社長
仲介会社の資料に「成功報酬はレーマン方式」と書いてありました。料率の表は載っているのですが、うちの場合にいくらになるのか、自分では計算できません。
案内役
段ごとに分けて掛け算をし、最後に足すだけです。ただ、どの金額に掛けるかで答えが変わります。計算の手順と例を、国の登録データとあわせて見ていきましょう。
先に結論
- レーマン方式は、基準となる金額を段に分け、段ごとに料率を掛けて足す計算です。よくある料率表なら、基準となる金額8億円の手数料は3,700万円(税抜)です
- 同じ会社でも、基準となる金額の決め方で手数料が変わります。この記事の例では、株価を基準にすると1,500万円、移動総資産を基準にすると2,900万円(いずれも税抜)でした
- 国に料率表を届け出ている仲介の2,600機関のうち、1,436機関(55.2%)が同じ形の料率表でした。一方で、最初の段が10%の機関や、最初の段が金額で決まっている機関もあります
- 料率で計算した額のあとに、最低手数料、着手金・中間金の扱い(成功報酬に含むか、別か)、消費税で最後の金額が決まります。基準となる金額の定義と料率表を、契約の前に書面で確かめてください
- 届け出られた料率表どおりの計算を、全機関まとめて試せます:譲渡額3億円で計算する
計算の手順は5つ
社長
計算は、どんな順番で進めればいいのですか。
案内役
5つに分けると迷いにくくなります。料率を掛ける前に、「何に掛けるのか」を決めるところから始めます。
- 基準となる金額を出す:株式の譲渡額(株価)なのか、負債を足した移動総資産なのかなど、契約書の定義どおりに金額を出します
- 段に切り分ける:基準となる金額を、料率表の区切り(「5億円以下の部分」「5億円を超え10億円以下の部分」など)で切り分けます
- 段ごとに掛けて足す:切り分けたそれぞれの部分に、その段の料率を掛けて合計します
- 最低手数料と比べる:合計が最低手数料より小さければ、最低手数料が成功報酬になります
- ほかのお金と消費税を確かめる:先に払った着手金や中間金を成功報酬から差し引く契約もあります。最後に消費税を足します
中小M&Aガイドライン(第3版・2024年8月)は、手数料を比べるときについて「単にレーマン方式の階層ごとの報酬率のみではなく、成立する譲渡額に応じて最終的に支払う報酬の絶対額を確認することが重要」と書いています(第1章Ⅴ4)。料率の数字だけで終わらせず、5つ目の手順まで進めて金額を出すことが、この計算の目的です。言葉の意味は用語集のレーマン方式にもまとめています。
よくある料率表で計算してみる
社長
いちばん多い表で計算すると、どうなりますか。
案内役
基準となる金額を4つ変えて計算しました。5億円までは全体が5%で、それを超えた部分から割合が下がっていきます。
国のデータベースで最も多い料率表は、5億円以下の部分が5%、5億円を超え10億円以下の部分が4%、10億円を超え50億円以下の部分が3%、50億円を超え100億円以下の部分が2%、100億円を超える部分が1%です。国の「手数料の簡易計算」の説明や、中小M&Aガイドラインも、この表を例に挙げています。この表で計算すると、次のとおりです。
| 基準となる金額 | 段ごとの計算 | 手数料(税抜) | 基準に対する割合 |
|---|---|---|---|
| 1億円 | 1億円×5% | 500万円 | 5.0% |
| 3億円 | 3億円×5% | 1,500万円 | 5.0% |
| 8億円 | 5億円×5%+3億円×4% | 3,700万円 | 4.6% |
| 15億円 | 5億円×5%+5億円×4%+5億円×3% | 6,000万円 | 4.0% |
8億円の場合を、手順どおりに書くと次のようになります。
- 5億円以下の部分:5億円×5%=2,500万円
- 5億円を超え10億円以下の部分(3億円):3億円×4%=1,200万円
- 合計:3,700万円(税抜)。消費税10%を足すと4,070万円です
この表では、基準となる金額が5億円以下なら、どの金額でも手数料は5%ちょうどです。段が下がる効果が出るのは、5億円を超えた部分からです。
段の区切りが違うと、同じ金額でも変わる
社長
どの仲介会社も、同じ表を使っているのですか。
