抜)です。
「基準となる金額」は会社によって違う
社長
「基準となる金額」というのは、会社を売る値段のことですよね。
案内役
それが、会社によって違うんです。国への届出では、主に4つの決め方があります。
同じ料率表でも、何を基準にするかで手数料が大きく変わります。仲介をしている2,978機関の届出では、次の4つが中心でした。
| 基準の名前 | 中身 | 届け出ている割合 |
|---|---|---|
| 株価 | 株式の譲渡額 | 41% |
| オーナーの受取額 | 株式の譲渡額に、役員借入金(会社が社長などの役員から借りているお金)を足した額 | 17% |
| 移動総資産 | 株式の譲渡額に、会社の負債を足した額 | 16% |
| 企業価値 | 株式の譲渡額に、借入金を足して現預金を引いた額 | 10% |
小さな会社ほど「最低手数料」で決まる
社長
うちは譲渡額が3,000万円くらいの見込みです。手数料はいくらくらいになりますか。
案内役
2,600機関の真ん中の値は、税込で330万円、譲渡額の11%です。そして半分以上の機関で、料率ではなく最低手数料で金額が決まりました。
最低手数料は、料率で計算した額が小さくても、これより下にはならない手数料の下限です。仲介の売り手側で最低手数料を届け出ている機関の中央値は300万円でした。一方で、1,000万円以上の機関も約2割(554機関)あります。
料率表を届け出ている2,600機関で、譲渡額だけを変えて計算した結果です。
| 譲渡額 | 手数料(税込)の中央値 | 譲渡額に対する割合 | 高い方から1割の機関 | 最低手数料で決まった機関 |
|---|---|---|---|---|
| 3,000万円 | 330万円 | 11.0% | 1,650万円以上 | 54% |
| 5,000万円 | 468万円 | 9.3% | 1,650万円以上 | 40% |
| 1億円 | 638万円 | 6.4% | 1,650万円以上 | 20% |
| 3億円 | 1,672万円 | 5.6% | 2,530万円以上 | 6% |
| 5億円 | 2,750万円 | 5.5% | 3,850万円以上 | 0% |
譲渡額が大きくなるほど、料率で決まる機関が増え、手数料の割合は5%台に近づきます。反対に、譲渡額が1億円より小さい会社では、どの機関に頼むかで手数料が何倍も変わります。
あなたの会社の金額で全機関の手数料を比べるときは、手取りの計算機をお使いください。
着手金・中間金・月額報酬も確かめる
社長
手数料は、成約したときに払うだけですか。
案内役
機関によっては、成約の前にかかるお金があります。成約しなくても戻らないことがあるので、先に確かめましょう。
成功報酬のほかに、次のお金がかかる機関があります。
- 着手金:契約したときに払うお金。成約しなくても戻らないことがあります
- 中間金:基本合意を結んだときなどに払うお金
- 月額報酬:契約の期間中、毎月払うお金
それぞれ「成功報酬に含む」のか「成功報酬とは別」なのかで、合計が変わります。成功報酬とは別の場合、成約しなくても払ったお金は戻らないことがあります。
契約の前に確かめたいこと
社長
契約の前に、何を確かめておけばいいでしょう。
案内役
中小企業庁が示している確認事項をもとに、6つにまとめました。特に最初の3つは、書面で確かめてください。
中小企業庁の「M&A支援機関の選定・契約時に確認すべき事項」をもとに、確かめたいことをまとめました。
- 料率と、手数料の基準となる金額(株価か、移動総資産かなど)
- 最低手数料の金額
- 着手金・中間金・月額報酬の有無と、払う時期
- 担当者の経験と、これまでの実績
- ほかの会社に相談できなくなる約束(専任の条項)や、相手と直接話せなくなる約束の有無
- 疑問があるときは、事業承継・引継ぎ支援センター(各都道府県にある無料の公的な窓口)や、専門家に別の意見を聞く
国の公表も見ておく
社長
問題のある仲介会社は、国が公表しているのですか。
案内役
はい。中小企業庁は、登録機関への注意や登録の取消を公表しています。
中小企業庁は、登録機関への注意や登録の取消を公表しています。2024年10月には、不適切な買い手とのM&Aを支援した15機関に注意を出しました。2025年1月には1社の登録を取り消し、2026年9月には、営業をやめてほしいという意思を無視した機関に再び注意を出しています。
あわせて、不適切な買い手の情報を機関どうしで共有する仕組みがあります。国のデータベースで「加盟している」と表示される機関は、2026年10月12日時点で116機関(3.5%)でした。加盟の有無も、相手を選ぶときの材料になります。
譲渡額が1億円なら、最低手数料で決まる機関は2割に減ります。譲渡額1億円で全機関の手数料を計算すると、「最低手数料で計算」の印がつく機関が少ないのを確かめられます。
よくある質問
社長
最低手数料は、どこで確かめられますか?
案内役
国の「M&A支援機関登録制度」の登録支援機関データベースで、各機関が届け出た最低手数料を見られます。このサイトの通信簿にも、届出のまま載せています。正式な金額は、契約の前に各機関に書面で確かめてください。
社長
着手金は、成約しなかったら戻ってきますか?
案内役
戻るかどうかは、契約で決まります。成約しなくても戻らないことがあるので、着手金の扱いを、署名の前に契約書で確かめてください。
社長
移動総資産を基準にすると、なぜ手数料が高くなりやすいのですか?
案内役
移動総資産は、株式の譲渡額に会社の負債を足した額です。借入などの負債が多い会社ほど基準となる金額が大きくなり、同じ料率でも手数料が大きくなります。
社長
無料で相談できる公的な窓口はありますか?
案内役
各都道府県に、国の「事業承継・引継ぎ支援センター」があります。相談は無料で、相手探しや登録機関の紹介も受けられます。
社長
料率だけを聞いて安心していました。まず、最低手数料と基準となる金額を確かめてみます。
案内役
それがいちばん大切です。気になる会社が決まったら、通信簿で届出を見てから、契約の前に書面で確かめてください。
このデータについて
- 出典:M&A支援機関登録制度HP 登録支援機関データベースを加工して作成(取得日 2026年10月12日)。データは各機関の届出です
- 計算は試算です。消費税10%を含めています。移動総資産や企業価値を基準にする機関は、負債や現預金を譲渡額に比例させた仮の値で計算しました。実際の会社の数字では結果が変わります
- 定額やその他の決め方の131機関は、計算に含めていません。届出の入力に誤りの可能性がある機関も、計算から外しています
- 正式な金額は、必ず各機関に確かめてください。当サイトは仲介や交渉、価格や税についての助言は行いません
