社長
小学生と中学生の学習塾を、株式会社で25年営んできました。教室は3つで、どれも借りています。子どもは継がないと言っています。塾を売るとしたら、生徒との契約や講師、教室はどうなるのでしょう。
案内役
学習塾には、運送業やクリーニング店のような開業の許可や届出の決まりが、確かめた範囲では見当たりません。そのぶん、引き継ぐ中身は、生徒・保護者との契約、講師、教室、生徒の情報です。特定商取引法や個人情報保護法などの法令と、消費者庁・こども家庭庁などの資料で確かめた範囲をご案内します。手続きの最後の確認は、各窓口や専門家にお願いします。
先に結論
- 学習塾を開くこと自体の許可や届出を定めた法律は、確かめた範囲では見当たりません(各種学校・専修学校として都道府県知事の認可を受けた塾や予備校は別)。引き継ぐのは、生徒・保護者との契約、講師、教室、生徒の情報です
- 期間が2か月を超え、総額が5万円を超える学習塾の契約は、特定商取引法の「特定継続的役務提供」です。書面の交付、8日間のクーリング・オフ、中途解約のときに塾が求められる額の上限(授業の開始後は、受けた授業の分に2万円か1か月分の授業料の低いほうを足した額まで)が決まっています
- 株式譲渡なら、契約・雇用・教室の賃貸借は会社に残ります。事業譲渡では、保護者との契約、講師の雇用、教室の賃貸借を移すのに、それぞれ相手の承諾が要ります。根拠は民法539条の2・625条1項・612条1項です
- 生徒の個人情報は、事業の引継ぎに伴うなら本人の同意なしに渡せますが、使えるのは元の目的の範囲までです(個人情報保護法27条5項2号・18条2項)
- 2026年12月25日から、こども性暴力防止法の「認定」の申請が始まります。教える人が3人以上いるなどの要件を満たす学習塾が、任意で受けられます
- 国の集計では、2024年度に報告された売り手側の中小M&A 4,940件のうち、学習塾を含む「教育、学習支援業」は83件で、37件が事業譲渡でした
- 仲介会社の手数料と手元に残る額は、譲渡額3,000万円で計算すると、機関ごとに比べられます
国の数字で見る、学習塾とM&A
社長
子どもが減って、塾は厳しいと聞きます。塾を売る話は、実際にあるのですか。
案内役
国の統計で、売上の大きい塾の売上高や受講生の数と、国の登録機関に報告されたM&Aの件数を見られます。M&Aの件数は学習塾だけには絞れないので、学習塾を含む業種の区分で見ます。
経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」は、学習塾の売上高や受講生の数を毎月調べていました。業種ごとの年間の売上高のおおむね7割をカバーする、売上の大きい企業を対象にした調査です。2024年12月分で終わり、2025年1月分からは、総務省の「サービス産業動態統計調査」に統合されています(経済産業省「調査の概要」)。最後の年の、学習塾の数字です。
| 項目 | 2024年 |
|---|---|
| 売上高(1年間) | 5,933億9,700万円 |
| 受講生の数(12月) | 124万9,732人 |
| 塾の事業所(12月) | 11,001か所 |
| 講師(12月) | 13万6,571人(うち非常勤12万2,114人) |
統計表の前年比では、受講生の数は3年続けて前年を下回りました(2022年99.7%・2023年96.2%・2024年97.9%)。売上高は、2024年は前年比102.1%でした。講師の約9割(89.4%)は非常勤です。
文部科学省の「令和5年度子供の学習費調査」(2026年1月16日の訂正版)で、保護者が1年間に支出した学習塾費を見ました。塾に通っていない子も含めた、子ども1人あたりの平均です(調査結果の概要15ページ)。
| 学校 | 公立 | 私立 |
|---|---|---|
| 小学校 | 約7万5千円 | 約25万9千円 |
| 中学校 | 約23万円 | 約16万8千円 |
| 高等学校(全日制) | 約14万7千円 | 約16万7千円 |
学習塾費を支出した人だけの平均は、公立中学校で約34万9千円、公立高等学校(全日制)で約38万1千円でした(同17ページ)。
国の「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」は、業種を大きな区分でしか絞れません。学習塾は、総務省の「日本標準産業分類」で大分類O「教育、学習支援業」に入ります。この区分の売り手側の件数です(2026年10月16日に確認)。
| 年度 | 売り手側の全体 | うち教育、学習支援業 | うち事業譲渡 | うち株式譲渡 |
|---|---|---|---|---|
