社長
うちは社員5人の小さな会社です。売れても1,000万円くらいだと思います。仲介の手数料が5%なら、50万円ほどで済むと考えていたのですが。
案内役
譲渡額が小さい会社ほど、5%では済まないことが多いんです。国の登録データで、譲渡額500万円から5,000万円までの手数料を計算した結果を見ながら、手元に残る額を一緒に確かめていきましょう。
先に結論
- 譲渡額が小さい会社ほど、仲介手数料は料率ではなく最低手数料で決まります。国の登録データで計算すると、譲渡額が500万円でも3,000万円でも、真ん中の機関の手数料は同じ330万円(税込)でした
- 譲渡額1,000万円なら、料率5%だけで計算した手数料は55万円(税込)です。ところが真ん中の機関の手数料は330万円で、譲渡額の33%にあたります
- 譲渡額500万円では、計算できた2,452機関のうち951機関(39%)で、手数料が譲渡額を上回りました。1,000万円でも517機関(21%)です
- 国の集計でも、2024年度に株式の譲渡額500万〜1,000万円で成約した200件では、譲渡額に対する手数料の割合の中央値が50.0%でした
- 契約の前に、最低手数料の額と、あなたの譲渡額で払う手数料の総額を、書面で確かめてください。各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターでは、無料で相談できます
- あなたの会社の金額でも計算できます:譲渡額1,000万円で全機関の手数料を計算する
手数料が料率どおりにならないしくみ
社長
料率が5%の会社に頼めば、手数料は譲渡額の5%になるのではないのですか。
案内役
料率で計算した額が「最低手数料」より小さいと、最低手数料が手数料になります。会社が小さいほど、この下限で決まりやすくなります。
多くの仲介会社は、レーマン方式という、段階ごとの料率で成功報酬を計算します。国の集計結果のページは、いちばん下の段の料率は「5%」と設定されることが多いといわれている、と書いています。
もう一つの決まりが最低手数料です。料率で計算した額が小さくても、これより下にはならない手数料の下限です。中小M&Aガイドライン(第3版)は、譲り渡す側が小規模だと、基準となる金額が小さく、十分な成功報酬を確保できないことがあるため、これに備えて最低手数料を設けている仲介者・FAは多い、と書いています(65ページ)。
仮に、料率5%・最低手数料300万円の機関に、譲渡額1,000万円で頼むと、次のようになります。
- 料率で計算した額:1,000万円×5%=50万円
- 最低手数料:300万円
- 大きい方の300万円が手数料になり、消費税10%を足すと330万円。譲渡額の33%です
ガイドラインにも、同じしくみの例があります。譲渡額5,000万円・最低手数料1,000万円(税抜)の例では、料率で計算した成功報酬275万円(税込)より最低手数料の1,100万円(税込)が大きく、手数料の総額は1,100万円、譲渡額から引いた額は3,900万円になっています(68ページの事例4)。
国のデータベースで、仲介の売り手側で最低手数料を届け出ている2,506機関(入力の誤りとみられる10億円以上の3機関を除く)を数えました。中央値は300万円で、真ん中の半分は150万〜500万円です。小さな会社の譲渡額と並べると、次のとおりです。
| 最低手数料(届出の額) | 機関の数 | 割合 |
|---|---|---|
| 500万円以上 | 1,009 | 40.3% |
| 1,000万円以上 | 554 | 22.1% |
| 2,000万円以上 | 223 | 8.9% |
譲渡額500万円の会社なら、最低手数料が500万円以上の4割の機関では、消費税を足した手数料が譲渡額を上回ります。一方で、最低手数料が100万円未満の機関も263(10.5%)あり、幅はとても広くなっています。
譲渡額500万〜5,000万円で計算した手数料
社長
うちくらいの金額だと、国の届出ではいくらになりますか。
案内役
料率表から計算できた約2,450機関で、譲渡額だけを変えて計算しました。3,000万円までは、真ん中の機関の手数料が同じでした。
国のデータベース(2026年10月12日取得)の仲介の売り手側の届出で、このサイトの計算機と同じ計算をしました(税込)。
| 譲渡額 | 料率5%だけで計算した額(税込) | 手数料(税込)の中央値 | 譲渡額に対する割合 |
|---|---|---|---|
| 500万円 | 27.5万円 | 330万円 | 66.0% |
| 1,000万円 | 55万円 | 330万円 | 33.0% |
| 2,000万円 | 110万円 | 330万円 | 16.5% |
| 3,000万円 | 165万円 | 330万円 | 11.0% |
| 5,000万円 | 275万円 | 467.5万円 | 9.35% |
330万円は、最低手数料の中央値300万円に消費税を足した額です。計算した500万円から3,000万円までの4つの金額では、真ん中の機関の手数料は変わらず、譲渡額が小さいほど割合が大きくなりました。
手数料が最低手数料で決まった機関の割合は、譲渡額500万円で74%、1,000万円で68%、2,000万円で58%、3,000万円で54%、5,000万円で40%でした。手数料の高い方から1割の機関は、どの金額でも1,650万円以上でした。
計算機の「安い方から1割の機関」は、どの金額でも、料率5%に消費税を足した額(譲渡額の5.5%)でした。料率どおりに計算される機関もあるので、同じ譲渡額でも、どの機関に頼むかで手数料は何倍も変わります。
手元に残る額はどう変わる?
