社長
60代の半ばになり、会社を誰に引き継ぐかを考え始めました。国の「事業承継ガイドライン」に目を通すよう勧められたのですが、140ページを超える資料で、どこに何が書いてあるのか分かりません。
案内役
中小企業庁が、会社を引き継ぐ準備の進め方と気をつける点をまとめた手引きです。家族に継ぐ道、社員に継ぐ道、社外に引き継ぐ道の3つと、たたむ場合の準備までを扱っています。この記事では、何が書いてあるかを社長が読む順に並べ、ページ番号を添えます。どの道を選ぶかは社長ご自身が決めることで、このサイトはどれもすすめません。
先に結論
- 事業承継ガイドラインは、中小企業庁が会社を引き継ぐ準備の進め方をまとめた手引きです。今の版は第3版(2022年3月改訂。2023年12月と2024年4月に一部を更新)で、PDFで144ページあります
- 経営者には準備に取りかかるための「道しるべ」に、支援機関には支援の「スタンダード」にしてほしいと書いています(はじめに・133ページ)
- 第3版の中心は、早めの取り組み(事業承継診断)、準備の5つのステップ、地域の支援体制の3つです。経営者が概ね60歳になったころに準備に取りかかることが望ましいとしています(14・32ページ)
- 承継の形を、親族内承継・従業員承継・社外への引継ぎ(M&A)の3つに分け、第3章で形ごとの課題と対応策を書いています。廃業を考える場合(50〜53ページ)と、個人事業主(第5章)の部分もあります
- 巻末には、自分で答えられる9問の自己診断チェックシートと、10年分・5年分の事業承継計画の様式と記入例が載っています(134〜141ページ)
- 社外に引き継ぐ手続きのくわしいことは、中小M&Aガイドライン(第3版・2024年8月)を見るよう書いています。国に届け出られた手数料は譲渡額3,000万円で計算するのように確かめられます
- 特例承継計画の提出期限(ガイドラインの記載は2026年3月31日まで)が2027年9月30日まで延びるなど、2022年3月より後に変わったこともあります。期限や制度の名前は、最新の資料で確かめてください
事業承継ガイドラインとは
社長
そもそも、誰が、何のために作った資料なのですか。
案内役
中小企業庁が作った資料です。経営者に事業承継の課題を知ってもらうことと、支援機関が支援するときの基準にしてもらうことの、2つを目的にしています。
事業承継ガイドラインは、中小企業庁が公表している資料です。表紙には「事業承継ガイドライン(第3版) 令和4年3月改訂 中小企業庁」とあり、中小企業庁の「事業承継」のページで、PDF(6,506KB)として公開されています(2026年10月16日に確認)。
ガイドラインの「はじめに」と「おわりに」(133ページ)には、次のことが書かれています。
- 誰に向けて: 中小企業・小規模事業者の経営者に、事業承継の課題を知ってもらうことが目的です。あわせて、支援機関・金融機関・自治体・士業などの専門家に、日々の仕事の中で事業承継支援の「スタンダード」として使ってもらうことを想定し、かなり実務的でくわしい内容を入れているとしています(特に第3章・第4章)
- 経営者にとっての役目: 課題に気づき、会社ごとの事情に合わせて準備に取りかかるための「道しるべ」になることを期待するとしています
- 読み方: すべての中小企業・小規模事業者を対象にしているが、会社の実情によって必要な対応や気をつける点は違うので、必要な所を読んでほしいとしています
改訂の背景として、「はじめに」は、いわゆる団塊の世代が全員75歳以上になる2025年を目前に、事業承継は「待ったなし」の状況だとしています。これまで中心だった親族内承継だけでなく、社員への承継や社外への引継ぎ(M&A)も増えてきたとも書いています。ガイドライン(5ページ)は、経営者の平均年齢が2020年に初めて60歳を超えたというデータも載せています。
| 時期 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 2016年 | 前の版に改訂 | ガイドライン 5ページ(「前回改訂された2016年」) |
