社長
売上が落ちて、借入れの返済が重くなってきました。この先、会社をやめるとしたら「廃業」なのか「倒産」なのか、その違いもよく分かっていません。
案内役
廃業と倒産は似た言葉ですが、借入れを返しきれるかどうかで、進む手続きが大きく変わります。言葉の意味、国の白書に載っている数、借入れが残るときの道を、法律と国の資料に書かれているとおりに並べます。どの道を選ぶかは社長ご自身が決めることで、このサイトはどれもすすめません。
先に結論
- 廃業は、社長が決めて事業をやめること。倒産は、借入れなどを払えなくなったり、事業を続けるのが難しくなったりした状態のことです。どちらも、法律で決まった手続きの名前ではありません
- 2026年版中小企業白書が民間の調査会社の調査をもとに載せた数では、2025年の休廃業・解散は67,949件、倒産は10,300件でした。休廃業・解散した会社の49.1%は直前の決算で黒字でした
- 会社の財産で借入れなどを全部返せるなら、解散と清算(通常の清算)で会社をたたみます。返しきれないことが明らかになったり、債務超過の疑いがあったりすると、破産や特別清算という裁判所の手続きになります(会社法484・511条)
- 事業を続けながら借入れを整理する道には、民事再生などの裁判所の手続きと、裁判所を通さない私的整理があります。中小M&Aガイドライン(127ページ)は、公表されない私的整理をできるだけ目指すことが望ましいとしています
- 国の資料は、倒産に追い込まれないよう余力のあるうちに事業を終える「円滑な廃業」や、黒字の事業だけを渡す道も挙げています。売る場合の手数料を引いた額は、譲渡額3,000万円で計算するのように確かめられます
- 借入れや保証の悩みは、各都道府県の中小企業活性化協議会に無料で相談できます。ただし、民事再生や破産などをすでに申し立てた会社は対象になりません(中小企業庁)
廃業と倒産は、何が違うのか
社長
廃業と倒産は、何がいちばん違うのですか。
案内役
やめると決めるのが社長自身か、借入れなどを払えなくなってやめざるをえないか、です。国の白書でも、2つは別々に数えられています。
「廃業」と「倒産」は、ふだん使われる言葉で、法律で決まった手続きの名前ではありません。会社法・破産法・民事再生法の条文を確かめると、「廃業」「休業」という語はなく、「倒産」も「外国倒産処理手続」という手続きの名前の中に出てくるだけでした(e-Gov法令検索、2026年10月16日に確認)。
中小企業庁の「2026年版 中小企業白書」は、2つを別々の図に載せ、それぞれの意味を図の注に書いています(Ⅰ-47・49ページ)。
| 比べる点 | 廃業(白書では「休廃業・解散」) | 倒産 |
|---|---|---|
| 白書の注にある意味 | 倒産(法的整理)によるものを除き、特別な手続きを取らずに事業が止まった状態(休廃業)か、登記などで解散が確かめられたもの | 会社が債務の支払不能に陥ったり、経済活動を続けるのが難しくなったりした状態 |
| 白書の分け方 | 休廃業と解散。最後の登記から12年たって解散したとみなされる「みなし解散」は除く | 法的倒産(会社更生法・民事再生法・破産・特別清算)と、私的倒産(銀行取引停止処分・内整理) |
| やめると決めるのは | 社長や株主。株式会社は、株主総会の決議などで解散する(会社法471条) | 払えなくなったことがきっかけになる。破産の申立ては、会社だけでなく債権者もできる(破産法18条) |
| 借入れなどの債務 | 会社の財産で払い終えてから、残った財産を株主に分ける(会社法481・502条) | 期限どおりに払えない、または払いきれない。裁判所の手続きや、債権者との話し合いで整理する |
白書の注は、休廃業・解散は調査の時点の状態で、のちに事業を再開することを否定するものではないとしています。休廃業・解散のあとに法的整理に移った会社は、倒産として数え直す場合もあるとしています(Ⅰ-49ページ)。
8つの言葉の違い(廃業・休業・解散・清算・倒産・破産・民事再生・特別清算)