社長
手数料を引くと、手元にはいくら残るのでしょう。
案内役
譲渡額が小さいほど、手元に残る割合は小さくなります。譲渡額500万円では、半分以上の機関で、手元に残る額が譲渡額の半分以下でした。
手数料を引いた額(税の前)を、同じ計算で並べました。割合は、料率表から計算できた機関(譲渡額500万〜3,000万円で2,452、5,000万円で2,449)に対するものです。
| 譲渡額 | 真ん中の機関で手元に残る額 | 手元に残るのが半分以下の機関 | うち、手数料が譲渡額を上回る機関 |
|---|---|---|---|
| 500万円 | 170万円(34%) | 1,332(54%) | 951(39%) |
| 1,000万円 | 670万円(67%) | 955(39%) | 517(21%) |
| 2,000万円 | 1,670万円(83.5%) | 518(21%) | 201(8%) |
| 3,000万円 | 2,670万円(89%) | 260(11%) | 7(0.3%) |
| 5,000万円 | 4,532.5万円(約91%) | 63(3%) | 1 |
手数料が譲渡額を上回るとき、このサイトの計算機は「この金額の案件は扱っていない可能性があります」と表示しています。譲渡額500万円で上回った951機関のうち、846機関は最低手数料で手数料が決まっていました。
ここでの「手元に残る額」は、税金を払う前の額です。売ったあとの税金のしくみは会社を売却したときの税金と手取りにまとめています。
国の集計で見る、実際に払われた手数料
社長
計算ではなく、実際に払われた手数料は分かりますか。
案内役
国が、登録機関から報告された成約の手数料を集計しています。譲渡額の小さい区分ほど、割合が高くなっていました。
M&A支援機関登録制度HPの「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」は、登録機関が支援して最終契約に至った案件の報告をもとに、株式の譲渡額に対する報酬総額(着手金・中間金・成功報酬の合計)の割合を公表しています。2024年度の売り手側の案件のうち、譲渡額1億円までの区分は次のとおりです(2026年10月13日に確認)。
| 株式の譲渡額 | 件数 | 手数料の割合の中央値 | 真ん中の半分の範囲 |
|---|---|---|---|
| 500万円以上1,000万円以下 | 200 | 50.0% | 20.0〜90.9% |
| 1,000万円超2,000万円以下 | 215 | 31.3% | 15.4〜66.7% |
| 2,000万円超3,000万円以下 | 191 | 33.3% | 15.5〜68.3% |
| 3,000万円超4,000万円以下 | 126 | 25.4% | 12.5〜51.9% |
| 4,000万円超5,000万円以下 | 134 | 20.0% | 10.0〜42.0% |
| 5,000万円超1億円以下 | 401 | 16.6% | 9.4〜25.0% |
500万〜1,000万円の区分では、200件の半分で、手数料が譲渡額の半分以上でした。4分の1の案件では、9割(90.9%)以上でした。
国の解説は、少額の区分ほど割合が高くなる傾向について、「株式譲渡額の大小にかかわらず、M&Aプロセスにおいては一定の支援工程を要することや再生案件などにおいても報酬が生じるためと推察される」と書いています。
この集計に入った2,955件のうち、譲渡額500万〜5,000万円の案件は866件(約3割)でした。500万円未満の案件は集計から除かれています。登録機関から報告された案件で、すべてのM&Aを網羅したものではありません。1億円を超える区分も含めた表はレーマン方式とは?にあります。
国のガイドラインが小さな会社について書いていること
社長
小さな会社のM&Aについて、国は何か書いていますか。
案内役
中小M&Aガイドラインに、手数料の負担や、インターネットで相手を探す「M&Aプラットフォーム」についての記述があります。書かれているとおりに並べます。
中小M&Aガイドライン(第3版・2024年8月)から、小さな会社に関わる記述です。
- 中小M&Aでは、M&Aそのものに多額のコスト(特にM&A専門業者や士業などの手数料や報酬)を掛けられない傾向にある(27ページ)
- 譲り渡す側の事業が小規模でも、赤字や債務超過でも、譲り受ける側が事業の価値を認めて「ぜひ譲り受けたい」と申し出ることは大いにあり得る(30ページ)