案内役
半分ほどは同じ表ですが、区切りの位置や最初の料率が違う機関もあります。届出に実際にある表を2つ選び、同じ金額で計算しました。
国のデータベースに届け出られた料率表から、2つの形を選んで、いちばん多い表と比べました(税抜。最低手数料は考えていません)。
| 料率表 | 基準5,000万円 | 基準1億円 | 基準3億円 |
|---|---|---|---|
| いちばん多い表(5億円以下の部分5%から) | 250万円 | 500万円 | 1,500万円 |
| 1億円以下5%、3億円以下4%、5億円以下3%、10億円以下2%、それを超える部分1%(17機関) | 250万円 | 500万円 | 1,300万円 |
| 2,000万円以下10%、そこから2,000万円ごとに9%・8%・7%・6%、1億円を超え5億円以下5%など(18機関) | 460万円 | 800万円 | 1,800万円 |
3つ目の表で基準1億円を計算すると、2,000万円×10%の200万円、2,000万円×9%の180万円、2,000万円×8%の160万円、2,000万円×7%の140万円、2,000万円×6%の120万円を足して800万円です。同じ「レーマン方式」でも、基準1億円の手数料が500万円にも800万円にもなります。
料率表の最初の段が、料率ではなく「1億円以下 500万円」のように金額で届け出られている機関もあります。この形の計算のしかたは、契約書で確かめてください。
基準となる金額で、同じ会社でも手数料が変わる
社長
基準となる金額が違うと、どのくらい差が出るのですか。
案内役
借入金や現預金の多さで変わります。国の「手数料の簡易計算」が使っている4つの定義で、1つの会社を計算してみました。
国の「手数料の簡易計算」は、4つの基準となる金額を次のように定めています(2026年10月12日確認)。あわせて、国のデータベースで仲介の売り手側の主な基準として届け出ている機関の数を載せました。
| 基準の名前 | 国の簡易計算での基準となる金額 | 主な基準として届け出た機関 |
|---|---|---|
| 株価 | 株式の価値 | 1,211 |
| オーナー受取額 | 株式の価値+役員借入金(会社が社長などから借りているお金) | 493 |
| 企業価値 | 株式の価値+有利子負債−現預金 | 295 |
| 移動総資産 | 株式の価値+有利子負債+その他の負債(買掛金・未払金など、買い手が引き継ぐ負債) | 476 |
例として、次のような会社を考えます。株式の譲渡額3億円、役員借入金5,000万円、有利子負債(借入金など)2億円、現預金1億円、その他の負債(買掛金など)1億円です。いちばん多い料率表で計算すると、次のとおりです。
| 基準の名前 | 基準となる金額 | 手数料(税抜) | 株式の譲渡額に対する割合 |
|---|---|---|---|
| 株価 | 3億円 | 1,500万円 | 5.0% |
| オーナー受取額 | 3億5,000万円 | 1,750万円 | 5.8% |
| 企業価値 | 4億円 | 2,000万円 | 6.7% |
| 移動総資産 | 6億円 | 2,900万円 | 9.7% |
株式の譲渡額は同じ3億円でも、移動総資産を基準にすると、株価を基準にしたときの約1.9倍になりました。移動総資産の6億円は、5億円×5%の2,500万円と、1億円×4%の400万円を足した額です。中小M&Aガイドラインも、報酬基準額に移動総資産を使う場合は、譲渡額や純資産を使う場合より報酬額が高くなる、と例を挙げています(第1章Ⅴ4)。
小さな会社では、最低手数料で決まることが多い
社長
うちは譲渡額が5,000万円くらいの見込みです。基準の違いは、どのくらい効きますか。
案内役
この規模では、どの基準で計算しても、料率で出した額が最低手数料に届かないことがあります。その場合は、最低手数料の金額で手数料が決まります。
株式の譲渡額5,000万円、役員借入金1,000万円、有利子負債3,000万円、現預金2,000万円、その他の負債2,000万円の会社を、最低手数料500万円(税抜)の機関で計算しました。
| 基準の名前 | 基準となる金額 | 料率で計算した額 | 最低手数料と比べた手数料 |
