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契約

M&Aの仲介とFAの違い|手数料を受け取る相手と、ガイドラインが仲介者に求める説明

M&Aの仲介は売り手と買い手の両方と契約し、FAは一方とだけ契約します。手数料の受け取り方の違い、利益相反について中小M&Aガイドライン(第3版)が仲介者に求めていること、国のデータでの件数をまとめました。

書いた人

M&A仲介の通信簿 編集部

国の「M&A支援機関登録制度」の届出を毎月取り込み、仲介会社の手数料を同じ条件で計算して載せています。記事は中小企業庁のガイドラインなど公的な資料にもとづいて書き、仲介や交渉、価格や税の助言はしません。

売り手と買い手の建物の模型の間に天びんが置かれた机と、真ん中に立つ案内役と片側に立つ案内役を見比べる社長のアイソメトリックのイラスト
社長

「仲介」と「FA」という言葉を聞きました。どちらも会社を売るのを手伝ってくれるところだと思うのですが、何が違うのですか。

案内役

いちばんの違いは、誰と契約して、誰から手数料を受け取るかです。国の資料とデータで違いを確かめ、契約の前に見ておくことをまとめます。

先に結論

  • 仲介は売り手と買い手の両方と契約し、両方から手数料を受け取るのが通常です。FAは売り手か買い手の一方とだけ契約し、その一方から手数料を受け取ります
  • 国に報告された2024年度の成約では、売り手側4,940件のうち4,024件(81.5%)が仲介、916件(18.5%)がFAの支援でした
  • 中小M&Aガイドライン(第3版)は仲介者に、両方から手数料を受け取ることを伝える、利益が対立しうる事項を説明する、買い手の手数料を書面で説明する、などを求めています。買い手から追加の手数料を受け取ってその買い手に便宜を図るなどの行為は、禁止しています
  • 国のデータベースでは、仲介とFAの両方の業務を届け出ている機関が2,841(84.5%)あります。あなたとの契約が仲介かFAかを、契約の前に書面で確かめてください
  • 仲介の届出がある機関の手数料は、計算機で同じ条件で比べられます:譲渡額1億円で計算する

仲介とFAは「誰と契約するか」が違う

社長

仲介とFAは、手伝ってくれる中身が違うのですか。

案内役

中身より先に、契約の相手が違います。仲介は売り手と買い手の両方の依頼を受け、FAは片方の依頼だけを受けます。

中小M&Aガイドライン(第3版・2024年8月)の用語集は、2つを次のように定めています。

  • 仲介者:売り手(譲り渡し側)と買い手(譲り受け側)の双方との契約に基づいて、相手探しなどの支援を行う支援機関
  • FA(フィナンシャル・アドバイザー):売り手か買い手の一方との契約に基づいて、相手探しなどの支援を行う支援機関

ガイドラインの比較の表(第1章Ⅱ3)をもとに、違いをまとめると次のとおりです。

比べる点 仲介 FA
契約の相手 売り手と買い手の両方 売り手か買い手の一方
手数料を受け取る相手 両方から受け取るのが通常 契約した一方から
支援のしかた いずれか一方の利益だけを優先して扱うことはできない。双方の意向をまとめて把握し、双方に共通の目的であるM&Aの成立を目指して助言や調整を行う 依頼者の意向をふまえ、依頼者にとって有利な条件での成立を目指して助言や調整を行う

ガイドラインは、それぞれが使われる場面の例も挙げています。仲介は、最も有利な条件だけを重視するのではなく、仲介者が双方とやりとりすることで手続きを円滑に進めることを重視する場合です。FAは、最も有利な取引条件での成立を重視する場合や、債権者・株主などとの関係で、最も有利な条件を目指す必要がある場合です。どちらの業務を頼むかを相談できる支援機関もある、とも書いています。言葉の意味は、用語集の仲介とFAにもまとめています。

国のデータで見る仲介とFA

社長

実際には、どちらが多いのですか。

案内役

成約の数では仲介が約8割です。ただ、機関の多くは仲介とFAの両方の業務を届け出ています。

M&A支援機関登録制度HPの「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」によると、登録機関から報告された2024年度の成約は次のとおりです(2026年10月12日に確認)。

報告した側 仲介 FA 合計
売り手側 4,024(81.5%) 916(18.5%) 4,940
買い手側 4,005(85.1%) 703(14.9%) 4,708

国の解説も、報告されたM&Aの約8割が仲介、約2割がFAの支援を受けている、と書いています。ガイドラインも、中小M&Aの実務ではFAより仲介の形の方が多く使われているとしています(第2章Ⅱ5)。

