本文へ移動

契約

M&A仲介のトラブルと国の注意|手数料・契約・情報の扱いで起きたこと

「M&Aの詐欺では」と不安なときに読む記事です。仲介会社・FAとの間のトラブルについて、国の窓口に寄せられた件数と事例、中小M&Aガイドライン(第3版)が求める説明、契約の前に書面で確かめること、困ったときの公的な窓口を国の資料でまとめました。

書いた人

M&A仲介の通信簿 編集部

国の「M&A支援機関登録制度」の届出を毎月取り込み、仲介会社の手数料を同じ条件で計算して載せています。記事は中小企業庁のガイドラインなど公的な資料にもとづいて書き、仲介や交渉、価格や税の助言はしません。

契約書・冊子・電話機が並ぶ机と、橋でつながる公的な窓口の建物を前に、社長と案内役が書類を確かめているアイソメトリックのイラスト
社長

仲介会社に、会社を売る相談をしようか考えています。ただ、M&Aの詐欺やトラブルの話を聞くと、頼んでいいものか不安になります。

案内役

国は、仲介会社やFAとの間で起きたトラブルの件数と例を、資料で公表しています。仲介会社が守る決まりもあります。国の資料に書かれていることを、順に見ていきましょう。

先に結論

  • 国の情報提供受付窓口に寄せられた情報は、2023年度32件、2024年度126件、2025年度は2026年2月までに80件でした(中小企業庁の検討会資料)。2024年度は91件が営業についてで、国は、より深刻なトラブルにつながりやすい営業以外の事案は減っていない、としています
  • 国の資料の例には、最低手数料の説明が足りなかった、説明をしないまま専任の条項がある契約を結んだ、専任でないのにテール条項で請求された、中間金が返されない、などがあります
  • 中小M&Aガイドライン(第3版)は、契約の前に手数料や条項を書面で説明し、考える時間を与えることを、仲介会社・FAに求めています。説明の書面を受け取り、契約書と一緒に手元に残すことが、あとで確かめる土台になります
  • 困ったときは、事業承継・引継ぎ支援センター(相談は無料)や弁護士に相談できます。国の情報提供受付窓口は不適切な事例を知らせる先で、もめごとの解決や助言はしません
  • 手数料が最低手数料で決まるかは、計算機で確かめられます:譲渡額3,000万円で手数料を計算する

国の窓口に寄せられた情報の数と例

社長

仲介会社とのトラブルは、国も把握しているのですか。

案内役

国の窓口に寄せられた情報の数と例が、中小企業庁の検討会の資料に載っています。登録している機関の数と並べて見てください。

M&A支援機関登録制度の事務局は、2021年11月から、登録した仲介会社・FAの不適切な事例を受け付ける窓口を置いています。中小企業庁の「中小M&A市場の改革に向けた検討会」の資料(2026年3月17日 第4回 資料2の21ページ)に、窓口に寄せられた情報の数が載っています。

年度 合計 営業に関する事案 営業以外に関する事案
2021年度(11月に窓口を設置) 7 内訳なし 内訳なし
2022年度 18 内訳なし 内訳なし
2023年度 32 13 19
2024年度 126 91 35
2025年度(2026年2月現在) 80 48 32

資料の注によると、ガイドラインの違反にあたらない情報は除き、登録していない機関の情報は数に入れ、複数の機関に触れた情報は機関の数だけ重ねて数えています。登録している機関は、2026年3月現在で約3,400者です(同じ資料の20ページ)。

資料は、一部の事業者で重要事項の説明をするようになるなどの変化が見られる一方、不適切な支援の情報は引き続き寄せられ、「より深刻なトラブルに繋がりやすい営業以外に関する事案については減少していない状況にある」としています。同じページに載っている例を、やさしく言いかえて並べます。

分け方 窓口に寄せられた情報の例
営業 やめてほしいと伝えても社内で共有されず、別の担当者からまた電話が来た
営業 個人の名前で会社名を出さず、社長の自宅に「重要書類」と書いた郵便物などを何度も送った
営業以外 ガイドラインが求める形の重要事項の説明をしないまま、専任の条項と途中解約の違約金の条項がある契約を結び、トラブルになった
営業以外 重要事項の説明と契約を対面でせず電話で行い、十分な説明を受けられなかった
営業以外 専任の条項がないのに、依頼者に選ばれなかった支援機関がテール条項にもとづいて請求した
営業以外 企業概要書から試算した譲渡額をもとに中間金を受け取り、あとで算出した企業価値が試算を下回ったのに、中間金を返さない

中小企業庁の窓口のチラシ(2024年10月30日)も、成功報酬は売却代金の5%と聞いていたのに最低報酬金額が適用された、譲渡金額の評価の手法や前提の説明がなかった、仲介者が自らデュー・ディリジェンス(買い手が行う調査)をして調査が不十分だった、などの例を挙げています。