|---|---|---|---|
| 株価 | 5,000万円 | 250万円 | 500万円 |
| オーナー受取額 | 6,000万円 | 300万円 | 500万円 |
| 企業価値 | 6,000万円 | 300万円 | 500万円 |
| 移動総資産 | 1億円 | 500万円 | 500万円 |
どの基準でも、手数料は最低手数料の500万円になりました。500万円は、仲介の売り手側で最低手数料を届け出た2,509機関のなかで、最も多い金額です(422機関)。最低手数料の分布と、譲渡額ごとの手数料の中央値はM&A仲介の手数料の相場(最低手数料)にまとめています。
国の届出で見る料率表の分布
社長
ほかの機関の料率表は、どうなっているのですか。
案内役
仲介の売り手側で料率表を届け出ている2,600機関を、すべて数えました。半分あまりは同じ表で、残りは区切りや最初の料率が違います。
料率表の形で分けると、次のとおりです(2026年10月12日取得)。
| 料率表の形 | 機関の数 | 割合 |
|---|---|---|
| 5億円以下5%・10億円以下4%・50億円以下3%・100億円以下2%・それを超える部分1% | 1,436 | 55.2% |
| 料率は5%・4%・3%・2%・1%の順だが、区切りの位置が上の表と違う | 164 | 6.3% |
| そのほかの形 | 1,000 | 38.5% |
最初の段の料率で分けると、次のとおりです。
| 最初の段 | 機関の数 | 割合 |
|---|---|---|
| 5% | 1,876 | 72.2% |
| 10% | 190 | 7.3% |
| 料率ではなく金額で届け出ている | 322 | 12.4% |
| そのほかの料率 | 212 | 8.2% |
最初の段の区切りが5億円の機関は1,694(65.2%)、1億円の機関は270(10.4%)でした。最初の段が12%の機関が15、15%が12、20%が10あります。「5%から始まる表が多い」のは事実ですが、すべての機関がそうではありません。気になる機関の料率表は、通信簿で届出のまま確かめられます。
実際に払われた手数料の割合(国の集計)
社長
計算の上では5%でも、実際に払われている額はどうなのですか。
案内役
国は、登録機関から報告された成約の手数料を集計して公表しています。譲渡額が小さい区分ほど、割合が高くなっていました。
M&A支援機関登録制度HPの「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」は、登録機関が支援して最終契約に至った案件の報告をもとに、株式の譲渡額に対する報酬総額の割合(報酬率)を公表しています。次の表は2024年度の売り手側の案件です(2026年10月12日に確認。株式の譲渡額500万円未満の案件は除かれています)。報酬総額には、着手金や中間金なども含まれます。
| 株式の譲渡額 | 件数 | 報酬率の中央値 | 真ん中の半分の範囲 |
|---|---|---|---|
| 500万円以上1,000万円以下 | 200 | 50.0% | 20.0〜90.9% |
| 1,000万円超2,000万円以下 | 215 | 31.3% | 15.4〜66.7% |
| 2,000万円超3,000万円以下 | 191 | 33.3% | 15.5〜68.3% |
| 3,000万円超4,000万円以下 | 126 | 25.4% | 12.5〜51.9% |
| 4,000万円超5,000万円以下 | 134 | 20.0% | 10.0〜42.0% |
| 5,000万円超1億円以下 | 401 | 16.6% | 9.4〜25.0% |
| 1億円超1億5,000万円以下 | 276 | 13.3% | 6.9〜16.9% |
| 1億5,000万円超2億円以下 | 192 | 10.1% | 6.0〜12.6% |
| 2億円超3億円以下 | 299 | 8.3% | 5.8〜10.0% |
| 3億円超5億円以下 | 280 | 6.1% | 5.0〜7.6% |
| 5億円超 | 641 | 4.3% | 3.2〜5.2% |