社長
解散、清算、破産、民事再生と、似た言葉が多くて区別がつきません。
案内役
法律に手続きの決まりがある言葉と、ふだんの言い方とを分けると整理しやすくなります。条文と国の案内で確かめた意味を、1つの表にまとめます。
| 言葉 | 意味 | 決まりと根拠 |
|---|---|---|
| 廃業 | 事業をやめること。会社をたたむ意味でも使われる | 法律の手続きの名前ではない。会社は解散・清算をする。個人事業なら、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を、その年分の確定申告の期限までに出す(国税庁 A1-5) |
| 休業 | 会社を残したまま、事業を止めていること | 法律の手続きの名前ではない。会社は残るので、事業年度ごとの税の申告は続く(法人税法74条)。最後の登記から12年たった株式会社は、解散したとみなされることがある(会社法472条) |
| 解散 | 会社の仕事をやめると決めること | 株主総会の決議や、破産手続開始の決定などで解散する(会社法471条)。解散しても、清算が終わるまでは清算の目的の範囲で会社は続く(476条) |
| 清算 | 解散したあとの後片づけ。仕事を終わらせ、売掛金などを回収して債務を払い、残った財産を株主に分ける | 会社法475・481条。財産で債務を払いきれないことが明らかになったら、清算人は直ちに破産の申立てをする(484条) |
| 倒産 | 債務を払えなくなったり、事業を続けるのが難しくなったりした状態 | 法律の手続きの名前ではない。白書は、法的倒産と私的倒産に分けて数えている |
| 破産 | 裁判所が選んだ破産管財人が、財産をお金に換えて債権者に分ける(配当する)手続き | 破産法2・15・16・74・78条。会社は、破産による清算の目的の範囲で、手続きが終わるまで続くものとみなされる(35条) |
| 民事再生 | 債権者の多数の同意と裁判所の認可を得た再生計画で、事業の立て直しを図る手続き。原則として事業は続き、経営者も替わらない | 民事再生法1・38・172条の3・174条、裁判所の案内 |
| 特別清算 | 解散して清算中の株式会社で、清算に著しい支障がある事情か、債務超過の疑いがあるときに、裁判所の監督のもとで行う清算 | 会社法510・511・519条 |
事業承継ガイドライン(第3版、40ページ)は、借入れを整理する方法を、裁判所が関わる「法的整理」と、関わらない「私的整理」の2つに大きく分けています。法的整理の代表として民事再生と会社更生を挙げ、民事再生は個人と法人のどちらも使え、一般の中小企業に適した手続き、会社更生は株式会社が対象で(会社更生法1条)、裁判所が選ぶ更生管財人のもとで再建を図る、主に大企業に適した手続きと説明しています。破産と特別清算も、法的整理に分類される手続きとしています。
解散から清算結了までの書類・期間・費用は会社の解散・清算の手続きに、会社を休ませる場合の登記と税は休眠会社とはにまとめています。
休廃業・解散と倒産の数(2026年版中小企業白書)
社長
会社がなくなるのは、倒産が多いのでしょうか。
案内役
国の白書が載せた数では、倒産よりも、休廃業・解散の方がずっと多くなっています。ただ、2つは別々の調査会社の数で、数え方が違います。
2026年版中小企業白書は、倒産と休廃業・解散の件数を、それぞれ民間の調査会社の調査をもとに載せています。
| 2025年 | 件数 | 白書の図と数え方 |
|---|---|---|
| 休廃業・解散 | 67,949件 | 第1-1-41図(Ⅰ-49ページ)。みなし解散を除く |
| 倒産 | 10,300件 | 第1-1-39図(Ⅰ-47ページ)。負債1,000万円以上の倒産を数える |
件数だけを並べると、休廃業・解散は倒産のおよそ6.6倍です。調査をした会社も数え方も違うので、目安として見てください。白書の本文と図からは、次のことが分かります。