手数料:聞いていた額と違った

社長

手数料は、率を聞いておけば大丈夫でしょうか。

案内役

率だけでは足りないことがあります。チラシの例のように、最低手数料で額が決まることがあるからです。

最低手数料は、譲渡額が小さくても、それより下にはならない成功報酬の額です。例えば、率が5%で最低手数料が300万円なら、譲渡額3,000万円の成功報酬は、150万円ではなく300万円になります。

国のデータベース(2026年10月12日取得)で、仲介の業務がある2,978機関のうち、売り手側の最低手数料を届け出たのは2,509機関でした。入力の誤りとみられる10億円以上の3件を除いた2,506機関の中央値は300万円で、150万円を超える機関は1,811機関(72.3%)です。譲渡額が小さいほど最低手数料で決まりやすいしくみは、小さな会社のM&Aにまとめています。

ガイドラインは、手数料について、仲介会社・FAに次のことを求めています。

  • 書面での説明: 報酬率、報酬の基準になる額(譲渡額・純資産・移動総資産など)、最低手数料、払う時期(着手金・月額報酬・中間金・成功報酬)、すでに払った手数料を差し引くか、ほかにかかる費用と、その手数料でする業務の中身を、契約の前に書面で説明する(87〜88ページ)
  • 交渉への対応: 説明に納得できない売り手から、業務や手数料の交渉を申し入れられたら、誠実に対応を考えなければならない(91ページ)
  • 買い手の手数料: 仲介の場合、買い手が払う手数料も売り手の受け取る額に影響するため、買い手の手数料の決まりも書面で説明し、あとで増えるときは開示する(70〜71・91〜92ページ)

ガイドラインは売り手に向けても、率だけでなく、成立する譲渡額で最終的に払う額を確かめることが大事だとしています(69ページ)。

中間金にも、確かめておく点があります。2026年7月21日の検討会資料(第5回 資料2の20ページ)には、支援機関への聞き取りの答えとして、中間金は調査の前に簡単に計算した譲渡額をもとに出し、実際の譲渡額が下回っても差分は返さない、という回答が載っています(資料は、内容の真偽や当否を結論づけるものではないとしています)。中間金を払う時期と、返すかどうかは、契約書で確かめられます。くわしくはM&Aの着手金・中間金・月額報酬とは?をご覧ください。

国の登録データで中間金を「有」と届け出たのは、仲介の業務がある2,978機関のうち889機関でした。届出の手数料と手元に残る額は、譲渡額1,000万円で手数料を計算すると、各機関の届出で並べて見られます。手数料のほかにかかるお金はM&Aにかかる費用の全体にまとめています。

契約:説明のしかたと、専任・テール・解約

社長が説明の書面と契約書の案を落ち着いて読み比べ、向かいの案内役が書面の一か所を示している場面
社長

契約の条項で、あとから困ることもあるのですか。

案内役

窓口の例には、説明が足りないまま結んだ契約や、テール条項での請求があります。ガイドラインは、説明のしかたと、条項の目安を決めています。

ガイドラインは、契約の前の説明について、次のことを求めています(86ページ)。

  • 大事な事項を書いた書面を渡して(メールで送ることを含む)説明する
  • 説明は、契約を結ぶ権限のある人(会社なら代表者など)に行う
  • 説明のあと、契約を決めるための十分な検討の時間を与える

書面で説明する17の事項には、専任の条項、テール条項、契約の期間、契約の解除と途中の解約、責任(免責)が入っています(87〜88ページ)。

条項 ガイドラインの目安 ページ
専任の条項 範囲はできるだけ狭く。契約の期間は最長でも6か月〜1年以内。いつでも途中で解約できる条項も設けることが望ましい 103〜104
テール条項 期間は最長でも2年〜3年以内。対象は、会社名を明かして紹介された相手に限る 105
専任でない契約のテール 複数の会社から同じ相手を紹介され、売り手が別の会社を選んだとき、選ばれなかった会社はテール条項を根拠に手数料を求めない 105

窓口の例にある途中解約の違約金について、ガイドラインに目安の金額や期間は書かれていません。違約金の条項があるときは、額と、どんなときにかかるかを、署名の前に書面で確かめておけます。責任(免責)の条項は、説明を受けたからといって、その条項に法的な効力が認められる関係にはない、とガイドラインは書いています(87〜88ページ)。

