社長
仲介会社から「まずノンネームシートで打診して、関心のある会社と秘密保持契約を結んだら企業概要書を出します。意向表明書が来たら基本合意書です」と言われました。書類が多くて、どれが何なのか、どこで気をつければいいのか分かりません。
案内役
国の中小M&Aガイドラインと、中小企業庁が出している契約書のサンプルで、書類を流れの順に並べます。誰が作るか、何が書いてあるか、社長が確かめる点と秘密の守り方を、一つずつ確かめましょう。
先に結論
- 会社を売るときの書類は、おおむね「ノンネームシート → 秘密保持契約 → 企業概要書 → 意向表明書 → 基本合意書 → 買い手の調査(DD)の資料 → 最終契約書」の順に出てきます(中小M&Aガイドライン 20〜21・44・47〜48ページ)。案件によって省かれる書類もあります
- ノンネームシートは、会社名を伏せて会社の概要を短くまとめた資料で、買い手の候補に関心があるかを聞くために使います。企業概要書は、会社名と事業・財務の中身が入った資料で、秘密保持契約を結んだ候補にだけ渡します(19〜20・44ページ)
- 会社名を明かす前に、候補ごとに社長の同意を取り、秘密保持契約を結ぶことが、仲介会社・FAに求められています(93ページ)
- 意向表明書は買い手が出す書面で、法的な拘束力(守らないと法的な責任を問われる力)を持たないことが多いとされています。基本合意書も基本的に拘束力はありませんが、独占的に交渉する権利や秘密を守る義務には拘束力を認めるのが通常です(20〜21ページ)
- 国の基本合意書のサンプルでは、譲渡価額は「目途」で、正式な額は最終契約で決めます。有効期間中はほかの相手と交渉しないことや、大きな財産の処分・新たな借入れなどに買い手の同意が要ることも書かれています(参考資料7 12〜13ページ)
- 日本政策金融公庫の「企業概要書」は、公庫の事業資金をはじめて利用するときなどに出す書式で、M&Aで買い手の候補に渡す企業概要書とは別のものです
- 書類に出てくる譲渡額の目安から、手数料を引いた額は譲渡額3,000万円で計算するのように確かめられます。売る流れの全体は会社を売るにはにまとめています
M&Aの書類の順番(一覧)
社長
どの書類が、どの順番で出てくるのですか。
案内役
ガイドラインの言葉の説明と、流れの説明を合わせると、次の順です。社長が出すもの、受け取るもの、相手と結ぶものがあります。
中小M&Aガイドライン(第3版)の「中小M&Aフロー図」(33ページ)は、相談、意思決定、仲介者・FAの選定、会社の価値の評価、相手探し(マッチング)、交渉、基本合意、デュー・ディリジェンス(DD=買い手の調査)、最終契約、クロージング(株式などを渡し、代金を受け取ること)の順に進むとしています。その流れの中で出てくる書類を、順に並べました。
| 順 | 書類 | 誰が作る・出す | いつ | ページ |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 相談の資料(直近3年分の税務申告書・決算書・勘定科目内訳明細書の写し) | 社長 | 支援機関に最初に相談するとき | 34 |
| 2 | 契約の前の説明の書面と、仲介契約書・FA契約書 | 仲介会社・FA | 頼む先と契約を結ぶ前と、結ぶとき | 37・86〜87 |
| 3 | ノンネームシート | 仲介会社・FAが候補に送る | 相手探しの初め | 19・44 |
| 4 | 秘密保持契約書 | 売り手と買い手の候補(仲介会社・FAとの間で結ぶこともある) | 候補が関心を示したあと | 20・44 |
| 5 | 企業概要書 | 仲介会社・FAが、社長から受け取った情報で作ることが多い | 秘密保持契約を結んだあと | 20・44 |
| 6 | 意向表明書 | 買い手の候補 | 企業概要書を見たあと(DDのあとに、もう一度出すこともある) | 20 |
| 7 | 基本合意書 | 売り手と買い手 | 交渉で条件がおおむね合ったとき | 21・47 |
| 8 | 買い手の調査(DD)のための資料 | 社長(会社) | 基本合意のあと | 47・95 |
| 9 | 最終契約書(株式譲渡契約書・事業譲渡契約書) | 売り手と買い手 | DDのあと | 48 |
社長が出すのは1と8、受け取るのは2と6、相手と結ぶのは2・4・7・9です。3と5は仲介会社・FAが作ることが多い書類ですが、中身は社長の会社の情報なので、出す前に社長が確かめます。