| 2022年3月16日 | 第3版を公表。基本的な構成は変えずに改訂 | 中小企業庁「事業承継」のページ、ガイドライン「はじめに」 |
| 2023年12月27日 | 第6章の「主な士業等専門家」に、行政書士を加える | 中小企業庁「事業承継」のページ |
| 2024年4月1日 | 第3章の「財産の承継-税負担への対応」と、巻末の「事業承継診断票(相対用)」を更新 | 同上 |
第3版の中心になっている3つのこと
社長
第3版では、何に重きが置かれているのですか。
案内役
「はじめに」で、早めの取り組み、5つのステップ、地域の支援体制の3つを挙げています。順に見ていきます。
「はじめに」は、第3版の改訂の中心として次の3つを挙げています。
- 事業承継に向けた早めの取り組みの大切さ(事業承継診断の実施)
- 事業承継に向けて踏む5つのステップ
- 地域で事業承継を支える体制を強めること
1つ目の早めの取り組みについて、ガイドライン(14ページ)は、後継者を決めてから引き継ぎが終わるまでに3年以上かかる割合が半数を超え、10年以上かかる割合も少なくないこと、引退の平均が70歳前後であることから、概ね60歳ごろには準備に取りかかることが望ましいとしています。すでに60歳を超えていれば身近な支援機関に速やかに相談し、70歳を超えていればすぐにでも準備に取りかかるよう書いています。準備を先に延ばすと、時間に余裕があれば選べた道が、少しずつ失われていくとも書いています。
2つ目の5つのステップは、第2章(31〜46ページ)に書かれています。ステップ1〜3は3つの承継の形に共通で、4つ目から道が分かれます。
| ステップ | すること | ページ |
|---|---|---|
| 1 | 準備の必要性に気づく | 32 |
| 2 | 会社の経営状況と、承継の課題をはっきりさせる(見える化) | 32〜35 |
| 3 | 後継者が継ぎたくなる会社に経営を改善する(磨き上げ) | 36〜42 |
| 4-1 | 家族・社員に継ぐ場合は、事業承継計画を作る | 42〜44 |
| 4-2 | 社外に引き継ぐ場合は、M&Aの工程に進む | 44〜46 |
| 5 | 計画やM&Aの手続きに沿って、資産と経営権を移す | 46 |
各ステップの中身と、事業承継計画の作り方は、社長交代の進め方にくわしくまとめています。
3つ目の地域の支援体制について、ガイドライン(32・120ページ)は、すべての都道府県に商工会・商工会議所や金融機関などでつくる「事業承継ネットワーク」を置き、準備のきっかけとなる「事業承継診断」を支援機関の側から働きかけて行っていると書いています。診断のあとは、事業承継・引継ぎ支援センターが、事業承継計画づくりを支援するとしています。診断と支援機関の役目は、このあとの節で取り上げます。
全体の構成と、社長が読む順
社長
144ページもあると、全部はとても読めません。どこから読めばいいでしょうか。
案内役
6つの章と、巻末の様式に分かれています。まず全体の地図を見て、社長ご自身の状況に関わる所から読むのが近道です。
目次をもとにした、全体の構成です。ページはガイドラインに印字された番号です。
| 章 | ページ | 中身 |
|---|---|---|
| 第1章 事業承継の重要性 | 4〜30 | 経営者の高齢化などのデータ、早めの取り組みの大切さ、3つの承継の形、引き継ぐもの(人・資産・知的資産) |
| 第2章 事業承継に向けた準備の進め方 | 31〜53 | 5つのステップ、引き継いだあとの取り組み、廃業を考える場合 |
| 第3章 事業承継の類型ごとの課題と対応策 | 54〜103 | 親族内承継・従業員承継・社外への引継ぎごとの課題と対応策 |
| 第4章 事業承継の円滑化に資する手法 | 104〜112 | 種類株式・信託・生命保険・持株会社の使い方 |
