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契約

M&A仲介の契約の前に確かめること:専任・テール条項・直接交渉の制限を国のガイドラインで読む

仲介会社と契約する前に、専任の条項、テール条項、直接交渉の制限、契約期間と解除、秘密保持を確かめておくと、あとで動きやすくなります。中小M&Aガイドライン(第3版)が仲介会社に求めていることを、国の資料のまま整理しました。

書いた人

M&A仲介の通信簿 編集部

国の「M&A支援機関登録制度」の届出を毎月取り込み、仲介会社の手数料を同じ条件で計算して載せています。記事は中小企業庁のガイドラインなど公的な資料にもとづいて書き、仲介や交渉、価格や税の助言はしません。

付箋を貼った契約書・砂時計・鍵のかかった書類箱が並ぶ机と、契約書を読む社長のアイソメトリックのイラスト
社長

仲介会社から、契約書の案を受け取りました。手数料のところは読んだのですが、ほかの条項はむずかしくて、よく分かりません。

案内役

手数料のほかにも、あとで動きにくくなる約束がいくつかあります。国の「中小M&Aガイドライン(第3版)」が、それぞれについて仲介会社に何を求めているかを、順に見ていきましょう。

先に結論

  • 中小M&Aガイドライン(第3版)は、仲介会社に、契約の前に17の事項を書面で説明し、納得を得ることを求めています。専任の条項・テール条項・直接交渉の制限・契約期間・解除・秘密保持も、その中に入っています
  • ガイドラインの目安は、専任の条項がある契約の期間が「最長でも6か月〜1年以内」、テール期間が「最長でも2年〜3年以内」です。いつでも途中で解約できることを、契約に書くことも求めています
  • 直接交渉を制限してよいのは、その会社が紹介した相手と、M&Aのための話し合いに限られ、期間は契約が終わるまでです
  • 契約書の案を受け取ったら、この記事の確認表を手元に置いて、期間・相手の範囲・解約の書き方を書面で確かめてください
  • 契約の前に、手数料の届出も計算機で見ておけます:譲渡額5,000万円で計算する

契約の前に、書面で説明を受ける17の項目

社長

契約書には、どんなことが書かれているものなのですか。

案内役

ガイドラインは、契約の前に説明する大事な事項を17に分けています。書面を渡して説明し、納得を得ることが、仲介会社に求められています。

国の登録制度に登録した仲介会社は、中小M&Aガイドライン(第3版)を守ると宣言しています。2026年10月12日に取得した国のデータベースでは、登録している3,362機関すべてが、第3版を守る宣言をしていました。

登録した会社には、ガイドラインを守る宣言を自社のホームページに載せることと、契約のときに、ガイドラインを守ることを資料で事前に説明することも求められています(公募要領 令和8年度 10ページ)。

ガイドラインが「契約の前に書面で説明する」としている17の事項は、次のとおりです(ガイドライン86〜88ページ)。

番号 説明を受ける事項
1 仲介とFAの違い。仲介が売り手と買い手の両方から手数料を受け取るときは、その旨
2 業務の範囲。会社の値段の評価、相手探し、交渉など、段階ごとに何をするか
3 担当者の資格、経験の年数、成約の実績
4 手数料。基準、金額、最低手数料、先に払った手数料を差し引くか、払う時期など
5 手数料のほかに払う費用の種類と、払う時期
6 仲介の場合、相手方(買い手)の手数料
7 秘密保持。何が秘密の対象か、専門家や事業承継・引継ぎ支援センターに話すときの扱い
8 直接交渉の制限
9 専任の条項。別の意見(セカンド・オピニオン)を聞けるかどうか
10 テール条項。テール期間と、対象になるM&A
11 契約の期間と、更新(期間の延長)の決まり
12 契約の解除と、途中で解約できる場合はその中身
13 責任(免責)。損害を賠償する条件と範囲
14 契約が終わったあとも効力がある条項と、その期間
15 仲介の場合、売り手と買い手で利益がぶつかる事項
16 売り手への説明では、買い手に対して行う調査の概要
17 売り手への説明では、不適切な買い手の情報を共有する仕組みに参加しているか

ガイドラインは、この説明を、契約を結ぶ権限のある人(会社なら代表者など)に行うことと、説明のあとに、契約を決めるための十分な検討の時間を与えることも求めています。説明の前の営業でも、考える時間を与えずにその場で決めるよう迫ることは、してはいけないとしています。