- 倒産は、2009年以降は減る傾向でしたが、2021年を底に増える傾向に変わり、2025年は10,300件でした。従業員10人未満の会社が大半を占めています(Ⅰ-47ページ)
- 2025年の倒産を業種別に見ると、「サービス業他」33.8%、建設業19.6%、製造業11.5%の順でした(第1-1-40図、Ⅰ-48ページ)
- 休廃業・解散は、2016年から2022年にかけて減る傾向でしたが、2023年に増える傾向に変わり、2025年は前の年より減って67,949件でした(Ⅰ-49ページ)
| 年 | 休廃業・解散の件数 | 直前の決算で黒字だった割合 |
|---|---|---|
| 2016年 | 60,168件 | 55.7% |
| 2020年 | 56,103件 | 57.1% |
| 2022年 | 53,426件 | 54.3% |
| 2024年 | 69,019件 | 51.1% |
| 2025年 | 67,949件 | 49.1% |
黒字か赤字かは、休廃業・解散の直前の当期純利益で分けています。白書は、黒字で休廃業・解散する会社の割合は下がる傾向にあり、2025年は半数を下回ったと書いています(第1-1-42図、Ⅰ-50ページ)。それでも、休廃業・解散した会社の半分近くは、黒字のままやめていました。用語集の黒字廃業もご覧ください。
国の統計では、法務省の「登記統計」に、株式会社の解散や破産などの登記の件数が出ています(本店の所在地でされた登記の数)。
| 株式会社の登記の種類 | 2023年 | 2024年 | 2025年 |
|---|---|---|---|
| 解散 | 20,743件 | 20,795件 | 22,248件 |
| 清算の結了 | 18,182件 | 18,717件 | 19,643件 |
| 特別清算に関する登記 | 546件 | 676件 | 785件 |
| 破産又は民事再生に関する登記 | 9,324件 | 11,164件 | 12,060件 |
| 会社更生に関する登記 | 9件 | 29件 | 37件 |
これは登記の件数で、会社の数と同じとは限りません。破産と民事再生は1つの行にまとめられています。合併などによる解散は、別の行で数えられています。
白書は、厚生労働省の「雇用保険事業年報」から計算した「廃業率」も載せています。2024年度の廃業率は3.7%(開業率は3.8%)でした。雇用保険の保険関係がある事業所の数で計算しているため、会社ごとの数ではなく、人を雇っていない事業者の廃業は入っていません(第1-1-38図、Ⅰ-46ページ)。
借入れを返せるかどうかで、道が分かれる
社長
うちの場合、どの手続きになるのかは、何で決まるのですか。
案内役
いちばんの分かれ目は、会社の財産で借入れなどを全部返せるかどうかです。もう一つは、事業を続けたいかどうかです。
法律と国の資料の記述を、2つの分かれ目で並べると次のようになります。
| 会社の状況 | 事業をやめる場合 | 事業を続ける・引き継ぐ場合 |
|---|---|---|
| 財産で借入れなどを全部返せる | 解散と清算(通常の清算) | そのまま続ける。売る・引き継ぐ |
| 返しきれない、またはその疑いがある | 特別清算(株式会社)か、破産 | 私的整理(中小企業活性化協議会などが関わるもの)、民事再生、会社更生 |
返しきれないときに、どの手続きに進むかは、会社法と破産法が次のように決めています。
- 清算の途中で、会社の財産で債務を払いきれないことが明らかになったら、清算人は直ちに破産手続開始の申立てをしなければなりません(会社法484条)
- 清算中の株式会社に債務超過の疑いがあるときは、清算人は特別清算開始の申立てをしなければなりません(会社法511条)
- 会社が破産する原因は、支払不能(期限の来た債務を、支払う力がないために、ずっと払えない状態)か、債務超過(財産で債務を払いきれない状態)です(破産法2・15・16条)