この順番どおりに進まないこともあります。ガイドラインは、資金繰りなどでクロージングを急ぐときは、基本合意を結ばず、最低限の秘密保持契約だけで最終契約に進むこともあるとしています(47ページ)。入札などで、買い手の意向表明書に売り手が応諾書を出し、基本合意とほぼ同じ合意として扱うこともあります(20・95ページ)。仲介会社・FAに頼まず、相手と直接進めるときに使える秘密保持契約書のサンプルも、国が出しています(43ページ、参考資料7)。
ノンネームシート(会社名を伏せた短い資料)
社長
ノンネームシートには、何を書くのですか。会社が知られてしまわないか心配です。
案内役
ガイドラインは、会社が特定されないように、会社の概要を簡単にまとめた資料だとしています。書く項目までは決めていないので、中身の組み合わせで会社が分かってしまわないかを、社長が確かめることが大切です。
中小M&Aガイドラインは、ノンネーム・シート(ティーザーとも呼ばれます。国の資料では「・」が入ります)を、売り手が特定されないように企業概要を簡単にまとめた資料で、買い手の候補に関心があるかを打診するために使うものとしています(19ページ)。
相手探しは、ふつう次のように進みます(19〜20・44ページ)。
- 仲介会社・FAが、買い手になりうる候補の一覧(ロングリスト。数十社ほどになることが多い)を作る
- その候補にノンネームシートを送って、関心があるかを打診する
- 関心を示した候補から、数社ほどに絞った一覧(ショートリスト)を作る
- 絞った候補と秘密保持契約を結び、企業概要書を渡す
情報が広がるのをできるだけ防ぐため、先にショートリストまで絞ってから、その候補にだけノンネームシートを送ることもあります(20ページ)。社長は、打診してほしい先や、打診を避けたい先(取引先や同業者など)があれば、前もって仲介会社・FAに伝えておくことが望ましいとされています。打診の順番も、十分に話し合っておくよう書かれています(44・94ページ)。
会社名を伏せても、相手に分かってしまうことがあります。ガイドラインは次のように注意しています。
- インターネットのM&Aプラットフォーム(売り手と買い手を引き合わせるサイト)では、会社名を伏せた情報でも会社が特定されるリスクがあるので、どこまで出すかを慎重に考える必要がある(58ページ)
- 地方の金融機関では、お客さまどうしが顔見知りのことも多く、会社名を伏せても、売り手と買い手が互いに相手を特定できてしまう可能性が高い。出す情報の中身をよく吟味する(108ページ)
国の事業承継・引継ぎ支援センターのデータベースにも、事業者が具体的に特定されない範囲の、会社名を伏せた情報だけが載ります(62ページ)。日本政策金融公庫の事業承継マッチング支援では、公庫の担当者が申込書の情報をもとにノンネームシートを作り、どの候補に見せるかを売り手が選ぶ、と案内しています。
秘密保持契約と、会社名を明かすとき
社長
会社名を明かすのは、どの時点ですか。
案内役
関心を示した候補と秘密保持契約を結んでからです。ガイドラインは、明かす候補ごとに社長の同意を取ることを原則としています。
秘密保持契約(NDA・CAとも呼ばれます)は、秘密を守ることを約束する契約です。ガイドラインは、ノンネームシートを見て関心を持った買い手の候補が、詳しい情報を受け取るために売り手と結ぶ場合と、売り手や買い手が仲介会社・FAと結ぶ場合があるとしています。仲介会社・FAとの間では、仲介契約・FA契約の中の条項として入っていることが多いとされています(20ページ)。
候補に会社名を明かし、企業概要書などの詳しい資料を渡すことを「ネームクリア」と呼びます。ガイドラインは、ネームクリアは、関心を示した候補について社長の同意を取り、その候補と秘密保持契約を結んでから行う必要があるとしています。同意は、原則として明かす候補ごとに取ります(93ページ)。国のQ&Aも、同じ手順で行うよう求めています(Q&A 4ページ)。
早く相手を見つけたいときなどは、一定の基準のもとで、仲介会社・FAが明かす先を選ぶことも考えられる、とガイドラインは書いています。その場合も候補との秘密保持契約は欠かせず、仲介会社・FAは次の3つをしなければならないとしています(93〜94ページ)。
- 候補ごとに同意を取るのが通常であることと、任せると希望しない先に明かされるリスクがあることを説明し、社長が理解したうえで任せる意向かを確かめる
- 希望する業種・所在地や、除きたい会社(取引先・同業者など)といった、できるだけ具体的な基準を決める
- 社長から指示があれば、すぐにネームクリアをやめると約束する