- 事業の規模が特に小規模な場合は、手続きをより簡易な形で行うことが現実的なケースも多く見られる(31〜32ページ)
- 簿価の純資産額は決算書から計算でき、明確なので、特に譲り渡す側が小規模企業の場合に、手数料の基準にすることがある(64ページ)
M&Aプラットフォームについては、次のように書いています(57〜59ページ)。
- 主に相手探しを低いコストで行える支援の道具。売り手が無料で登録できるものが相当数あり、支援機関に相当額の手数料を払う資力のない小規模な事業者でも、M&Aの可能性が大きく広がった
- 今は、売り手には相手探しの手数料が一切かからないケースが多い。ただし、今後は売り手にも手数料がかかるケースが増える可能性がある
- 会社の名前を伏せた情報でも、インターネットの特性上、会社が特定されるおそれがある。一度ネットに出た情報は、消すのが難しい
- 支援は相手探しまでにとどまるのが一般的。そのあとの手続きは当事者が行うので、センターや士業などの支援を受けながら進めることが望ましい。仲介者・FA・士業にも頼むなら、その手数料が別にかかる
- 極秘で進めたい案件は向いておらず、仲介者・FAとの使い分けが必要になると思われる
国の登録制度には、M&Aプラットフォーマーとして登録している機関も27あります(2026年10月12日取得の国のデータベース)。このサイトは、特定のプラットフォームや仲介会社をすすめません。手数料と支援の範囲を比べて、ご自身で選んでください。
小さな会社が使える公的な窓口と補助金
社長
小さな会社でも相談できる、公的な窓口はありますか。
案内役
国が各都道府県に置く事業承継・引継ぎ支援センターがあり、相談は無料です。仲介の費用には、小規模な売り手向けの補助金の類型もあります。
事業承継・引継ぎ支援センターについて、ガイドラインは「事業承継・引継ぎ支援センターへの相談は無料であるが、登録機関等に依頼する場合は有料である」と書いています(66ページ)。中小機構の事業承継・引継ぎポータルは、センターで成約した譲渡企業の約7割が小規模事業者だとしています(令和6年度の実績。2026年10月13日に確認)。
センターには、仲介会社などの登録民間支援機関のほかに、主に地域の士業などが登録する「マッチングコーディネーター」がいます。ガイドラインは、マッチングコーディネーターを、より小規模な事業者のM&Aの支援を目的とするものと説明しています(25ページ)。窓口のくわしいことは事業承継・引継ぎ支援センターとはにあります。
事業承継・M&A補助金の専門家活用枠には、小規模な売り手のための「小規模売り手支援類型」があります。16次公募の公募要領で確かめた主な点です。
| 項目 | 小規模売り手支援類型(16次公募) |
|---|---|
| 対象 | 小規模事業者等。製造業その他は従業員20人以下、商業・サービス業は5人以下など(9ページ) |
| 補助率と上限 | 補助の対象になる経費の3分の2以内、上限450万円。廃業の費用を併せて申請すると、上限が150万円加わる(20ページ) |
| 仲介・FAの費用 | M&A支援機関登録制度に登録された仲介業者・FAの支援に限る(17〜18ページ) |
| 契約の時期 | 経費の契約・発注が交付決定の日以降であること(17ページ) |
| 申請の受付 | 2026年10月2日〜11月6日17時(25ページ) |
小さな会社に関わる決まりもあります。公募要領は、取引の価格が専門家への費用などに比べて低く、価格の合理性が確かめられないM&Aを、原則として補助の対象外としています(12ページ)。公募の回ごとに中身が変わるので、くわしくは事業承継・M&A補助金で仲介手数料は補助される?と最新の公募要領をご覧ください。このサイトは、申請の代行や助言は行いません。
契約の前に確かめたいこと
社長
小さな会社が仲介会社と話すとき、何を確かめればいいですか。
案内役
料率より先に、あなたの譲渡額で払う手数料の総額を確かめます。ガイドラインも、その確認が重要としています。
ガイドラインは、レーマン方式の段ごとの料率だけでなく、成立する譲渡額に応じて最終的に払う手数料の額を確かめることが重要としています(69ページ)。小さな会社が確かめたいことを並べます。
- 最低手数料の額と、それが税込か税抜か
- 手数料の基準となる金額(株式の譲渡額か、負債を含む移動総資産かなど)。移動総資産を基準にすると、同じ譲渡額でも負債の多い会社ほど手数料が高くなります(64ページ)
- 着手金・中間金・月額報酬があるか。成約しなくても払うお金があるか(M&Aの着手金・中間金・月額報酬とは?)