ここでいう債務超過は、帳簿の数字だけで決まるとは限りません。中小M&Aガイドライン(30ページ)は、帳簿の上では債務超過でも、資産と負債を時価で見直すと、実際には資産の方が多いと分かる場合もあるとしています。
事業を続ける道の民事再生は、破産の原因になる事実が生じるおそれがあるときや、事業の継続に大きな支障を来さずには期限の来た債務を払えないときに、申立てができます(民事再生法21条)。裁判所の案内は、資金繰りが苦しい状況なら、経済的に行き詰まる前でも申立てができる手続きだと説明しています。
国の資料は、借入れが重い中小企業が少なくないことも示しています。2026年版中小企業白書のコラム(Ⅰ-9〜10ページ)は、国の「中小企業実態基本調査」から、債務超過の中小企業は2017年度から2024年度まで50万社前後で推移し、2024年度は、債務超過で、しかも利息のつく借入れなどがEBITDA(減価償却前の利益)の10倍を超えるか、EBITDAがマイナスの会社が約40万者に上ると推計しています。
返せないときの裁判所の手続き(破産・特別清算・民事再生)
社長
破産と特別清算と民事再生は、どう違うのですか。
案内役
会社を清算するのか立て直すのか、誰が財産を管理するのか、債権者にどう払うのかが違います。法律の条文と裁判所の案内で並べます。
| 比べる点 | 破産 | 特別清算 | 民事再生 |
|---|---|---|---|
| ねらい | 財産をお金に換えて債権者に分ける(清算) | 解散した株式会社の清算を、裁判所の監督のもとで行う | 再生計画で、事業の立て直しを図る |
| 使える人・会社 | 会社と個人 | 解散して清算中の株式会社 | 会社と個人 |
| 始まる原因 | 支払不能。会社は債務超過も(破産法15・16条) | 清算に著しい支障を来す事情か、債務超過の疑い(会社法510条) | 破産の原因が生じるおそれなど(民事再生法21条) |
| 財産を管理する人 | 裁判所が選んだ破産管財人(破産法74・78条) | 清算人。清算は裁判所の監督のもとに置かれる(会社法519・523条) | 原則として会社自身。監督委員が選ばれ、例外的に管財人が選ばれることもある(民事再生法38・54・64条) |
| 債権者への払い方 | 財産をお金に換えて配当する | 協定(債権者集会で、出席した議決権者の過半数と、議決権の総額の3分の2以上の同意)か、債権者との個別の和解(会社法567条、裁判所のQ&A) | 再生計画(議決権者の過半数と、議決権の総額の2分の1以上の同意のうえ、裁判所が認可。民事再生法172条の3・174条) |
| 申立ての手数料(収入印紙) | 1,000円(債権者が申し立てるときは2万円) | 2万円 | 1万円 |
手数料のほかに、郵便料と予納金がかかります。予納金の額は、裁判所や申立ての中身によって違うとされています(裁判所の手続の案内)。
それぞれの手続きについて、裁判所の案内とQ&Aには次のことが書かれています。
- 破産: 財産がとても少なく、財産をお金に換えても手続きの費用も出せないときは、破産管財人を選ばずに手続きを終えることがあり、これを「同時廃止」という(破産法216条)
- 民事再生: 手続きが始まったあとも、原則として事業は続き、監督委員が選ばれるが、経営者は替わらない。例外的に管財人が選ばれると、経営者は自分で事業を続けられなくなる
- 特別清算: 債権者が少ないときなどは、裁判所の許可を得て、債権者全員と個別に和解して清算することが少なくない。どちらの方法が合うかは専門的な知識が要るため、弁護士に相談するよう案内している
中小M&Aガイドライン(127ページ)は、民事再生などの法的整理を申し立てると、事業と信用がある程度傷つくことは避けられないとし、できる限り私的整理(次の節)を目指すことが望ましいとしています。個別の手続きの選び方は、弁護士に確かめてください。
裁判所を通さない道(私的整理)と、無料の相談先
社長
裁判所の手続きは、取引先に知られるのが心配です。
案内役
国の資料は、裁判所を通さない私的整理をできるだけ目指すよう書いています。各都道府県に、無料で相談できる公的な窓口もあります。
