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進め方

会社を売るには|売却の相談から成約までの流れ・期間・かかるお金

会社を売るときの流れを、国の中小M&Aガイドライン(第3版)と事業承継ガイドラインに沿って、最初の相談から引き継ぎまで順に並べました。段階ごとの期間の目安と、手数料など、かかるお金のしくみもまとめています。

書いた人

M&A仲介の通信簿 編集部

国の「M&A支援機関登録制度」の届出を毎月取り込み、仲介会社の手数料を同じ条件で計算して載せています。記事は中小企業庁のガイドラインなど公的な資料にもとづいて書き、仲介や交渉、価格や税の助言はしません。

手前から奥へ続く道に、書類の机・握手・契約書・鍵の受け渡しの場面が並び、手前で社長と案内役が道の先を見ているアイソメトリックのイラスト
社長

会社を売ることも考えはじめました。でも、何から始めればいいのか、どのくらいの時間とお金がかかるのか、見当がつきません。

案内役

継ぐ・売る・たたむのどれを選ぶかは、社長ご自身が決めることで、このサイトはどの道もすすめません。売る道の流れ・期間・お金を、国のガイドラインに書かれているとおりに並べます。

先に結論

  • 引き継ぎには、家族に継ぐ・社員に継ぐ・社外に引き継ぐ(M&A)の3つの道があり、会社をたたむ(廃業)道もあります。選ぶのは社長です
  • 国の中小M&Aガイドライン(第3版)が示す流れは「相談 → 意思決定 → 仲介者・FAの選定 → 価値の評価 → 相手探し → 交渉 → 基本合意 → 買い手の調査 → 最終契約 → クロージング → 引き継ぎ」です(32〜57ページ)
  • ガイドラインは、相手探しに「数か月~1年程度」、成約したあとの引き継ぎに「3か月~1年程度」かかることが多いと書いています。全体の期間の目安は書かれていません
  • 最初の相談は、直近3年分の税務申告書・決算書・勘定科目内訳明細書の写しで十分とされています(34ページ)。国の事業承継・引継ぎ支援センターへの相談は無料です
  • 仲介会社の手数料を国の登録データで計算すると、譲渡額3,000万円で中央値330万円(税込)、譲渡額の11.0%でした。会社が小さいほど、譲渡額に対する割合が大きくなります

売る前に並べておきたい3つの道

社長

後継ぎがいないなら、売るしかないのでしょうか。

案内役

国の事業承継ガイドラインは、引き継ぎの道を3つに分けています。売るのは、そのうちの1つです。

事業承継ガイドライン(第3版)の25〜27ページに書かれている、3つの道の特徴です。

道 主な特徴 気をつけること
家族に継ぐ(親族内承継) 関係者に心情的に受け入れられやすい。早く決めれば準備の期間を長くとれる 後継者の育成に期間がいる。経営者保証が障害になることもある
社員に継ぐ(従業員承継) 能力のある人を見極めて継がせられる。経営の方針を保ちやすい 親族の株主の了解。株式を買い取る資金
社外に引き継ぐ(M&A) 広く外に候補を探せる。社長は会社を売った利益を得られる 相手が見つかるまでの期間に幅があり、時間の余裕がいる

会社をたたむ道について、事業承継ガイドライン(50〜51ページ)は、引き継ぎをあきらめる場合は、余力のあるうちに計画的に事業を終える準備が望ましいとし、財務の把握、早めの債務の整理、廃業の資金の確保、取引先・金融機関・社員への説明を挙げています。

中小M&Aガイドライン(34〜35ページ)は、社外に売る前に、身近な親族(特に子や兄弟)の了解と、社内に後継者の候補がいないことを確かめておくよう書いています。国の事業承継・引継ぎ支援センターは、家族や社員への承継や、廃業の相談も受けています(60・62ページ)。