「真ん中の半分の範囲」は、低い方から4分の1の位置から、4分の3の位置までの値です。中央値が10%を下回るのは2億円を超える区分からで、5%を下回るのは5億円を超える区分だけでした。国の解説も、譲渡額が少額な区分ほど報酬率が高くなる傾向があると書いています。
計算の結果を確かめるときに
社長
自分で計算した額と、仲介会社の説明が違ったら、どこを見ればいいですか。
案内役
最初に挙げた5つの手順のどこで違ったのかを、1つずつ確かめます。中小M&Aガイドラインは、手数料の算定基準を契約の前に書面で説明することを仲介者・FAに求めています。
中小M&Aガイドライン(第3版)は、仲介者・FAに対し、成功報酬の報酬率、報酬基準額(譲渡額・純資産・移動総資産など)、最低手数料の額、報酬の発生タイミング(着手金・月額報酬・中間金・成功報酬)などを、契約の前に書面を渡して説明することを求めています(第2章Ⅱ4(2))。確かめる点は、次の5つです。
- 基準となる金額の定義(どの金額を足し、どの金額を引くか)
- 料率表の段の区切りと、それぞれの料率
- 最低手数料の金額
- 先に払う着手金・中間金を、成功報酬から差し引くかどうか
- 説明の金額が、税抜か税込か
着手金と中間金の扱いは着手金・中間金・月額報酬に、契約書のほかの確認点は契約の前に確かめることにまとめています。届け出られた料率表と最低手数料で全機関を比べるときは、手取りの計算機をお使いください。
小さな会社では最低手数料で決まることが多いので、譲渡額5,000万円の場合もあわせて計算できます。
よくある質問
社長
料率表は、どこで確かめられますか?
案内役
国の「M&A支援機関登録制度」の登録支援機関データベースで、各機関が届け出た料率表を見られます。このサイトの通信簿にも、届出のまま載せています。実際に結ぶ契約の料率表は、署名の前に契約書で確かめてください。
社長
届出の手数料は、税抜ですか?
案内役
国のデータベースの成功報酬の欄は、税抜の届出です。中小M&Aガイドラインの計算例は、消費税と地方消費税を合わせて10%として計算しています。説明を受けた金額が税抜か税込かも、あわせて確かめてください。
社長
「その他のレーマン方式」とは何ですか?
案内役
国のデータベースで、株価・オーナー受取額・企業価値・移動総資産のどれにも当たらない基準のレーマン方式です。仲介の売り手側で125機関が届け出ていました。基準の中身はデータベースには載っていないので、契約書で定義を確かめてください。
社長
国の手数料の簡易計算と、このサイトの計算機は何が違いますか?
案内役
国の簡易計算は、自分で入れた料率表と最低手数料で、4つの基準それぞれの成功報酬(税抜)を出します。着手金・中間金は含まず、黒字企業の株式譲渡が対象です。このサイトの手取りの計算機は、各機関が届け出た料率表と最低手数料を使い、成功報酬に含まない着手金・中間金も足して、全機関を同じ条件で並べます。どちらも試算です。
社長
表の5%だけを見ていました。まず、うちの場合に何が基準になるのかを確かめてみます。
案内役
そこが出発点です。基準となる金額と料率表が分かれば、最後に払う額まで自分で計算できます。数字は、契約の前に書面で確かめてください。
このデータについて
- 出典:M&A支援機関登録制度HP 登録支援機関データベースを加工して作成(取得日 2026年10月12日)。データは各機関の届出(自己申告)です
- 料率表の分布は、仲介の業務があり、売り手側の主な算定方法を「レーマン方式」と届け出た2,600機関で数えました。入力の誤りの可能性がある表(5%を0.05%と書いたような表など)も、数には含めています
- 実際に払われた手数料の割合は、M&A支援機関登録制度HP「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」の2024年度の値です(2026年10月12日に確認)。すべてのM&Aを網羅したものではありません
- この記事の計算例は試算です。会社の数字は説明のための仮の値で、実際の手数料は機関や案件によって変わります。正式な金額は、必ず各機関に確かめてください。当サイトは仲介や交渉、価格や税についての助言は行いません
