くわしく
中小M&Aガイドライン(第3版)の参考資料1は、事業譲渡を、売り手の会社が持っている事業の全部か一部(土地・建物・機械などの資産や負債、ノウハウや知的財産も含む)を、買い手に渡す方法だとしています(参考資料1 1ページ)。
資産・負債・契約・許認可を一つずつ移すため、取引先との債権債務や社員との雇用などの契約は、相手の同意を取って一つずつ切り替える必要があります。不動産があれば登記の手続きも要ります。許認可は買い手に引き継がれないことが多く、その場合は買い手が新しく取り直します。手続きは株式譲渡より煩雑になるのが一般的ですが、事業や財産ごとに渡せるので、事業の一部を手元に残すこともできます(参考資料1 1〜2ページ)。
ガイドラインは、個人事業主のM&Aでは事業譲渡(営業譲渡)を使うのが通常だとしています(49ページ)。株主が分散していたり、居場所の分からない株主がいたりして株式譲渡が難しくても、株主総会の特別決議で承認できる場合には、事業譲渡が有効な手段になるとしています(118ページ)。
国のデータで見ると
国の「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」では、2024年度に登録機関から報告された売り手側の4,940件のうち、事業譲渡は1,180件(23.9%)、株式譲渡は3,452件(69.9%)でした(2026年10月13日確認)。報告のあった案件の集計で、すべてのM&Aを含むものではありません。
誤解されやすい点
- 事業を渡すのは株主ではなく会社です。ガイドラインは、事業譲渡の代金は会社に入るとしています(118ページ)。社長個人の手元に残る額や税の扱いは株式譲渡と違うため、一般的なしくみは会社を売却したときの税金と手取りを、税額は税理士に確かめてください
- 全部を渡すとは限りません。ガイドラインは、株式譲渡も事業譲渡も全部の譲渡は必須ではなく、一部だけのこともあり、売り手と買い手の話し合いで決まるとしています(48ページ)
- 買い手は引き継ぐ事業や財産を選べるため、帳簿に出ていない借金などのリスクを切り離しやすいと、ガイドラインは書いています(48〜49ページ、参考資料1 2ページ)