事業承継ガイドライン(40ページ)は、私的整理を、一般的には会社の申し出で債務の支払いをいったん止め、話し合いで債務の免除などについて債権者の同意を得ていくものと説明しています。主な方法として、特定調停、中小企業活性化協議会(当時は中小企業再生支援協議会)、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」(中小版GL)による手続き、事業再生ADRを挙げています。
中小M&Aガイドライン(127ページ)は、私的整理について次のように書いています。
- 法的整理と違って官報などで公表されないため、事業や信用が傷つくのを防ぎやすい
- 中小企業活性化協議会や特定調停など、手続きのルールを示した第三者が関わる私的整理を目指すことが望まれる
- 事業を別の会社(第二会社)に移して立て直す「第二会社方式」がよく選ばれる。協議会が関わる中で事業譲渡などをし、そのあとの元の会社を特別清算で整理する方法もある
資金繰りが厳しいときに使える返済の見直し・計画づくりの支援・公的な窓口は、資金繰りが厳しい会社の選択肢にまとめています。
特定調停は裁判所で行う手続きですが、官報などで公表されないものとして、ガイドラインは私的整理の方法に数えています。
| 窓口 | 受ける相談 | 出典 |
|---|---|---|
| 中小企業活性化協議会(再生支援) | 収益性のある事業はあるが、財務上の問題を抱える会社の再生 | 中小企業庁のページ |
| 中小企業活性化協議会(再チャレンジ支援) | 立て直しがきわめて難しい会社や、保証債務に悩む経営者・保証人。協議会の弁護士などが、円滑な廃業や保証債務の整理を助言し、必要なら外部の弁護士を紹介する。個人事業主も相談できる | 中小企業庁のページ |
| 事業承継・引継ぎ支援センター | 廃業しかないと考えている相談者に、M&Aや経営資源を引き継ぐ道を探る。難しければ廃業の相談を受ける | 事業承継ガイドライン 52ページ |
| 商工会議所・都道府県商工会連合会の経営安定特別相談室 | 廃業を考える事業者に、専門家が法的な手続きを助言する | 事業承継ガイドライン 52ページ |
中小企業庁のページによると、中小企業活性化協議会はすべての都道府県に置かれた公的機関で、相談は無料、相談の中身も申込みも秘密を守るとしています。ただし、民事再生や破産などをすでに申し立てた会社は対象になりません(その会社の保証人が、保証債務の整理を相談することはできます)。相談には事前の予約が要ります。
借入れが多い会社が売る道と協議会の使い方は赤字・債務超過でも会社は売却できる?に、センターの使い方は事業承継・引継ぎ支援センターとはにまとめています。
社長の個人保証は、会社の手続きとは別に残る
社長
会社が破産したら、私が保証している借入れはどうなりますか。
案内役
会社の手続きとは別に、保証をした社長個人の問題として残ります。国の資料は、個人の破産を避けて整理できる可能性も挙げています。
経営者保証は、会社の借入れなどを社長が個人で保証していることです。中小企業庁の再チャレンジ支援のページは、すでに会社が廃業や倒産をしていて(またはしそうで)、保証債務の整理に悩んでいる経営者や保証人も、支援の対象として挙げています。
国の資料には、次のように書かれています。
- 「経営者保証に関するガイドライン」を使うと、保証債務を履行するときに、返しきれない債務の残りの免除などができることもある(事業承継ガイドライン 41ページ)
- 2022年3月には、廃業のときに焦点を当てた「廃業時における『経営者保証に関するガイドライン』の基本的考え方」がまとめられ、同年4月15日から運用されている(事業承継ガイドライン 86ページ)。会社が廃業しても保証人は破産手続を避けうることが知られることで、経営者が早めに再生や廃業を決められるようになると期待されている(中小M&Aガイドライン 24ページ)