国が出している秘密保持契約書のサンプル(売り手と買い手が直接結ぶ形)には、次のことが書かれています(参考資料7 9〜10ページ)。サンプルはあくまで例で、実際に作るときは弁護士などの専門家に相談することが望ましいとされています(同 1ページ)。
| 項目 | サンプルの中身 |
|---|---|
| 秘密にするもの | 相手から受け取った情報、この契約を結んだこと自体とその中身、交渉の経緯と中身 |
| 秘密にしなくてよい情報 | 受け取ったときにすでに世の中に知られていた情報など、5つの場合 |
| 見せてよい相手 | 自社の役員・社員、弁護士・公認会計士・税理士・司法書士・FAなど。同じ程度の秘密を守る義務を負う人に限る |
| 公的な機関 | 法令に基づいて、裁判所・役所など(事業承継・引継ぎ支援センターを含む)から求められたとき。相手には前もって(難しければ、あとで速やかに)知らせる |
| 経営者保証の相談 | 社長の個人保証の扱いを相談するために、保証の先の金融機関に見せてよい(成約する前の相談を含む) |
| 資料を返すこと | 相手から返すよう求められたら、写しも含めて速やかに返す |
| 期間 | 契約は2年で、申し出がなければ1年ずつ延びる。秘密を守る義務は、期間が終わってから3年続く |
仲介会社・FAとの契約には、仲介会社・FAだけでなく社長にも秘密を守る義務を課す条項が入るのが通常です。ガイドラインは、税理士・弁護士などの専門家や事業承継・引継ぎ支援センターに相談できるよう、これらの人に情報を伝えることが認められているかも確かめておくことが望ましいとしています(39〜40ページ)。仲介契約とは別に、仲介会社・FAと秘密保持契約を結ぶことも多く、そちらに相手と直接交渉しない約束が入っていることもあります(40ページ)。
企業概要書(会社の中身をまとめた資料)
社長
企業概要書は、自分で書くのですか。
案内役
仲介会社・FAが、社長から受け取った情報をもとに作ることが多いとされています。ただ、中身が正確かどうかは、社長でなければ確かめられません。
中小M&Aガイドラインは、企業概要書(IM・IPとも呼ばれます)を、秘密保持契約を結んだあとに買い手の候補に見せる、売り手についての具体的な情報(会社名や、事業・財務についての一般的な情報)が書かれた資料としています。仲介会社・FAが、売り手から受け取った情報をもとに作ることが多いとされています(20ページ)。
ガイドラインは、仲介会社・FAの業務の例として「企業概要書の作成・提供」を挙げ、書く項目の例を示しています(72ページ)。
| 書く項目の例 | やさしく言うと |
|---|---|
| 事業の内容 | どんな事業をしているか |
| 財務の状況 | 決算書などの数字 |
| 株主・役員 | 誰が株を持ち、誰が役員か |
| 組織 | 組織図、社員の構成(正社員か業務委託か、部署の構成など) |
| 商流 | 仕入れから販売までの取引の流れ |
| 不動産 | 会社が持つ・使う土地や建物 |
| 技術・特許・許認可 | 会社が持っている技術、特許、事業の許可 |
| 今後の展望 | これからの事業の見通し |
同じところで、候補に情報を渡すときは売り手の承諾を取り、秘密保持契約を結ぶ手続も支援する、と書かれています。企業概要書を作ってもらえるかどうかは、仲介会社・FAが契約の前に渡す書面の「提供する業務」で確かめられます。ガイドラインは、業務の範囲を手続の段階ごとに整理し、書面を渡して説明するよう求めています(71〜72・86ページ)。
企業概要書の中身が正確であることが、あとの手続の土台になります。ガイドラインは、企業概要書は買い手に売り手の具体的な情報を伝え、その後の手続を円滑に進めるためのものだとし、作るのを手伝う中小企業診断士に、社長と相談して正確に作るよう求めています(122ページ)。社長に対しても、支援機関への相談では、マイナスの情報や言いにくい情報ほど先に伝えておく姿勢が望まれる、と書いています(34ページ)。
書類どうしのつながりも、国のサンプルから読み取れます。基本合意書のサンプルでは、買い手の調査(DD)は、事前に渡した資料が正確で妥当かを確かめるために行うとしています(参考資料7 12ページ)。株式譲渡契約書のサンプルでは、売り手が買い手に渡した会社についての情報は、契約を結ぶ前のものも、書面か口頭かも問わず、重要な点ですべて真実で正確だと、売り手が表明保証(事実であると約束すること)する例が載っています(同 35〜36ページ)。