契約書のどこを見るかの確認表は、M&A仲介の契約の前に確かめることにまとめています。

情報の扱いと、仲介の利益相反

社長

会社の情報が広がったり、仲介会社が買い手の味方をしたりすることはありませんか。

案内役

ガイドラインは、情報の扱いと、仲介という立場から来るおそれの両方に、決まりを置いています。

情報の扱いについて、ガイドラインに書かれていることです。

  • 仲介会社・FAは、相談に来た会社の情報の扱いにも、善良な管理者としての注意の義務を負う(84ページ)
  • 会社の名前を相手の候補に明かす(ネームクリア)のは、原則として候補ごとに売り手の同意を取り、候補と秘密保持契約を結んでから(93ページ)
  • 電話をかける業務などを外部に頼んでも、仲介会社・FAは責任を免れない。依頼者の秘密を委託先に渡すなら、委託先にも同じ秘密保持の義務を負わせ、依頼者に説明して了承を得る(82〜83ページ)

仲介は、売り手と買い手の両方から依頼を受けます。ガイドラインは、そのために一方の利益を優先するおそれ(利益相反のおそれ)があると指摘されているとし、利益相反がただちに違法になるわけではないとも書いています(98ページ)。そのうえで仲介者に、両方から手数料を受け取るならその旨を伝えること、会社の値段の評価や買い手の調査の結論を決めないこと、両者で利益がぶつかる事項を契約の前に説明することを、最低限求めています(99ページ)。

買い手から追加の手数料を受け取って便宜を図る、くり返し依頼する相手を優遇する、希望額と成立額の差の一定割合を別に求める、頼まれたことを伝えない・偽って伝える、一方にだけ有利・不利な情報を隠す、といった行為はしてはならず、しないことを仲介契約書に仲介者の義務として書かなければならない、ともしています(99〜100ページ)。

チラシの例にある評価と調査について、ガイドラインは、仲介者は確定的な評価をしないものとし、簡単に計算した額を示すときは参考の額であることなどをはっきり示すよう求めています(93ページ)。仲介とFAの違いはM&Aの仲介とFAの違いにまとめています。

広告・営業のしかた

社長

仲介会社からの手紙や電話が多くて、少し困っています。

案内役

窓口に寄せられた情報でいちばん多いのは、営業についてです。ガイドラインは、やめてほしいと伝えたら、ただちに止めることを求めています。

ガイドラインの広告・営業の決まりです(84〜85ページ)。

  • M&Aをするつもりがない、契約しない、営業を受けたくない、という意思を示されたら、ただちに止める。その意思は組織として記録し、共有する
  • 会社名、勧誘する人の名前、契約の勧誘が目的であることを告げない広告・営業はしない
  • 考える時間を与えず、すぐの判断を迫る広告・営業はしない
  • 買い手がいると偽る、過大な評価額を示すなど、うそや誤解を招く広告・営業はしない

中小企業庁は2024年5月に、契約しない意思を示したのに続く営業などが「散見されております」と注意を呼びかけました。2026年9月1日には、過去に営業で注意を受けた登録機関1社について、やめてほしいという意思が反映されずに営業が行われたことを確かめ、改めて注意を出したと公表しています。断り方の文例は、M&A仲介会社からDM・営業電話が来たらにまとめています。

国の対応:注意・指示と登録の取消し

社長

窓口に知らせると、国はどうするのですか。

案内役

内容に応じて、支援機関への聞き取り、注意や対策の指示、場合によっては登録の取消しをすると、国の資料に書かれています。

国の資料に書かれている対応です。

  • 窓口の情報は、その支援機関への聞き取りなどに使い、内容に応じて、注意や対策の実施の指示、場合によっては登録の取消しをしている(2026年3月17日の検討会資料21ページ、2026年9月1日の公表資料)
  • 中小企業庁の要領(2023年5月15日)は、窓口に不適切な対応の相談が寄せられるなど、顧客の利益を害する事実やそのおそれがあると認められるときに、登録を取り消せるとしている。名前と取消しの内容も公表できる(第3条・第6条)
  • 2026年7月21日の検討会資料が参考に載せた「稼ぐ力」強化戦略(2026年6月)は、窓口に不適切な支援の情報が続けて寄せられていることなどから、登録制度の見直しと法制化を目指すとしている(10ページ)

国に登録した3,362機関は、すべてガイドライン第3版を守ると宣言しています(2026年10月12日取得)。ただし公募要領は、登録は支援の品質を保証するものではないとしています(1ページ)。中小企業庁のチラシ「M&A支援機関の選定・契約時に確認すべき事項」も、登録機関でも支援の質は異なるので、具体的な説明をふまえて決めるよう呼びかけています。

困ったときの公的な窓口と、持っていくもの

困ったときの3つの窓口(支援センター・弁護士・国の窓口)と、説明の書面と契約書を手元に残しておくことを示した図
社長

もし契約のことで困ったら、どこに相談すればいいですか。

案内役

ガイドラインは、意見や相談をする窓口と、不適切な事例を知らせる窓口を、分けて載せています。

窓口 役割 使う場面
事業承継・引継ぎ支援センター(各都道府県) 中小M&A全般の公的な相談窓口。相談は無料 どこに相談するか迷うとき。手数料や業務の中身に別の意見がほしいとき
ひまわりほっとダイヤル(日本弁護士連合会と全国52の弁護士会) 電話で弁護士との面談を予約できる 契約の条項や、もめごとについて、法的な助言がほしいとき
情報提供受付窓口(M&A支援機関登録制度) 登録機関の不適切な事例を受け付ける。もめごとの解決や助言はしない 説明がない、営業が止まらないなど、ガイドラインに沿わない対応を知らせたいとき