- このガイドラインを使って、保証債務の免除を受け、一定期間の生計費や華美でない自宅などを残せる方法を考える(中小M&Aガイドライン 129ページ)
- 再チャレンジ支援のページは、このガイドラインを使った保証債務の整理を、個人で破産せずに保証債務の免除を受けられる可能性がある方法として挙げている
保証が会社を売るときにどう扱われるかは経営者保証(個人保証)はM&Aで解除される?にまとめています。個別の扱いは、弁護士や協議会に確かめてください。
倒産に追い込まれる前に、国の資料が挙げる道
社長
まだ返済は続けられていますが、いつまでもつか分かりません。今のうちにできることはありますか。
案内役
国の資料は、判断が遅れるほど選べる道が少なくなると書いています。余力のあるうちに、たたむ道と、売る・引き継ぐ道の両方を比べておくことです。
国の資料には、早く動くことについて次の記述があります。
- 取引先への支払いや給与の支払いが遅れる、返済の見通しが立たず銀行の融資も受けられない、といった倒産寸前の状況で事業の立て直しを考えても、社員を解雇しつつ廃業を選ばざるをえない。業績が悪くなる兆しが出たら、ためらわずに周りの支援者に相談することがきわめて重要(2026年版中小企業白書 コラム1-1-1、Ⅰ-10ページ)
- 判断が遅れた結果、廃業の費用すら出せない状況に陥るケースもある(中小M&Aガイドライン 31ページ)
- 「円滑な廃業」は、廃業をすすめるものではなく、廃業を決めた経営者が、債務超過などに追い込まれて倒産することがないよう、ある程度の余力があるうちに、計画的に事業を終えること(事業承継ガイドライン 50ページ)
事業承継ガイドライン(51ページ)は、廃業を決めたときに計画的に進める準備として、財務の状況をつかむこと、早めに債務を整理すること(借入金の返済、債務整理の手続きの活用など)、廃業の資金を用意すること、取引先・金融機関・社員に説明することの4つを挙げています。手続きと費用の全体は会社をたたむか、売るかにまとめています。
たたむ前に、売る・引き継ぐ道もあります。中小M&Aガイドライン(128ページ)は、会社全体では利益を出せない債務超過の会社でも、部門ごとや店ごとに見ると黒字の事業を持つことも多いとし、その事業だけを譲り渡せば、社員の雇用の受け皿を確保でき、残りをたたむ費用に譲渡の代金を充てられる可能性もあると書いています。一方で、債務超過の会社が事業を安すぎる値段で渡すと、債権者から取り消しを求められるおそれがあるため、少なくとも破産したと仮定した場合の価値(清算価値)を相当程度超える金額が求められるとしています。
売った場合に手元に残るのは、譲渡額から手数料と税を引いた額です。手数料を引いた額は、国に届け出られた手数料から、機関ごとに確かめられます。
計算機の「手取り」は、税を引く前の額です。赤字や債務超過の会社の値段の考え方は赤字・債務超過でも会社は売却できる?に、税のしくみは会社を売却したときの税金と手取りにまとめています。
よくある質問
社長
黒字の会社でも、倒産することはありますか?
案内役
破産法が会社の破産の原因とするのは、損益が黒字か赤字かではなく、支払不能(期限の来た債務を、支払う力がないために、ずっと払えない状態)と債務超過です(破産法2・15・16条)。白書の「倒産」も、債務の支払不能や、経済活動を続けるのが難しくなった状態としています(Ⅰ-47ページ)。黒字でも、手元のお金が足りずに期限どおり払えない状態が続けば、支払不能にあたることがあります。資金繰りの見通しは、顧問の税理士や中小企業活性化協議会に相談してください。
社長
休業と廃業は、どう違いますか?
案内役
休業は、会社を残したまま事業を止めていることで、廃業は事業をやめることです。休業している会社も、事業年度ごとの税の申告は続きます(法人税法74条)。最後の登記から12年たった株式会社は、解散したとみなされることがあります(会社法472条)。くわしくは休眠会社とはをご覧ください。
社長
民事再生をすると、社長は替わりますか?