事業承継・引継ぎ支援センターでは、企業概要書の作成が必要なときは、センターが外部の専門家などを紹介します。その費用は売り手の負担になります(61ページ)。
意向表明書(買い手から届く書面)
社長
意向表明書が届いたら、もう話は決まりですか。
案内役
いいえ。買い手が希望の条件を示す書面で、法的な拘束力を持たないことが多いとされています。いつの時点の書面かで、中身の重さも違います。
中小M&Aガイドラインは、意向表明書を、買い手が譲り受けるときの希望条件などを示すために出す書面で、基本的に法的な拘束力を持たないことが多いとしています。呼び方は次のように分かれることがあります(20ページ)。
| 呼び方 | いつ | 中身 |
|---|---|---|
| 第一次意向表明書 | 企業概要書を見たあと | 企業概要書の情報などをふまえた、暫定的な希望条件。DDに進みたいという意向 |
| 第二次意向表明書(最終意向表明書) | DDのあと | DDの結果をふまえた、最終的な希望条件。譲り受けたいという意向をはっきり示す |
ガイドラインは、債務超過の会社の買い手を選ぶときなどに、選び方を透明で公正にするため入札を行い、そこで意向表明書が使われることがあるとしています。買い手の意向表明書に売り手が応諾書を出すと、基本合意とほぼ同じ合意を結んだものとして扱うこともあります(20・95ページ)。応諾書を出す前に、どこまでの合意になるのかを専門家に確かめてください。
日本政策金融公庫の事業承継マッチング支援の案内では、意向表明書に譲渡価格や独占交渉権の付与などを書くとし、基本合意を結ばず、意向表明書の提出だけで完了することもあるとしています。
ガイドラインは、仲介会社・FAの業務の例として、買い手が売り手に出す意向表明書を作る手伝いも挙げています(72ページ)。また、仲介会社は売り手と買い手の両方と契約して双方に助言し、FAは一方とだけ契約して一方に助言する、という違いを契約の前に説明するよう求めています(86ページ)。違いはM&Aの仲介とFAの違いにまとめています。
基本合意書(最終契約の前の合意)
社長
基本合意書に判を押したら、もう後戻りはできないのでしょうか。
案内役
基本的に拘束力はないとされますが、ほかの相手と交渉しない約束や、秘密を守る約束などには拘束力を認めるのが通常です。どの条項がそうなのかを、書面で確かめましょう。
中小M&Aガイドラインは、基本合意書(LOI・MOUとも呼ばれます)を、売り手が特定の買い手に絞って交渉すると決めたときに、その時点での双方の了解事項を確かめるための書面だとしています。基本的に法的な拘束力はないものの、買い手の独占的交渉権(ほかの買い手と交渉させない権利)や秘密を守る義務などには、拘束力を認めるのが通常です(21ページ)。
結ぶのは、交渉で条件がおおむね合ったときです。ガイドラインは、主な中身として、売り方(株式譲渡か事業譲渡か)、DDの前の時点での譲渡の予定額、社長やほかの役員・社員の処遇、最終契約までの日程と双方がすること・守ること、条件の最後の調整の方法などを挙げています。仲介会社・FAや専門家の助言を受けて調印することが大切だとしています(47ページ)。
国の基本合意書のサンプルは、株式譲渡を前提に、株を持つ株主(1名)と買い手が結ぶ形です(参考資料7 1ページ)。このサンプルでは、売り手の側で結ぶのは会社ではなく株主です。サンプルの主な条項は次のとおりです(参考資料7 12〜15ページ)。
| 条 | 項目 | サンプルの中身 |
|---|---|---|
| 1 | 目的 | 買い手が期限までに株式の全部を譲り受ける意向で、売り手がそれを了承する。改めて最終契約を結ぶ |
| 2 | 引き継ぐ財産と保証 | 引き継ぐのは株式の全部。会社の借入れを役員・社員が保証している契約は、保証が外れるよう買い手が最大限努力する |
| 3 | 譲渡価額 | 「●●円を目途」とし、正式な額は最終契約を結ぶときに双方で合意した額 |
| 4 | DD | 締結から1か月をめどに、事前に渡した資料が正確で妥当かを買い手が調べられる。売り手は協力する |
| 5 | 独占的交渉権 | 有効期間中は、ほかのどの相手ともM&Aの交渉をしない |
| 6 | 善管注意義務 | 最終契約までは、注意深く会社を運営する。重大な財産の処分、新たな借入れや保証、ふだんと違う設備投資・仕入れ・契約・社員の採用、増資・減資、日常の業務でないことなどを、買い手の同意なしにしない |