国の遵守事項一覧チェックシートには、13番の責任(免責)について「説明したからといって法的な効力が認められる関係にはない」という注記があります。説明を受けたことと、その条項が有効かどうかは、別の話です。

仲介とFAの違いは、仲介とFAの違いと用語集で説明しています。

専任の条項(ほかの会社に頼まない約束)

社長

「専任」というのは、その会社にしか頼めないということですか。

案内役

契約の間、ほかの仲介会社やFAに同じ依頼をしたり、意見を求めたりすることを制限する約束です。ガイドラインは、制限の範囲をできるだけ狭くするよう求めています。

ガイドラインが、専任の条項について仲介会社に求めていることは、次の3つです(ガイドライン103〜104ページ)。

  • 範囲をできるだけ狭くする。 売り手が、ほかの支援機関に意見を聞きたい部分をはっきり伝えたら、それを止める合理的な理由がない限り、別の意見(セカンド・オピニオン)を聞くことを認める。ただし、相手の会社の情報は出さない、相談先を秘密を守る義務のある人や事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的な機関に限る、といった情報の管理はしてよい
  • 期間に目安を置く。 専任の条項がある契約の期間は、最長でも6か月〜1年以内を目安にする
  • いつでも途中で解約できるようにする。 売り手が、いつの時点でも契約を途中で解約できることを、契約に書く(口頭ではっきり伝えることも含む)
確かめること ガイドラインの目安
専任の範囲 できるだけ狭くする
別の意見を聞けるか 止める合理的な理由がなければ認める
専任の契約の期間 最長でも6か月〜1年以内
途中の解約 いつでもできることを書く

中小企業庁のチラシ「M&A支援機関の選定・契約時に確認すべき事項」(2024年10月30日の公表資料に付いたもので、今もM&A支援機関登録制度HPのトップに載っています)も、「仲介・FA契約書の専任条項、直接交渉制限等の内容を確認しましょう」と書いています。

テール条項(契約が終わったあとも報酬がかかる期間)

専任の契約の期間(最長でも6か月〜1年以内)と、契約の終わりのあとのテール期間(最長でも2年〜3年以内)の目安を示した図
社長

契約をやめたあとでも、手数料を払うことがあるのですか。

案内役

テール条項があると、決まった期間の中で、その会社が紹介した相手と成約したときに、報酬がかかることがあります。ガイドラインは、その期間と、対象になる相手に目安を置いています。

テール条項は、契約が終わったあとも、一定の期間(テール期間)は効力が続く約束です。ガイドラインが仲介会社に求めていることは、次のとおりです(ガイドライン104〜105ページ)。

  • 期間: テール期間は、最長でも2年〜3年以内を目安にする
  • 対象になる相手: その会社が関わって、売り手に紹介した買い手だけにする。候補の一覧や、会社名を伏せた概要の資料(ノンネーム・シート)を見せただけの相手は、対象にしない。少なくとも、買い手に会社の詳しい資料を送って会社の名前を明かし(ネームクリア)、売り手に紹介した相手に限る
  • 複数の会社に頼んだとき: 専任の条項がない契約で、複数の会社から同じ相手を紹介され、売り手がほかの会社を選んだときは、選ばれなかった会社は、テール条項を理由に手数料を求めない

チェックシートには、ガイドラインが示しているのは対象の最低限の線であって、それを満たせば必ずテール条項が有効になる、という意味ではないとの注記もあります。

直接交渉の制限(相手と直接話さない約束)

社長

知り合いの会社が興味を持ってくれたら、自分で話をしてもいいのでしょうか。

案内役

契約に直接交渉の制限があると、話し方に決まりができます。ガイドラインは、制限してよい相手・話の中身・期間を、それぞれ狭く区切っています。

直接交渉の制限は、仲介会社を通さずに、候補の相手と直接話を進めないという約束です。ガイドラインが仲介会社に求めていることは、次の3つです(ガイドライン104ページ)。

  • 相手: 制限されるのは、その会社が関わり、紹介した候補だけにする。ただし、売り手が「自分で候補を探さない」「自分で見つけた候補と直接交渉しない」ことを、はっきり了解している場合は別。自分で見つけた候補とのM&Aの支援も、その会社に頼む場合が想定されています
  • 話の中身: 制限されるのは、M&Aのための話し合いに限る
  • 期間: 制限の効力は、契約が終わるまでに限る