案内役
裁判所の案内によると、民事再生では手続きが始まったあとも原則として事業は続き、監督委員が選ばれますが、経営者は替わりません。ただし、例外的に管財人が選ばれると、経営者は自分で事業を続けられなくなります(民事再生法38・64条)。
社長
破産の「同時廃止」の「廃止」は、廃業のことですか?
案内役
違います。破産法の「破産手続廃止」は、破産の手続きを終わらせる裁判所の決定のことです。会社の財産で手続きの費用も出せないと認められるときは、費用に足りるお金が前もって納められた場合を除き、破産手続の開始と同時に廃止の決定がされます(破産法216条)。裁判所の案内では、これを「同時廃止事件」と呼んでいます。
社長
まずは決算書で、会社の財産で借入れを返しきれるかを確かめます。そのうえで、協議会とセンターに、たたむ場合と続ける場合の両方を聞いてみます。
案内役
返せるかどうかで道が分かれ、早いほど選べる道が多いと国の資料は書いています。どの道を選ぶかは社長ご自身が決めることです。法律の判断は弁護士に、税は税理士に確かめてください。
このデータについて
- 休廃業・解散と倒産の件数、黒字の割合、廃業率は、中小企業庁「2026年版 中小企業白書」第1部第1章の第1-1-38〜42図(Ⅰ-46〜50ページ)によります。休廃業・解散と倒産の図は、白書が民間の調査会社の調査をもとに作ったもので、図の中の数字はPDFのページを画像にして読みました(2026年10月16日に確認)。債務超過の会社の数は、同じ章のコラム1-1-1(Ⅰ-9〜10ページ)によります
- 倒産の件数は負債1,000万円以上のものです。休廃業・解散の件数はみなし解散を除いたもので、2つは調査をした会社も数え方も違います。「約6.6倍」は、このサイトが2つの件数を割った目安です
- 株式会社の登記の件数は、法務省「登記統計」商業・法人 年次の第16表(本店の件数)を、e-Statで2026年10月16日に確かめました。登記の件数で、会社の数とは一致しないことがあります
- 法律の決まりは、e-Gov法令検索の破産法・民事再生法・会社更生法・会社法・中小企業倒産防止共済法・法人税法で、2026年10月16日に確かめました。申立ての手数料と手続きの説明は、裁判所の手続の案内とQ&A(2026年10月16日に確認)によります
- 中小M&Aガイドラインのページは、各ページ下の「n / 139」の番号、事業承継ガイドラインのページは印字の番号です。中小企業活性化協議会の説明は、中小企業庁のページ(2026年10月16日に確認)によります
- 計算機の手数料は、M&A支援機関登録制度HP 登録支援機関データベースを加工して作成しています(取得日 2026年10月12日)
- 当サイトは、たたむか続けるか売るかの助言や、債務整理・法律・税についての助言は行いません。個別のことは、弁護士・税理士や、中小企業活性化協議会などの公的な窓口に確かめてください
出典
- 中小企業庁 2026年版 中小企業白書 第1部第1章
- e-Gov法令検索 破産法
- e-Gov法令検索 民事再生法
- e-Gov法令検索 会社更生法
- e-Gov法令検索 会社法
- e-Gov法令検索 中小企業倒産防止共済法
- e-Gov法令検索 法人税法
- 裁判所 破産(手続の案内)
- 裁判所 通常再生(手続の案内)
- 裁判所 会社更生・特別清算(手続の案内)
- 裁判所 裁判手続 民事事件Q&A
- 法務省 登記統計 商業・法人 年次(e-Stat)
- 中小企業庁 事業承継ガイドライン(第3版)(2022年3月改訂)
- 中小企業庁 中小M&Aガイドライン(第3版)(2024年8月)
- 中小企業庁 中小企業活性化協議会(収益力改善・再生支援・再チャレンジ支援)
- 中小企業庁 再チャレンジ支援
- 国税庁 A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続