| 第5章 個人事業主の事業承継 | 113〜117 | 個人事業主が引き継ぐときの課題 |
| 第6章 中小企業の事業承継をサポートする仕組み | 118〜132 | 支援の体制、事業承継診断、支援機関の役目 |
| おわりに・巻末 | 133〜141 | 事業承継診断票(相対用・自己診断用)、10カ年版・5カ年版の事業承継計画の様式と記入例 |
ガイドラインは、必要な所を読むよう書いていて、読む順番は示していません。次は、このサイトが考えた読む順の一例です。
- 巻末の自己診断チェックシート(137ページ): 9つの問いに「はい・いいえ」で答え、今の準備の進み具合をつかむ
- 第1章の2「事業承継とはどのようなものか」(25〜30ページ): 3つの承継の形と、後継者に渡すもの(人・資産・知的資産)を知る
- 第2章(31〜53ページ): 5つのステップの全体を見る。廃業を考えている場合は50〜53ページも
- 第3章のうち、考えている形の所: 次の節の表で、読むページを選ぶ
- 第6章(118〜132ページ): 誰に相談できるかを知る
第3章と第4章は、支援機関が実務で使えるよう、くわしく書かれた部分です(はじめに)。税や株の細かい所は、ページ番号を控えて、税理士などの専門家と一緒に読む使い方もできます。後継者に渡すもの(人・資産・知的資産)の中身は社長交代の進め方にまとめています。
3つの承継の形と、第3章で読むところ
社長
息子に継がせるか、番頭格の社員か、外に任せるか、まだ決めていません。ガイドラインでは、それぞれどう書かれていますか。
案内役
承継の形を3つに分け、第3章で形ごとの課題を並べています。形によって、読むページが違います。
ガイドライン(25〜27ページ)は、事業承継を「親族内承継」「従業員承継」「社外への引継ぎ(M&A)」の3つの形に分けています。第3章で取り上げている課題と、そのページです。
| 形 | 誰に引き継ぐか | 第3章で取り上げている課題 | ページ |
|---|---|---|---|
| 親族内承継 | 社長の子をはじめとする親族 | 後継者の選び方と育て方、贈与税・相続税の負担、株や事業用の資産が散らばるのを防ぐこと、借入れ・保証・担保の引継ぎ、資金の調達 | 54〜88 |
| 従業員承継 | 親族以外の役員・社員 | 後継者の選び方と育て方、株を買い取るお金(MBO・EBO)、株が散らばるのを防ぐこと、社長の個人保証の扱い | 88〜97 |
| 社外への引継ぎ(M&A) | 社外の第三者 | 早めの判断、秘密を守ること、手続きの流れ、株式譲渡・事業譲渡などの手法、許認可の引継ぎ、相談先 | 98〜103 |
それぞれの形について、ガイドラインは次のように書いています。
- 親族内承継: ほかの形と比べて、税の負担、株や事業用の資産が散らばるのを防ぐこと、借入れなどの引継ぎで、特に大きな課題が出やすい(54ページ)
- 従業員承継: 後継者に経営者になる意識が弱いこと、後継者の家族や社長の親族の理解を得にくいこと、株を買い取るお金を用意しにくいことなどから、最後の段階で話がまとまらないことも少なくない(88ページ)
- 社外への引継ぎ: 希望する相手とのマッチングには、通常、数か月〜1年程度かかる見込み。決断が遅れるほど、M&Aの選択肢は狭まる傾向にある(98ページ)。会社が特に小さい場合は、より簡単な形で進めるほうが現実的なケースも多い(99ページ)
どの形でも、ステップ1〜3(準備の必要性に気づく・見える化・磨き上げ)は共通です(32〜36ページ)。事業承継を進めやすくする手法として、第4章(104〜112ページ)は種類株式・信託・生命保険・持株会社の使い方を説明しています。個人事業主は、第5章(113〜117ページ)で、事業用の資産を1つずつ引き継ぐことや、許認可を後継者が取り直す必要があることを書いています。
3つの形と廃業の特徴の比べ方は後継者がいない会社の選択肢に、株の渡し方と税は自社株の相続と事業承継税制とはに、社長の個人保証は経営者保証(個人保証)はM&Aで解除される?にまとめています。