一方、国の登録支援機関データベース(2026年10月12日取得・3,362機関)では、各機関が仲介とFAの業務の有無を届け出ています。

届け出ている業務 機関の数 割合
仲介とFAの両方 2,841 84.5%
FAだけ 384 11.4%
仲介だけ 137 4.1%

機関の種類の表示では、「M&A専門業者 - 仲介」が796機関、「M&A専門業者 - FA」が360機関でした。種類は1機関に1つだけ表示されます。「M&A専門業者 - 仲介」の796機関のうち722機関はFAの業務も、「M&A専門業者 - FA」の360機関のうち267機関は仲介の業務も届け出ていました。

仲介には「利益相反のおそれ」がある

社長

両方から手数料を受け取ると、どちらの味方なのかが気になります。

案内役

ガイドラインも、その構造を「利益相反のリスク」として書いています。そのうえで、仲介者が守ることを決めています。

ガイドラインは、売り手と買い手は、M&Aの条件について利益が対立しうる関係にあると書いています(第2章Ⅱ5)。たとえば譲渡の値段は、売り手には高い方が望ましく、買い手には安い方が望ましい関係です。そのため、仲介者が一方、特に次の案件でもまた依頼してくれる可能性のある買い手の利益を優先して、取引をまとめる動機がある、という指摘があるとしています。

反対に、譲渡額が上がると手数料も上がる形の場合は、売り手の利益を優先する動機が働く、という指摘もあると併記しています。ガイドラインは、利益相反がただちに違法になるわけではないとし、仲介という形を中小M&Aで不適切と決めつけるのは現実的ではない、ともしています。そのうえで、利益相反のリスクを最小限にするための措置を、仲介者に求めています。

ガイドラインが仲介者に求めていること

社長

仲介者は、具体的に何をすることになっているのですか。

案内役

最低限の3つの措置と、してはいけない5つの行為が書かれています。してはいけない行為は、仲介契約書に仲介者の義務として書くことまで求められています。

中小M&Aガイドライン(第3版)第2章Ⅱ5は、仲介者に、最低限、次の3つの措置を求めています。

  1. 売り手と買い手の両方と仲介契約を結ぶ仲介者であること(特に、両方から手数料を受け取る定めがあるときはその旨)を、両方に伝える
  2. バリュエーション(会社の価値の評価)やDDのように、一方の意向に沿った内容になりやすい工程について、結論を決めない。必要に応じて士業等専門家などの意見を求めるよう、依頼者に伝える
  3. 仲介契約を結ぶときに前もって、両者の利益が対立しうる事項を、それぞれに明示的に説明する。一方にだけ有利または不利な情報を知ったときは、それぞれに適時に明示的に開示する

あわせて、少なくとも次の行為をしてはならず、仲介契約書に、これらをしないことを仲介者の義務として定めなければならない、としています。

  • 買い手から追加で手数料を受け取り、その買い手に便宜を図る(当事者の希望に反した相手探しを優先する、不当に安い値段に誘導するなど)
  • 何度も依頼してくれる依頼者を優遇し、その依頼者に便宜を図る
  • 希望した譲渡額より高く(買い手なら安く)成立したときに、正規の手数料とは別に、差額の一定の割合を報酬として求める
  • 一方から伝えるよう頼まれたことを相手に伝えない、または言っていないことを偽って伝える
  • 一方にだけ有利または不利な情報を知ったのに、その当事者に伝えずに隠す

このほかガイドラインは、仲介者が確定的なバリュエーションを行わないこと、DDを自ら行わず、DD報告書の結論を決めないことも求めています(第2章Ⅱ4)。契約の前に渡す書面には、仲介とFAの違いと特徴(両方から手数料を受け取る場合はその旨)や、両者の利益が対立しうる事項を書いて説明することになっています。

買い手が払う手数料も、売り手に関係する

社長

買い手が仲介会社に払う手数料は、うちには関係ないのではありませんか。

案内役

ガイドラインは、関係があると書いています。買い手が用意できるお金の中から、譲渡額と買い手の手数料の両方が出るからです。

ガイドラインは、買い手がM&Aに使える予算を決めると、その範囲の中で、売り手に払う譲渡額と、買い手が仲介者に払う手数料が決まる、という構造を説明しています(第1章Ⅴ4)。そのため仲介者に、契約の前に、相手方の手数料(報酬率、報酬基準額、最低手数料の額、報酬の発生タイミングなど)を、相手方を含めた手数料の総額が成立や条件(譲渡額など)に影響しうることとあわせて、書面で説明するよう求めています(第2章Ⅱ4)。