会社を売る流れの全体図

社長

売ると決めたら、どんな順番で進むのですか。

案内役

中小M&Aガイドラインの「中小M&Aフロー図」に、段階と主に手伝う相手が書かれています。

中小M&Aガイドラインの33ページのフロー図を表にしました。ページは、その段階を説明している箇所です。

段階 すること 主に手伝う相手(フロー図より) ページ
相談 身近な支援機関に相談する 商工団体・顧問の税理士・金融機関・士業・M&A専門業者・センター 34〜36
1 意思決定 売るかどうかを自分で決める 同上 36
2 仲介者・FAの選定 頼む先を選んで契約する(選ばずに自分で進める道もある) — 37〜43
3 会社の価値の評価 会社や事業の価値を評価する 公認会計士・税理士・金融機関・M&A専門業者・センター 44
4 相手探し 買い手の候補を探して打診する M&A専門業者・金融機関・M&Aプラットフォーム・センター 44〜46
5 交渉 社長どうしの面談などで条件を話し合う 弁護士(代理を頼む場合)・M&A専門業者・金融機関・センター 46〜47
6 基本合意 おおむね決まった条件を書面で確かめる 公認会計士・中小企業診断士・弁護士・センター 47
7 買い手の調査 買い手が会社の中身を調べる 同上 47〜48
8 最終契約 調査の結果をふまえて契約を結ぶ 弁護士(契約の法的な確認)・M&A専門業者・金融機関・センター 48〜56
9 クロージング 株式などを渡し、代金を受け取る 同上 56
10 引き継ぎ 社員・取引先への報告や、名義の変更などを進める 士業などの専門家・M&A専門業者・金融機関 56〜57

会社が特に小さい場合は、もっと簡単な形で進めることが現実的なケースも多いとされています(31〜32ページ)。事業承継ガイドライン(44〜46ページ)も、クロージングまで同じ工程です。

最初の相談と、用意する書類

社長

まだ売ると決めたわけではありません。それでも相談していいのでしょうか。

案内役

ガイドラインは、決めていないからこそ相談が必要だとしています。最初の書類も多くはありません。

中小M&Aガイドライン(34ページ)は、社長が「まず行うべきこと」を身近な支援機関への相談としています。相談先は、商工団体、税理士などの専門家、金融機関、M&A専門業者、事業承継・引継ぎ支援センター、日本政策金融公庫です。まず顧問の税理士に相談することも多いと思われる、とも書かれています。

センターへの相談は無料で、センターから紹介された登録機関などに依頼する場合は有料です(66ページ)。2026年版中小企業白書(第1-1-47図)では、センターの2024年度の第三者への引き継ぎの相談者は16,045者、成約は2,132件でした。使い方は事業承継・引継ぎ支援センターの使い方にまとめています。

決める前に、引退後の過ごし方、希望の条件の優先順位、株式や財産の整理を考えておき、最後は「自ら明確に意思決定することが必要」とされています(34〜36ページ)。準備の中身は会社を売る時期を考えるときの材料に、家族と社員に伝える順番は家族と社員に、会社を売ることをいつ・どう伝えるかにまとめています。

頼む先を決める(仲介会社・FA)

社長

相手探しは、仲介会社に頼まないとできないのですか。

案内役

頼まずに自分で進める道もあります。頼むときは、いくつかの会社を比べて決めることが大切だとされています。

中小M&Aガイドライン(36〜43ページ)は、2つの進め方を示しています。

  • 仲介者・FAを選んで頼む
  • 頼まずに、取引先や同業者に自分で声をかけたり、M&Aプラットフォーム(インターネットで売り手と買い手を引き合わせるサイト)を使ったりする

相手は自分で見つけ、そのあとの手続きだけを仲介者・FAに頼むなど、2つを組み合わせることもあります(37ページ)。

仲介とFAの違いは契約の相手です。仲介者は売り手と買い手の両方と契約し、両方から手数料を受け取るのが普通で、FAは一方とだけ契約します(39・42ページ。M&Aの仲介とFAの違い)。

ガイドライン(37ページ)は、業務の範囲、契約の期間、手数料の体系、実績、利用者の声などを確かめ、複数の中から比べて決めることが重要だと書いています。国のM&A支援機関登録制度のデータベースで手数料の決め方を確かめられるとも書いています。このサイトの仲介会社の一覧は、その届出を並べたものです。比べる点はM&A仲介会社の選び方に、制度のしくみはM&A支援機関登録制度とはにまとめています。

契約の前には、仲介者・FAが業務の範囲と手数料などを書面で説明することが求められています(69ページ)。センターなどほかの支援機関の意見(セカンド・オピニオン)を聞くことも有効だとされています(38ページ)。専任条項やテール条項は、M&A仲介の契約の前に確かめることにまとめています。

会社の値段と相手探し

社長

会社の値段は、仲介会社が決めるのですか。

案内役

専門家が評価しますが、その金額がそのまま売る値段になるわけではありません。最後は相手との交渉で決まります。

会社の価値の評価(中小M&Aガイドライン 44ページ)は、仲介者・FAや士業などの専門家が、面談や資料、現地の調査をもとに行います。簿価純資産法・時価純資産法・類似会社比較法などで出した価値をもとに交渉し、当事者どうしが合意した金額が譲渡額になります。M&Aでの評価は、相続税などのための株価の評価とは違う金額になるのが一般的です(事業承継ガイドライン 45ページ)。