事業承継診断で、準備の進み具合を確かめる
社長
事業承継診断というのは、どこかに申し込んで受けるものですか。
案内役
取引のある金融機関や商工会・商工会議所の担当者が、訪問のときに10分ほどの対話で行うのが基本です。巻末には、自分で答えられるチェックシートも載っています。
ガイドライン(123〜124ページ)によると、事業承継診断は、主に金融機関の営業の担当者や商工会・商工会議所などの担当者が、会社を訪ねたときに、診断票に沿った対話で、経営者に準備のきっかけを示す取り組みです。
- やり方: 身近な支援機関が、ふだんの付き合いの中で、事業承継診断票(相対用)を使って対面で行うのが基本。かかる時間は10分程度
- よろず支援拠点: 経営の相談などに来た概ね60歳以上の事業者に、診断を行う
- 診断のあと: 支援機関は、結果をふまえて、見える化・磨き上げ・事業承継計画・M&Aなどの次の段階に進めるよう、専門家の相談窓口や支援策を紹介することが望ましい
ガイドラインの時点で、診断は年間16万件を超えて行われていると書いています(120ページ)。おわりに(133ページ)も、診断などを通じて経営者と支援機関、社長と後継者の対話を進めることが大事だとしています。
巻末には、2つの診断票が「一部抜粋」として載っています。
| 診断票 | 中身 | ページ |
|---|---|---|
| 相対用(2024年4月改訂) | 支援機関の担当者と対面で使う。後継者がいるか・本人の了承を得ているか、後継者は親族か社員か第三者か、育成や関係者の理解・株主名簿や資産の整理・経営者保証への対応が進んでいるか、引き継ぐ相手の候補と相談する専門家がいるか、を問う。そのあとに5つのステップの図と、事業承継・引継ぎ支援センターなどの案内が続く | 134〜136 |
| 自己診断用 | 経営者が自分で答える9つの問い(下の表) | 137 |
相対用の用紙の頭には、答えた情報を、診断を行う認定支援機関、都道府県の事業承継・引継ぎ支援センター、経済産業省、中小企業基盤整備機構と共有することと、相談者がそれに同意する欄が書かれています。受けるときは、この点も確かめておけます。
自己診断用チェックシートの問いの中身です(当サイトの要約)。
| 問い | 中身 | 答える人 |
|---|---|---|
| Q1 | 事業計画を作り、中長期の目標やビジョンを決めて経営しているか | 全員 |
| Q2 | 経営の悩みや課題を、身近に相談できる専門家がいるか | 全員 |
| Q2のあとの問い(シートでは星印) | 後継者に会社を託すことをはっきり伝え、継ぐ意思を確かめたか | 後継者がいる人 |
| Q3〜Q5 | 後継者の育成や人脈・技術の引継ぎの準備、社内外の関係者の理解と協力、法務・税務・資金の面の対策を進めているか | 後継者の意思を確かめた人 |
| Q6〜Q7 | 後継者の正式な決定や育成、自分が退く時期の決定などのための準備の期間は十分か。後継者の候補に打診する時期や、まだ打診していない理由ははっきりしているか | 後継者にしたい人がいる人、意思をまだ確かめていない人 |
| Q8〜Q9 | 第三者に引き継ぐ(会社の売却・事業譲渡など)場合の相手の候補はあるか。その進め方を知っているか | 後継者がいない人 |
シートは「いいえ」があれば次のページを見るよう書いていますが、ガイドラインに載っているのは一部の抜粋で、その先のページは載っていません。中小企業庁の「事業承継」のページには、「事業承継診断シート」(2024年4月1日)も載っています。「いいえ」が付いた問いを書き出して、相談するときに持っていく使い方もできます。
第6章が挙げる支援機関と、それぞれの役目
社長
誰に相談すればいいのか迷います。ガイドラインには、何と書いてありますか。
案内役
取引のある金融機関や商工会・商工会議所の担当者、顧問の税理士や弁護士など、身近な所に声を掛けてみることが、準備の第一歩だと書いています。