- あなたの譲渡額の見込みで払う手数料の総額と、手元に残る額を、書面で示してもらう
- あなたの会社くらいの規模の案件を、その機関が扱っているか
- 迷ったときは、センターや士業に別の意見(セカンド・オピニオン)を聞く
仲介会社の一覧では、各機関が国に届け出た最低手数料を見比べられます。比べ方はM&A仲介会社の選び方に、1億円以上も含めた手数料の分布はM&A仲介の手数料の相場にまとめています。譲渡額の見込みが3,000万円なら、譲渡額3,000万円で全機関の手数料を計算すると、最低手数料で決まった機関に印がつきます。
よくある質問
社長
譲渡額が数百万円でも、仲介会社に頼めますか?
案内役
機関によります。国のデータベースの届出で計算すると、譲渡額500万円では、計算できた機関の約4割で手数料が譲渡額を上回り、約6割は譲渡額より小さい手数料でした。譲渡額500万円で計算すると、手数料が譲渡額を下回る機関を安い順に見られます。実際に受けるかどうかは、各機関に確かめてください。
社長
手数料が譲渡額を上回るとは、どういうことですか?
案内役
最低手数料(税込)や、成功報酬とは別の着手金などを足した額が、譲渡額より大きいということです。このサイトの計算機は、この金額の案件は扱っていない可能性がある機関として、別の枠に分けて表示しています。
社長
国の集計の割合と、この記事の計算が違うのはなぜですか?
案内役
数え方が違うためです。国の集計は実際に成約した案件で払われた報酬総額で、この記事の計算は届出をもとにした仮の会社の試算です。国の解説は、少額の区分の割合が高い理由として、一定の支援の工程が要ることや、再生案件などでも報酬が生じることを推察しています。
社長
M&Aプラットフォームを使えば、手数料はかかりませんか?
案内役
ガイドラインは、今は売り手に相手探しの手数料がかからないケースが多いとしています。一方で、今後は売り手にもかかるケースが増える可能性があること、相手探しのあとの手続きで仲介者・FA・士業に頼めば別に手数料がかかることも書いています。
社長
小さな会社でも補助金は使えますか?
案内役
事業承継・M&A補助金の専門家活用枠に、小規模売り手支援類型があります。登録された仲介業者・FAの支援であること、契約が交付決定の日以降であることなどの条件があり、価格の合理性が確かめられないM&Aは原則として対象外です。
社長
5%で考えていたので驚きました。まず、うちの金額で計算して、最低手数料の届出を見てみます。
案内役
金額が分かると、仲介会社に聞くことも整理しやすくなります。迷ったときは、無料の公的な窓口で話を聞くこともできます。
このデータについて
- 出典:M&A支援機関登録制度HP 登録支援機関データベースを加工して作成(取得日 2026年10月12日)。データは各機関の届出(自己申告)です
- 手数料は試算です。仲介の売り手側の届出で、消費税10%を含め、「成功報酬に含まない」着手金・中間金を足しています。月額報酬は含みません。負債の合計を譲渡額の半分、有利子負債を2割、現預金を1割、役員借入金をなしとした仮の会社で計算しました
- 「計算できた機関」は、料率表から計算できた機関です(譲渡額500万〜3,000万円で2,452、5,000万円で2,449)。定額・その他の方式などで計算できない485機関、手数料が0円になる25機関(売り手から成功報酬を取らないとの届出など)、届出の入力に誤りの可能性がある16〜19機関は含めていません。この記事の中央値と割合は、手数料が譲渡額を上回る機関も含めて数えています
- 最低手数料の数は、届出のある2,509機関から、入力の誤りとみられる10億円以上の3機関を除いた2,506機関で数えました
- 国の集計結果は、2024年度の売り手側の案件(株式の譲渡額500万円以上)で、2026年10月13日に確認しました
- 補助金は、16次公募の小規模売り手支援類型の公募要領(2026年9月・Ver.1.0)で確かめました
- 正式な手数料と契約の条件は、各機関に書面で確かめてください。当サイトは仲介や交渉、価格や税についての助言は行いません