| 7 | 秘密保持 | 秘密保持契約と同じような中身。成約しなかったら、求めに応じて資料を返す。期間が終わってから3年続く |
| 8 | 法的拘束力 | 第1条〜第3条は、その時点の了解事項を確かめるもので、法的な拘束力を持たない |
| 9 | 有効期間 | ●●年●●月●●日まで(解除や最終契約の履行が終わった場合を除く) |
サンプルの第8条で拘束力がないとされているのは、第1条〜第3条です。独占的交渉権や秘密保持などの条項がどこまで社長をしばるかは、実際の書面の書き方で変わります。調印の前に、弁護士などに確かめてください。
社長が確かめる点は、次のようなところです。
- 譲渡価額は「目途」で、DDの結果などで変わりうる。日本政策金融公庫の案内も、基本合意の項目に「デューデリジェンス等の結果で価格調整ができる旨」を含めています
- 有効期間と独占的交渉権。期間中はほかの候補と交渉できなくなる
- 最終契約までの制限。サンプルでは、ふだんの業務を超える財産の処分・借入れ・設備投資・採用などに、買い手の同意が要る
- 社長の個人保証の扱いの書き方(経営者保証はM&Aで解除される?)
仲介会社・FAへの中間金(成約の前の決まった時点に払う手数料)は、基本合意を結んだときを例として挙げられています(39・63ページ)。払う時期と、成約しなかったときの扱いはM&Aの着手金・中間金・月額報酬とは?にまとめています。基本合意書の目途の額から手数料を引いた額は、譲渡額5,000万円で計算するのように、国に届け出られた手数料で試せます。
基本合意のあとの書類(調査の資料と最終契約)
社長
基本合意のあとは、どんな書類が出てくるのですか。
案内役
買い手の調査(DD)のための資料と、最終契約書です。最終契約の前には、仲介会社・FAからリスクの説明を受けることもあります。
デュー・ディリジェンス(DD)は、主に買い手が専門家に頼んで、売り手の会社の財務・法務・事業・税務などを調べる手順です(21・47ページ)。ガイドラインは、買い手は売り手に大量の資料を求めるのが一般的で、小さな会社は帳簿や規程が整っていないことが多いため、早い時期から書類やデータを整えるよう促すことを仲介会社・FAに求めています(95ページ)。社員にまだ知らせていないときは、気づかれないように進める工夫が要るとしています(47ページ)。売り手が準備する書類と、調べられることは、デューデリジェンス(DD)とはにまとめています。
最終契約は、DDで見つかった点や、基本合意で決めずに残した点を話し合い直して結ぶ契約です(48ページ)。中小企業庁は、株式譲渡契約書と事業譲渡契約書のサンプルも出しています(参考資料7)。ガイドラインは、最終契約はできるだけ、中小M&Aにくわしい弁護士の関与のもとで結ぶことが望ましいとしています。争いになりうるリスクが最終契約に含まれるときは、仲介会社・FAが、結ぶ前にその中身と、起きたときの結果をできるだけ具体的に説明することが望ましいとしています(98ページ)。説明に使える書面のサンプル(参考資料12)もあります。
最終契約(株式譲渡なら株式譲渡契約書)の条項は株式譲渡契約書の主な条項に、最終契約で売り手が約束する中身は表明保証とはに、株式で売るか事業で売るかの違いは株式譲渡と事業譲渡の違いにまとめています。社員や取引先に知らせるのは、原則としてできるだけクロージングのあと(早くても最終契約のあと)とされています(31ページ)。
書類ごとに、社長が確かめる点と秘密の守り方
社長
最後に、書類ごとに気をつける点をまとめてもらえますか。
案内役
ここまでの国の資料の記述を、1つの表にまとめます。実際の書類を受け取ったら、この表と見比べてください。
| 書類 | 社長が確かめる点 | 秘密の守り方 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 仲介契約書・契約の前の説明の書面 | 企業概要書の作成など、提供する業務の範囲。専門家やセンターに相談できるか | 契約の秘密保持の条項は、社長にも義務がかかるのが通常 | 39〜40・71〜72・86〜87ページ |
| ノンネームシート | 書かれた中身の組み合わせで会社が分からないか。打診してほしい先・避けたい先 | 会社名を伏せる。インターネットや地域のつながりでは、伏せても分かることがある | 19・44・58・108ページ |
| 秘密保持契約書 | 秘密にするものの範囲、見せてよい相手(専門家・保証の先の金融機関)、期間 | 結んでから、企業概要書を渡す | 20・93ページ、参考資料7 |