ガイドライン(118ページ)は、経営者の周りには、身近な支援機関から専門的な支援機関まで多くの支援機関があるとし、まずは身近な支援機関に声を掛けてみることが、準備の第一歩になると書いています。顧問の税理士・弁護士・公認会計士などは、会社の実態や沿革、社内や親族の人間関係にも詳しいので、準備を進めるうえで貴重な存在になりうるとしています(122〜123ページ)。
第6章の4(125〜132ページ)に書かれている、支援機関ごとの主な役目です。
| 支援機関 | ガイドラインに書かれている主な役目 | ページ |
|---|---|---|
| 税理士 | 経営者向けのアンケートで、事業承継の相談先のトップ。相続税の助言、株価の評価、生前贈与や種類株式の助言など | 126 |
| 公認会計士 | 見える化・磨き上げ、株式の評価やM&Aの売却価格の試算、経営者の個人保証の解除など | 125 |
| 弁護士 | 社長と一緒に金融機関・株主・社員へ説明し、説得する。スキーム全体の設計、契約書などの作成 | 127 |
| 司法書士 | 商業登記・不動産登記。株式や事業用の不動産の承継、種類株式・民事信託の活用など | 126 |
| 行政書士 | 許認可の申請や届出。争いがない場合の遺産分割協議書・契約書などの作成 | 125 |
| 中小企業診断士 | 事業承継診断、事業承継計画づくり・後継者教育・磨き上げの支援、M&Aに関わる支援など | 126 |
| 金融機関 | ふだんの付き合いの中で準備を促す。専門家の紹介、M&Aのマッチング、株の取得などに要る資金への対応 | 127〜128 |
| 商工会議所・商工会 | 事業承継の必要を掘り起こす、セミナー、支援策の情報、専門家の紹介、センターとの連携 | 128 |
| 事業承継・引継ぎ支援センター | 事業承継のワンストップ窓口。家族への承継の計画づくり、社外への引継ぎ、後継者人材バンク、経営者保証の解除に向けた支援 | 130 |
| よろず支援拠点 | 2014年から各都道府県に置かれた、無料のワンストップの経営相談窓口。事業承継の相談と、センターなどへの紹介 | 130〜131 |
| 認定経営革新等支援機関 | 国が認定した支援機関。事業承継ガイドラインと中小M&Aガイドラインをふまえて、計画的な事業承継を促す | 129 |
事業承継・引継ぎ支援センターについて、ガイドライン(121ページ)は、2020年度の相談件数が11,686件、成約件数が1,379件に達したと書いています。どれも2022年3月の時点の記述で、窓口の今の様子は各機関に確かめてください。センターの使い方は事業承継・引継ぎ支援センターとはに、よろず支援拠点はよろず支援拠点とはに、相談先ごとの費用の違いは会社を売る相談はどこにする?にまとめています。
このサイトは、特定の機関や専門家をすすめません。国の窓口の案内は相談するのページにあります。
社外に引き継ぐときは、もう1つの国のガイドラインも読む
社長
会社を売ることになったら、このガイドラインだけで足りますか。
案内役
社外への引継ぎはあらましだけで、手続きのくわしいことは中小M&Aガイドラインを見るよう書いています。2つは受け持つ範囲が違います。
事業承継ガイドラインは、M&Aの工程(44〜46ページ)と社外への引継ぎ(98〜103ページ)の説明の中で、手続きのくわしいことは中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」を参照するよう書いています。2つの違いは次のとおりです。
| 比べる点 | 事業承継ガイドライン | 中小M&Aガイドライン |
|---|---|---|
| 今の版 | 第3版(2022年3月改訂。2023年12月・2024年4月に一部更新) | 第3版(2024年8月) |
| 分量 | PDFで144ページ | PDFで139ページ |
| 扱う範囲 | 親族内承継・従業員承継・社外への引継ぎの3つと、廃業 | 後継者のいない中小企業の事業を、社外の第三者が引き継ぐ場合(中小M&A)。親族内承継と従業員承継は、中小M&Aに含めない |