説明のあとで相手方の手数料を増やす場合は、その内容を開示するよう求めています。開示が必要になる基準を前もって決めるなら、報酬率・報酬基準額・最低手数料のそれぞれについて、具体的な数字で決めることとしています。依頼者の手数料を下げる場合は、その分を相手方の手数料の増額で埋め合わせていないことを、あらためて説明するよう求めています。FAが、相手方を支援するFAからお金を受け取る場合も、額・名目・時期を依頼者に説明するよう求めています。

国の登録データ(2026年10月12日取得)では、仲介の業務がある2,978機関のうち2,953機関が、買い手側の成功報酬の算定方式も届け出ていました(「報酬無し」は20機関)。売り手側と買い手側の両方に料率表を届け出ている2,589機関のうち、2,503機関(96.7%)は両側が同じ料率表です。買い手側の届出も、国のデータベースや通信簿で見られます。

契約の前に確かめたいこと

社長

契約の前に、何を確かめればいいですか。

案内役

国のチェックリストと説明書のひな形をもとに、5つにまとめました。どれも書面で確かめてください。

ガイドラインの参考資料6「仲介契約・FA契約締結時のチェックリスト」は、仲介とFAの違いを理解したうえで、「本件では仲介者とFAのいずれに該当するかを確認したか」を確認事項の1つにしています。参考資料11の重要事項説明書のひな形にも、仲介かFAかに印を付ける欄と、仲介の場合の相手方の手数料を書く欄があります。

  1. この契約は仲介かFAか
  2. 仲介なら、買い手からも手数料を受け取るか。買い手の手数料の算定基準・最低手数料・支払時期
  3. 買い手の手数料があとで増えたとき、どの基準で知らせてもらえるか
  4. 両者の利益が対立しうる事項として、何が説明されたか
  5. バリュエーションやDDで、仲介者がしない業務は何か。専門家の意見を求められることが書かれているか

売り手への説明では、不適切な買い手の情報を共有する仕組みに参加しているかどうかも、説明の項目になっています(不適切な譲り受け側の情報共有の仕組み)。不適切な買い手については不適切な買い手に注意、契約書のほかの確認点は契約の前に確かめること、手数料の計算はレーマン方式の計算のしかたにまとめています。説明に疑問が残るときの公的な相談先は、公的な相談窓口にあります。

計算機は、仲介の売り手側の届出で計算しています。譲渡額3億円で計算すると、大きめの会社の例も見られます。

よくある質問

社長 仲介とFAで、手数料の決め方は違いますか?
案内役

国のデータベースでは、FAの売り手側の届出も、仲介と同じく株価や移動総資産などを基準にしたレーマン方式が多く、最低手数料の中央値も300万円で同じでした。違いは、仲介が買い手からも手数料を受け取るのが通常なのに対し、FAは契約した一方からだけ受け取ることです。実際の手数料は、契約書で確かめてください。

社長 仲介かFAかは、通信簿で分かりますか?
案内役

通信簿には、各機関が国に届け出た「仲介」「FA」の業務の有無を載せています。ただ、両方を届け出ている機関が多いので、あなたとの契約がどちらになるかは、契約書と重要事項の説明書で確かめてください。

社長 仲介者は、会社の値段を決めてくれますか?
案内役

中小M&Aガイドラインは、両方を依頼者とする仲介者は確定的なバリュエーションを行わないこととしています。参考として簡易に算定した概算額を示す場合は、確定的なものではないことや、必要に応じて士業等専門家などの意見を求められることを、両方に明示するよう求めています。

社長 仲介者の対応に疑問があるときは、どこに伝えられますか?
案内役

国のM&A支援機関登録制度に「情報提供受付窓口」があり、登録機関の不適切な事例の情報を受け付けています。紛争の解決や助言をする窓口ではありません。M&A全般の相談は、各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターで無料で受けられます。

社長

同じ「M&Aの会社」でも、契約の形で立場が違うのですね。まず、うちとの契約がどちらになるのかを確かめます。

案内役

それが最初の確認です。仲介なら、買い手の手数料と、利益が対立しうる事項の説明も、契約の前に書面で確かめてください。

このデータについて

  • 出典:M&A支援機関登録制度HP 登録支援機関データベースを加工して作成(取得日 2026年10月12日)。データは各機関の届出(自己申告)です
  • 成約の件数は、M&A支援機関登録制度HP「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」の2024年度の値です(2026年10月12日に確認)。登録機関から報告された案件で、すべてのM&Aを網羅したものではありません
  • 割合は、届出と報告をもとに当サイトが計算した値(試算)です。機関の評価や順位を示すものではありません
  • 実際の契約の形や手数料は、必ず各機関に確かめてください。当サイトは仲介や交渉、価格や税についての助言は行いません

出典