国の登録制度のサイトには、業種と決算書の数字から株式の価値の参考値を出す「株式価値の簡易計算」があります。このサイトは、会社の値段の評価はしません。

相手探し(中小M&Aガイドライン 44〜46ページ)は、ふつう次のように進みます。

  1. 仲介者・FAが、会社名を伏せた短い資料(ノンネーム・シート)を、数十社ほどの候補に送って打診する
  2. 関心を示した数社ほどと秘密保持契約を結ぶ
  3. 会社の概要をまとめた資料(企業概要書)を渡して、話を進める

声をかけてほしくない相手(取引先や同業者など)は、先に伝えておくことが望ましいとされています。何社にも同時に頼むと、候補は広がる場合がある一方、秘密の面で不利になりやすいとも書かれています(31・44〜45ページ)。

交渉から最終契約まで

社長

相手が見つかったら、すぐに契約するのですか。

案内役

ふつうは、社長どうしの面談、基本合意、買い手の調査、最終契約の順に進みます。

  1. 交渉(46〜47ページ):社長どうしの面談(トップ面談)で、相手の経営の考え方や人柄を確かめます。ゆずれない条件を先にはっきりさせておくことが望ましいとされています
  2. 基本合意(47ページ):売り方(株式譲渡か事業譲渡か)、その時点での代金の予定額、役員・社員の処遇、最終契約までの日程などを書面にします。急ぐときは、結ばずに最終契約へ進むこともあります
  3. 買い手の調査(デュー・ディリジェンス)(47〜48ページ):主に買い手が専門家に頼んで、財務・法務・事業・税務などを調べます。調査が十分でないと、売り手が負う責任(表明保証など)が重くなることがあります
  4. 最終契約(48〜49ページ):調査で見つかった点などを話し合い直し、何を・いつ・いくらで渡すか、代金の払い方、社員の処遇、経営者保証の扱いなどを決めます。調印の前に弁護士などの意見を求めることも有効だとされています

クロージングと引き継ぎ

社長

クロージングというのは、何をする日ですか。

案内役

株式などを渡し、代金を受け取る日です。そのあとも引き継ぎが続きます。

クロージング(中小M&Aガイドライン 56ページ)はM&Aの最後の段階で、株式などを渡し、代金を受け取ります。買い手からの入金を確かめることが必要だとされています。

そのあとの主な作業です(56〜57ページ)。

  • 役員・社員・取引先への報告
  • リース・賃貸借・借入れの契約の名義の変更、経営者保証の解除、保証人の変更
  • 仕事の流れの引き継ぎ
  • 株式譲渡なら代表者の変更の登記、事業譲渡なら売掛金の振込先の変更など

こうした作業には3か月~1年程度かかることが多いとされています。もめごとが起きたときは、仲介者・FAの支援には限りがあり、早めに弁護士に相談することが望ましいとされています(57ページ)。

段階ごとの期間の目安

社長

全部で、どのくらいかかるものですか。

案内役

全体の目安は、ガイドラインには書かれていません。段階ごとの目安はあります。

段階 ガイドラインに書かれている目安 出典
準備を始める時期 経営者が「概ね60歳に達した頃」には準備に取りかかることが望ましい 事業承継ガイドライン 32ページ
仲介者・FAとの契約 ほかの会社に頼めなくなる条項があるときは、契約の期間は最長でも6か月~1年以内が目安 中小M&Aガイドライン 40ページ
相手探し 通常、数か月~1年程度 中小M&Aガイドライン 30ページ
最終契約からクロージングまで 短いことが多い。特別な事情なく2か月以上などの期間をおくと、契約の修正がいるおそれがある 中小M&Aガイドライン 55〜56ページ
成約したあとの引き継ぎ 3か月~1年程度かかることが多い 中小M&Aガイドライン 57ページ
(参考)後継者を決めて継ぐとき 後継者を決めてから引き継ぎが終わるまで(育成を含む)、3年以上かかる割合が半数を超える 事業承継ガイドライン 14ページ

事業承継ガイドライン(27ページ)は、相手が見つかるまでの期間は事案によって幅があり、時間の余裕をもって臨むことが大切だとしています。中小M&Aガイドラインの手数料の仮の例では、頼んでから4か月〜1年で成約しています(66〜68ページ)。時期の考え方は会社を売る時期を考えるときの材料にまとめています。

かかるお金のしくみ

社長

お金は、どんなものがかかるのですか。

案内役

主に、仲介会社やFAへの手数料と、専門家への費用です。手数料は会社によって大きく違います。

中小M&Aガイドライン(39・63ページ)は、手数料の主な形として次の4つを挙げています。法の一般的な決まりはなく、形は各社によります。仲介をしている2,978機関の売り手側の届出を、国の登録データで数えました(2026年10月12日取得)。