17の事項の8番では、売り手が自分で候補を見つけることや、その候補と直接交渉することを禁じるならその旨と、制限される候補と話の範囲を説明するよう求めています。知り合いや取引先が候補になりそうなときは、契約書でその扱いを確かめてください。

契約期間と解除

社長

契約の期間や、やめるときの決まりも見ておいたほうがいいですか。

案内役

17の事項では、期間と更新、解除と途中の解約が、それぞれ別の項目になっています。専任の条項がある契約には、期間の目安もあります。

契約の期間と解除について、国の資料に書かれていることをまとめます。

  • 11番:契約の期間と、更新(期間の延長)の決まりを説明する
  • 12番:契約の解除の決まりと、途中で解約できると書く場合は、その中身を説明する
  • 専任の条項がある場合:期間は最長でも6か月〜1年以内が目安。いつでも途中で解約できることを書く(ガイドライン103〜104ページ)
  • 4番:手数料の説明には、先に払った手数料を差し引くかどうかも含める

途中でやめたときにお金がどうなるかは、着手金や月額報酬の決まりにも関わります。国のデータベース(2026年10月12日取得)で、仲介の業務がある2,978機関の、売り手側の届出を数えると、次のとおりでした。

届出の中身 機関の数 2,978機関に対する割合
着手金あり 1,240 41.6%
うち「成功報酬に含まない」 697 23.4%
中間金あり 889 29.9%
うち払う時期が「基本合意締結時」 806 27.1%
月額報酬あり 303 10.2%
うち「成功報酬に含まない」 188 6.3%

着手金・中間金・月額報酬の決まりは、着手金・中間金の記事と、用語集の着手金・中間金で説明しています。最低手数料は手数料の記事をご覧ください。

秘密保持と、別の意見を聞くこと

社長

契約に秘密保持の条項があると、顧問の税理士さんや、公的な窓口にも相談できなくなりますか。

案内役

国の資料には、相談先についての決まりがいくつかあります。国に登録した会社は、公的な窓口への相談などを、秘密保持の条項で縛らないことが登録の条件になっています。

秘密保持と相談先について、国の資料に書かれていることは次のとおりです。

  • 17の事項の7番: 何が秘密の対象かと、専門家や事業承継・引継ぎ支援センターなどに話すときに、秘密保持の義務を一部外すかどうかを説明する
  • 登録の条件: 国に登録する会社は、秘密保持の条項の中身にかかわらず、売り手が国の情報提供受付窓口に知らせることや、事業承継・引継ぎ支援センターなどに相談することを制約しないこと(公募要領 令和8年度 7ページ)
  • 国の窓口への相談: 登録した会社は、売り手が情報提供受付窓口に相談したことだけを理由に、秘密保持の違反として訴えるなど、不利益な扱いをしないと誓約しています(公募要領 令和8年度の重要注意事項)
  • 経営者保証の相談: 売り手が、経営者保証の扱いについて弁護士などの専門家や金融機関に相談したいときは、それを拒まず、秘密保持の条項の対象から外す(ガイドライン95〜97ページ)
  • 会社の名前を明かすとき: 会社名を伏せた資料を見て興味を示した候補に、会社の名前を明かすのは、候補ごとに売り手の同意を取り、候補と秘密保持契約を結んでから(ガイドライン93ページ)

中小企業庁のチラシ「M&A支援機関の選定・契約時に確認すべき事項」は、手数料や支援の中身に疑問があるときは、事業承継・引継ぎ支援センターや士業などの専門家への相談(セカンド・オピニオン)も有効だとしています。

国のデータベースで、先に確かめられること

社長がノートパソコンの画面を見ながら、メモ帳に書き留めている場面
社長

契約書をもらう前に、自分で調べておけることはありますか。

案内役

手数料の決まりと、17番の情報共有の仕組みへの加盟は、国のデータベースの届出で見られます。契約の条項そのものは、契約書と説明の書面で確かめます。

国のデータベースでは、機関ごとに、次の届出を見られます(2026年10月12日取得)。

  • 料率表・手数料の基準となる金額・最低手数料
  • 着手金・中間金・月額報酬の有無と、成功報酬に含むかどうか
  • 不適切な買い手の情報を共有する仕組みに加盟しているか。仲介の業務がある2,978機関のうち、「加盟している」は108機関(3.6%)でした

届出は各機関の自己申告で、実際の契約書と違うことがあります。気になる会社の届出は通信簿で見られます。全機関の手数料を同じ条件で比べるときは、手取りの計算機をお使いください。情報共有の仕組みについては、不適切な買い手から会社を守るにはと用語集で説明しています。