| 企業概要書 | 中身が正確か。言いにくい情報も先に伝えたか | 明かす候補ごとに同意してから渡す(ネームクリア) | 20・34・93・122ページ |
| 意向表明書 | 暫定の条件か最終の条件か。応諾書を出すと、基本合意に近い扱いになることがある | 交渉の経緯と中身も、秘密保持契約で秘密にするものに入る | 20・95ページ、参考資料7 |
| 基本合意書 | 拘束力のある条項、独占交渉の期間、最終契約までの制限、譲渡価額は目途であること | 秘密保持の条項(期間が終わってから3年など)を確かめる | 21・47ページ、参考資料7 |
書類の中身や、どの条項に拘束力があるかの判断は、個別の事情で変わります。このサイトは書類の作成や確認の代行、法律の助言はしません。弁護士・税理士などの専門家や、国の事業承継・引継ぎ支援センターに確かめてください。センターへの相談は無料で、センターから紹介された登録機関などに頼む場合は有料です(66ページ)。センターの使い方は事業承継・引継ぎ支援センターとはにまとめています。
よくある質問
社長
ノンネームシートと企業概要書は、何が違いますか?
案内役
ノンネームシートは会社名を伏せた短い資料で、候補に関心があるかを聞くために使います。企業概要書は会社名と事業・財務の具体的な情報が入った資料で、関心を示した候補と秘密保持契約を結び、社長が同意してから渡します(中小M&Aガイドライン 19〜20・93ページ)。
社長
意向表明書や基本合意書に判を押したら、もう取りやめられませんか?
案内役
ガイドラインは、意向表明書は基本的に法的な拘束力を持たないことが多く、基本合意書も基本的に拘束力はないとしています。ただし、基本合意書の独占的交渉権や秘密を守る義務などには拘束力を認めるのが通常です(20〜21ページ)。どの条項がどこまで社長をしばるかは書面ごとに違うので、調印の前に弁護士などに確かめてください。
社長
仲介会社に頼まず、相手と直接話しているときも、書類は要りますか?
案内役
ガイドラインは、当事者どうしで秘密保持契約を結ぶときは、国の秘密保持契約書のサンプルを参照するよう書いています(43ページ)。当事者どうしでほぼ基本合意ができた段階で、クロージングまでの手続だけを仲介会社・FAに頼む例も増えているとしています(37ページ)。進め方に不安があれば、士業などの専門家や事業承継・引継ぎ支援センターに相談することが望ましいとされています(43ページ)。
社長
日本政策金融公庫の「企業概要書」と同じものですか?
案内役
違います。日本政策金融公庫(国民生活事業)の「企業概要書」は、はじめて取引する人が取扱商品・サービスなど企業の内容を簡単に書く書式で、事業資金の申込みのときに出す書類の一つです。M&Aの企業概要書は、売る会社の具体的な情報を、秘密保持契約を結んだ買い手の候補に渡すための資料です。
社長
企業概要書の案が届いたら、まず中身が正確かを自分で確かめます。基本合意書は、どの条項に拘束力があるかを、判を押す前に弁護士に見てもらいます。
案内役
どちらも、国のガイドラインとサンプルに書かれている確かめ方です。会社名を明かすときは、原則として候補ごとに社長の同意を取ることになっています。そのたびに、相手を確かめてください。
このデータについて
- 書類の説明と流れは、中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(2024年8月)によります。ページは、PDFの各ページ下にある「n / 139」の番号です(2026年10月16日に確認)
- 契約書の中身は、中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)参考資料7 各種契約書等サンプル」(2025年12月15日時点版)によります。ページはPDFの「n / 47」の番号です。サンプルは例で、実際の契約書の中身は当事者の話し合いで決まります
- ネームクリアとテール条項は、中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A」も確かめました
- 日本政策金融公庫の「企業概要書」と事業承継マッチング支援の流れは、公庫のサイトの案内で、2026年10月16日に確かめました
- このサイトは、特定の仲介会社・士業・機関をすすめません。書類の作成や確認の代行、法律・税・価格についての個別の助言は行いません。個別のことは、弁護士・税理士などの専門家や、事業承継・引継ぎ支援センターに確かめてください