| 社長が読むところ | 会社の実情に応じて、必要な所 | 第1章「後継者不在の中小企業向けの手引き」 |
| 支援する側について | 第6章で、支援機関の役目を説明 | 第2章で、仲介会社・FAなどの支援機関が守る基本的な事項を書く |
中小M&Aガイドラインの扱う範囲と読むところは、同ガイドラインの14〜16ページによります。仲介会社・FAに何が求められているかは、中小M&Aガイドライン(第3版)を社長向けににまとめています(用語集の中小M&Aガイドラインにも短い説明があります)。
事業承継ガイドラインは、2つのガイドラインのつながりについて、ほかにも次のように書いています。
- 仲介者・FAを選ぶときは、事業承継・引継ぎ支援センターを使うことや、中小M&Aガイドラインを守ることなどを登録の条件とする「M&A支援機関登録制度」に登録済みの仲介者・FAを選ぶことなどが考えられる(45ページ)
- 認定経営革新等支援機関には、2つのガイドラインをふまえて事業承継を促す役目が期待されている(129ページ)
- M&Aのあとの統合(PMI)の進め方は、「中小PMIガイドライン」を参照する(101ページ)
M&A支援機関登録制度に登録した仲介会社・FAは、手数料の決め方などを国に届け出ていて、国のデータベースで公開されています。売った場合に手数料を引いた額は、国に届け出られた手数料から、このサイトの計算機で機関ごとに確かめられます。
計算機の「手取り」は、税を引く前の額です。売る流れは会社を売るにはに、株式譲渡と事業譲渡の違いは株式譲渡と事業譲渡の違いにまとめています。
2022年3月より後に変わったこと
社長
2022年の資料だと、古くなっている所はありませんか。
案内役
期限や制度の名前など、そのあと変わったものがあります。2026年10月16日に国のページで確かめた範囲で並べます。
ガイドラインに書かれていることと、今の状況が違う主な点です。
| ガイドラインの記述 | 2026年10月16日に確かめた今の状況 | 確かめた資料 |
|---|---|---|
| 事業承継税制の特例措置の前提になる「特例承継計画」の提出期限は2026年3月31日まで(66ページ、135ページの図) | 提出期限は2027年9月30日まで。特例措置の対象になる贈与・相続は、2027年12月31日までのまま | 中小企業庁「法人版事業承継税制(特例措置)」のページ |
| 中小M&Aガイドラインは2020年3月に公表(45ページ) | 2024年8月の第3版が最新 | 中小企業庁「事業承継」のページ、中小M&Aガイドライン(第3版)の表紙 |
| 補助金の名前は「事業承継・引継ぎ補助金」(129ページ) | 「事業承継・M&A補助金」の名前で公募している(16次公募の公募要領を2026年9月4日に公表) | 中小企業庁「事業承継」のページの新着情報 |
| 「中小企業再生支援協議会」(52・124・130ページ) | 2022年4月1日から「中小企業活性化協議会」。ガイドラインの注にも書かれている | ガイドライン 52・125・130ページの注 |
ほかにも、ガイドラインに載っている図表の数字は、主に2015〜2021年ごろの調査によるものです。経営者の年齢や後継者がいない会社の割合の新しい数字は、会社を売る時期を考えるときの材料や後継者がいない会社の選択肢で、2026年版中小企業白書から引いています。
税の部分は2024年4月1日に更新されていますが、税の決まりは毎年の税制改正で変わることがあります。特例承継計画の期限が延びた経緯は特例承継計画とはに、補助金のいまの中身は事業承継・M&A補助金で仲介手数料は補助される?にまとめています。実際に使うときは、税理士・税務署や各機関に、その時点の決まりを確かめてください。
よくある質問
社長
仲介会社の案内にある「ガイドラインを守っています」は、事業承継ガイドラインのことですか?