契約書の案を受け取ったときの確認表

社長

結局、契約書のどこを見ればいいですか。

案内役

次の表の左の項目を、契約書の案と、説明の書面の中で探してみてください。右の列は、国の資料が仲介会社に求めている目安です。

確かめる項目 契約書で見るところ 国の資料の目安
専任 制限の範囲、別の意見を聞けるか 範囲はできるだけ狭く。理由がなければ別の意見を認める
契約の期間 期間の長さ、更新の決まり 専任なら最長でも6か月〜1年以内
途中の解約 いつでも解約できるか いつでも解約できることを書く
テール テール期間、対象になる相手 最長でも2年〜3年以内。名前を明かして紹介した相手に限る
直接交渉 制限される相手・話・期間 紹介した候補、M&Aのための話、契約が終わるまで
秘密保持 相談先の例外 センターや国の窓口への相談を妨げない
手数料 最低手数料、着手金、中間金 書面で説明する

表の目安は、ガイドラインと登録制度の公募要領が、仲介会社に求めていることです。実際の契約書がどう書かれているか、その条項をどう判断するかは、契約ごとに違います。判断に迷う条項は、事業承継・引継ぎ支援センターや弁護士などの専門家に、別の意見を聞くことができます。

着手金や中間金を「成功報酬に含まない」と届け出た機関は、譲渡額1億円で計算すると、その分を足した手数料で並びます。

よくある質問

社長 専任の契約をしたら、ほかの会社には一切相談できなくなりますか?
案内役

ガイドラインは、専任の条項の範囲をできるだけ狭くし、止める合理的な理由がなければ、ほかの支援機関に別の意見を聞くことを認めるよう、仲介会社に求めています。事業承継・引継ぎ支援センターなどへの相談を、秘密保持の条項で縛らないことも、国の登録の条件です。実際にどこまで認められるかは、契約書の専任の条項で確かめてください。

社長 テール期間は、何年くらいが目安ですか?
案内役

中小M&Aガイドライン(第3版)は、最長でも2年〜3年以内を目安としています。対象は、その会社が名前を明かして紹介した相手に限るとしています。実際の期間と対象は契約ごとに違うので、契約書で確かめてください。

社長 契約したあとで、途中でやめることはできますか?
案内役

ガイドラインは、専任の条項がある場合、売り手がいつでも途中で解約できることを契約に書く(口頭ではっきり伝えることを含む)よう求めています。解約したときに、払ったお金や、テール条項がどうなるかも含めて、契約書の解除の条項で確かめてください。

社長 説明を聞いたその場で、署名を求められました。
案内役

ガイドラインは、説明のあと、契約を決めるための十分な検討の時間を与えることを求めています。考える時間を与えずに即決を迫る営業も、してはいけないとしています。気になる営業や対応があったときは、国の情報提供受付窓口に知らせることができます。

社長 ガイドラインの中身は、どこで読めますか?
案内役

中小企業庁がガイドライン本文を公表しています。M&A支援機関登録制度HPには、登録した会社が守る事項をまとめた「遵守事項一覧チェックシート」と「HP掲載あるいは顧客事前説明の際の参考資料」(令和8年度)も載っていて、ガイドラインの該当ページも書かれています。

社長

専任やテールは、言葉は聞いたことがあっても、中身までは読んでいませんでした。期間と相手の範囲を、契約書の中で探してみます。

案内役

国の目安と並べると、どこを聞けばいいかが見えてきます。説明の書面も、契約書と一緒に手元に残しておいてください。

このデータについて

  • 出典:M&A支援機関登録制度HP 登録支援機関データベースを加工して作成(取得日 2026年10月12日)。データは各機関の届出(自己申告)です
  • 着手金・中間金・月額報酬・情報共有の仕組みへの加盟の数は、仲介の業務がある2,978機関の、売り手側の届出で数えました。手数料の詳細を取得できなかった5機関は「あり」に数えていません
  • ガイドラインの中身は、国の資料の要約です。ページ番号は中小M&Aガイドライン(第3版)のもので、M&A支援機関登録制度の「遵守事項一覧チェックシート」(令和8年度・2026年8月28日差替)に書かれた該当ページによります
  • 当サイトは、契約の内容の判断や、仲介・交渉、価格や税についての助言は行いません。契約の中身は、各機関に書面で確かめてください

出典