お金の種類 払う時期の例 届け出ている機関 金額の中央値
着手金 契約したとき 1,240機関(41.6%) 50万円
月額報酬 毎月 303機関(10.2%) 10万円
中間金 基本合意のときなど 889機関(29.9%) 50万円
成功報酬 クロージングのときなど 2,949機関(99.0%) 下の表

成功報酬だけの機関もあり、着手金・中間金・月額報酬・タイムチャージのどれもない機関は1,162機関(手数料の詳細を届け出た2,973機関の39.1%)でした。成約しなかったときの扱いはM&Aの着手金・中間金・月額報酬とは?にまとめています。

成功報酬はレーマン方式で計算し、下限の最低手数料を決めていることが多いとされています(64〜65ページ)。最低手数料を届け出た2,509機関の中央値は300万円でした。届出から、このサイトの計算機と同じ方法で計算した結果です。

譲渡額 手数料(税込)の中央値 譲渡額に対する割合 最低手数料で決まった機関
3,000万円 330万円 11.0% 54%
5,000万円 468万円 9.3% 40%
1億円 638万円 6.4% 20%

会社が小さいほど最低手数料で決まり、譲渡額に対する割合が大きくなります。全機関の手数料と手元に残る額は、譲渡額3,000万円で計算する・1億円で計算するから確かめられます。しくみはM&A仲介の手数料の相場をご覧ください。

手数料のほか、顧問の税理士などに支援を頼むと顧問料とは別の報酬(38ページ)、センターが紹介する専門家の費用(61ページ)がかかることがあります。

国の「事業承継・M&A補助金」には、専門家の費用の一部を補助する「専門家活用枠」があります。16次公募のパンフレットでは、仲介・FAへの委託費の補助は登録制度に登録した専門家に頼むことが条件で、委託契約は交付決定の日以降に結ぶ必要があります(受付は2026年11月6日17時まで)。条件は回ごとに違うので、公募要領で確かめてください。売ったあとの税は会社を売ったあとの手取りと税の流れにまとめています。

よくある質問

社長 売ると決めていなくても、相談していいですか?
案内役

中小M&Aガイドライン(34ページ)は、「意思決定がまだ済んでいないからこそ相談することが必要」と書いています。国の事業承継・引継ぎ支援センターは、決まっていない段階の相談も無料で受けています。窓口は相談するのページで案内しています。

社長 全部で、どのくらいの期間がかかりますか?
案内役

全体で何か月という目安は、国のガイドラインには書かれていません。相手探しに数か月~1年程度、成約したあとの引き継ぎに3か月~1年程度かかることが多いとされています。

社長 仲介会社に頼まずに、会社を売ることはできますか?
案内役

中小M&Aガイドライン(43ページ)は、取引先や同業者に自分で声をかけたり、M&Aプラットフォームを使ったりする進め方も示しています。不安があれば、士業などの専門家やセンターへの相談が望ましいとされています。

社長 会社がいくらで売れるか、どこで分かりますか?
案内役

評価は仲介者・FAや公認会計士などの専門家が行います。国の登録制度のサイトの「株式価値の簡易計算」でも、決算書の数字から参考値を出せます。最後は相手と合意した金額が譲渡額です。参考値が出たら、その金額から手数料を引いた額を計算機で確かめられます(例は5,000万円)。

社長

まずは決算書などを3年分そろえて、無料の窓口で話を聞いてみます。売るかどうかは、ほかの道とも比べてから考えます。

案内役

それが、ガイドラインが最初に挙げていることです。頼む先を比べるときは、計算機と一覧で手数料の届出を見てから、契約の前に書面で確かめてください。

このデータについて

  • 流れと期間は、中小M&Aガイドライン(第3版・令和6年8月)と事業承継ガイドライン(第3版・令和4年3月改訂)の記述です。ページ番号はPDFに印字された番号です(2026年10月13日に確認)
  • 手数料の数字は、M&A支援機関登録制度HP 登録支援機関データベースを加工して作成しました(取得日 2026年10月12日)。データは各機関の届出です。金額の中央値は金額を届け出た機関の値で、1億円以上の着手金・中間金の届出3件は外しました
  • 譲渡額ごとの手数料は計算機と同じ方法の試算で、負債を譲渡額の半分、有利子負債を2割、現預金を1割とした仮の会社です。消費税10%と、成功報酬とは別の着手金・中間金を含みます。定額などの方式や入力の誤りの可能性がある届出は除きました(3,000万円で2,445機関)
  • 国の集計結果は「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」の報酬率の分布(2024年度)、センターの数字は2026年版中小企業白書の第1-1-47図、補助金は専門家活用枠 16次公募のパンフレットによります(2026年10月13日に確認)
  • 当サイトは仲介や交渉、価格や税についての助言、売るかどうか・いつ売るかの助言は行いません

出典