表は、ガイドラインの66・76ページによります。ガイドラインは、譲渡額や最終契約などの大事なことの別の意見は、同業の仲介会社より、士業やセンターに求めることが望ましいとしています(43ページ)。会社を売ったあとの当事者どうしのもめごとは、仲介会社・FAの支援に限界があり、弁護士に支援を求めることを考える必要がある、とも書いています(50・57ページ)。センターの使い方は事業承継・引継ぎ支援センターとはにまとめています。

登録機関は、秘密保持の条項の中身にかかわらず、窓口への情報提供やセンターなどへの相談を制約しないことが、登録の条件です(公募要領 7ページ)。窓口に相談したことだけを理由に、秘密保持の違反として不利益に扱わないことも誓約しています(同 1ページ)。

窓口のページ(2026年10月13日に確認)によると、電話での受付は終わっていて、フォームで受け付けています。区分は「営業」と「営業以外(重要事項説明がない等)」です。可能な範囲で出してほしいとされているものは、次のとおりです。

  • 支援機関の名前と、その機関との関係(契約していないか、秘密保持契約・仲介契約・FA契約など)
  • いつ、何があったか。営業なら、日時・担当者の名前・方法と、やめてほしいと伝えた日時と方法
  • 証跡(契約書、説明の書面、メール、手紙やDMの画像、着信の履歴など)。書類は原本ではなく写しを出す。原則として返却されない
  • 支援機関に知らせてよいか(顕名・匿名・通知不可から選ぶ)

最低手数料や中間金が手取りにどう響くかは、譲渡額5,000万円で手数料を計算すると、届出の決まりで試算できます。

よくある質問

社長 仲介会社に頼むと、詐欺にあうことがありますか?
案内役

この記事で読んだ国の資料は、「詐欺」ではなく「不適切な支援」や「トラブル」という言葉で書いています。窓口に寄せられた情報は2024年度に126件で、登録している機関は約3,400者です(2026年3月の検討会資料)。契約の前に書面で説明を受け、疑問があればセンターや専門家に別の意見を聞けます。

社長 契約したあとで、説明と違うと気づきました。
案内役

まず、説明の書面と契約書に、どう書かれているかを確かめてください。手数料や業務の中身に疑問があれば、センターや士業などに別の意見を聞けます。契約の中身やもめごとは、弁護士に相談してください。

社長 窓口に知らせたら、仲介会社に私の名前が伝わりますか?
案内役

窓口のページによると、情報を寄せた人の同意なく外部に知らせることはなく、支援機関に知らせるかどうかを「顕名」「匿名」「通知不可」から選べます。窓口にも名前を伏せた場合は、本人の確認がとれないため、支援機関への通知はできません。

社長 買い手とのトラブルは、どうすればいいですか?
案内役

会社を売ったあとに買い手が会社のお金を移した、といった事例は、不適切な買い手から会社を守るにはにまとめています。会社を売ったあとの当事者どうしのもめごとは、弁護士への相談を考えてください(ガイドライン50・57ページ)。

社長

率だけ聞いて、安心していました。説明の書面をもらって、最低手数料と中間金、専任とテールの書き方を確かめてから決めます。

案内役

書面は、あとで確かめる手がかりにもなります。迷ったときは、センターで別の意見を聞いてみてください。

このデータについて

  • 窓口に寄せられた情報の数と例は、中小企業庁の第4回検討会 資料2(2026年3月17日)20・21ページの図と文を、2026年10月13日に確かめたものです。2025年度は2026年2月現在の数です。中間金についての回答は、第5回検討会 資料2(2026年7月21日)20ページによります
  • 最低手数料と中間金の数は、M&A支援機関登録制度HP 登録支援機関データベースを加工して作成しました(取得日 2026年10月12日)。データは各機関の届出(自己申告)です。最低手数料の中央値などは、届出のある2,509機関から、入力の誤りとみられる10億円以上の3件を除いた2,506機関で数えました
  • ガイドラインのページ番号は、中小M&Aガイドライン(第3版)のPDFのページ(印字の番号と同じ)です
  • この記事は、国の資料にある件数・種類・一般的な注意だけで書き、個別の会社や事案は扱っていません。当サイトは、契約の中身の判断や、仲介・交渉、法律・価格・税についての助言は行いません。契約の中身は弁護士に確かめてください

出典