案内役
国のM&A支援機関登録制度で、仲介会社・FAが登録するときに守ることを条件にしているのは、別の資料の中小M&Aガイドラインです(事業承継ガイドライン 45・103・129ページ)。事業承継ガイドラインは、経営者には準備に取りかかるための「道しるべ」に、支援機関には支援の「スタンダード」にしてほしいと書いている手引きで(はじめに・133ページ)、家族や社員に継ぐ場合も含めた準備の全体を扱っています。案内にどちらのことが書かれているかは、資料の名前で確かめてください。
社長
家族に継ぐか、売るか、まだ決めていなくても読めますか?
案内役
読めます。ステップ1〜3(準備の必要性に気づく・見える化・磨き上げ)は、どの形にも共通です(32〜36ページ)。ガイドライン(28ページ)は、家族や社員に継ぐための後継者選びを進めるだけでなく、状況によってはM&Aによる社外への引継ぎの可能性も視野に入れて検討を進めるよう書いています。廃業の相談を受けた支援機関にも、すぐに手続きを進めるのではなく、見える化から順に検討するよう書いています(50ページ)。たたむ場合の手続きと費用は会社をたたむか、売るかにまとめています。
社長
個人事業主でも使えますか?
案内役
使えます。第5章(113〜117ページ)が個人事業主の事業承継を扱っています。個人事業主は、事業用の資産が経営者個人のものなので、資産を1つずつ後継者に引き継ぐ必要があること、法人のように法人格が続くわけではないので、許認可を後継者が取り直したり、取引先との契約を引き継いだりする必要があることを書いています。個人事業主が社外に引き継ぐときは、事業譲渡の形を使うのが通常で(101ページ)、事業承継・引継ぎ支援センターの後継者人材バンクで、起業を目指す人とつなぐ仕組みもあるとしています(116〜117ページ)。
社長
どこで手に入りますか。最新の版かどうかは、どう確かめますか?
案内役
中小企業庁のサイトの「事業承継」のページで、PDFとして公開されています。同じページに、公表日(2022年3月16日)と、2023年12月27日・2024年4月1日の更新の中身が書かれています。この記事は2026年10月16日に確かめた内容です。読む前に、このページで更新の記載が増えていないかを見ておくと、どこが変わったか分かります。
社長
まず巻末のチェックシートに答えてみて、「いいえ」が付いた所を書き出します。それを持って、取引のある銀行と顧問の税理士に話を聞いてみます。
案内役
身近な支援機関に声を掛けることは、ガイドラインが準備の第一歩に挙げていることです。家族に継ぐか、社員か、社外かを決めるのは社長ご自身です。期限のある制度は、そのときの国の資料で確かめてください。
このデータについて
- ガイドラインの中身は、中小企業庁の事業承継ガイドライン(第3版・2022年3月改訂。2023年12月・2024年4月に一部更新)の記述を要約したものです。ページ番号はページに印字された番号です。2026年10月16日に、中小企業庁のサイトのPDFで確かめました
- 公表日・更新の日付と中身、事業承継診断シートと中小PMIガイドラインの掲載、事業承継・M&A補助金のお知らせは、中小企業庁の「事業承継」のページで確かめました(2026年10月16日)
- 巻末の事業承継診断票は図として載っているため、PDFのページを画像にして読みました。問いの中身は当サイトの要約です
- 中小M&Aガイドライン(第3版・2024年8月)のページ番号は、各ページ下の「n / 139」の番号です
- 特例承継計画の提出期限と、特例措置の対象になる贈与・相続の期限は、中小企業庁の「法人版事業承継税制(特例措置)」のページで確かめました(2026年10月16日)
- 「社長が読む順」は当サイトが考えた一例で、ガイドラインが決めた順番ではありません
- 当サイトは、承継の形の選び方や、税・法律・保証についての助言は行いません。個別のことは、税理士・弁護士や国の窓口に確かめてください