| 2022年度 | 4,036件 | 68件(1.7%) | 36件 | 28件 |
| 2023年度 | 4,681件 | 96件(2.1%) | 46件 | 40件 |
| 2024年度 | 4,940件 | 83件(1.7%) | 37件 | 40件 |
この区分には、学習塾のほか、学校、教養や技能を教える教室、図書館・博物館なども入り、学習塾だけの数ではありません。2024年度の事業譲渡の割合は44.6%で、全業種の23.9%より高めでした。理由は集計に書かれていません。83件のうち58件は、仲介の支援を受けたものです。国の登録機関から報告のあった案件だけの集計で、すべてのM&Aを含むものではありません。
後継者がいないときの道の全体は、後継者がいない会社の選択肢にまとめています。
売り方で変わる、生徒・講師・教室の引継ぎ
社長
会社ごと売るのと、塾の事業だけを売るのとでは、何が違いますか。
案内役
株式譲渡なら、塾を営む会社がそのまま残るので、契約も雇用も会社に残ります。事業譲渡では、契約を一つずつ買い手に移すことになり、相手の承諾が要ります。
中小M&Aガイドライン(48ページ)は、株式譲渡は手続きが比較的シンプルな一方、会社がそのまま続くため、未払いの残業代のような帳簿に出ない債務(簿外債務)のリスクが比較的高く、くわしい調べが行われる傾向にあるとしています。事業譲渡は、引き継ぐ財産を選べる一方、引き継ぐものの特定などの作業が要ります(48〜49ページ)。
| 引き継ぐもの | 株式譲渡 | 事業譲渡 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 生徒・保護者との契約 | 塾を営む会社が、契約の相手のまま | 相手(保護者など)の承諾で、契約上の地位が買い手に移る | 民法539条の2 |
| 講師の雇用 | 雇い主の会社は変わらない | 講師一人ひとりの承諾が要る | 民法625条1項 |
| 業務委託の講師 | 契約は会社に残る | 講師の承諾で、契約上の地位が移る | 民法539条の2 |
| 教室の賃貸借 | 借り主の会社は変わらない。契約の条項は確かめる | 貸主の承諾が要る | 民法612条1項、ガイドライン22ページ |
| 生徒の個人情報 | 会社に残る | 同意なしに渡せる。使い道は元の目的の範囲まで | 個人情報保護法27条5項2号・18条2項 |
個人で営む塾は、事業譲渡の形が通常とされています(ガイドライン49ページ)。2つの売り方の違いは株式譲渡と事業譲渡の違いで比べています。
生徒・保護者との契約と、特定商取引法
社長
入塾のときに、保護者と契約書を交わしています。売るときに、何を見られますか。
案内役
学習塾の多くの契約は、特定商取引法の決まりの対象です。書面がそろっているか、解約のときの精算が決まりどおりかは、買い手が調べる点です。
特定商取引法は、学習塾を「特定継続的役務」の一つに挙げています。学校(幼稚園と大学を除く)の児童・生徒・学生を対象に、入試に備えるためか学校の補習のために、塾の教室など事業者が用意する場所で教えるものです(同法施行令 別表第4)。期間が2か月を超え、支払う額が5万円を超える契約が対象です(法41条、施行令24条・25条)。消費者庁の特定商取引法ガイドは、入学金・受講料・教材費などを合わせた総額で見ること、幼稚園や小学校に入るための「お受験」対策と、浪人生だけのコースは対象にならないことを示しています。
| 決まり | 中身 | 根拠 |
|---|---|---|
| 契約の前の書面(概要書面) | 塾の名前・住所、授業の内容、金額のめやす、支払いの時期と方法、期間、クーリング・オフと中途解約、前受金の保全の有無などを書いて渡す | 法42条1項、施行規則92条 |
| 契約のあとの書面(契約書面) | 費目ごとの金額、授業の時間数や回数、契約を担当した人の名前なども書く。クーリング・オフの事項は赤枠の中に赤字、文字は8ポイント以上 | 法42条2項、施行規則93条・94条 |
| クーリング・オフ | 契約書面を受け取った日から数えて8日までは、書面かメールなどの電磁的記録で解除できる。塾は損害賠償や違約金を求められず、受け取ったお金は速やかに返す | 法48条 |
| 中途解約 | 8日を過ぎても、将来に向かって解除できる。塾が求められるのは、授業の開始後なら、受けた授業の対価に2万円か1か月分の授業料の低いほうを足した額まで。開始前なら1万1千円まで(どちらも遅延損害金は別) | 法49条、施行令30条・31条・別表第4 |
| 教材などの関連商品 | 塾の契約を解除すると、授業のために買う必要のあった書籍などの売買も解除できる | 法48条2項・49条5項、施行令29条・別表第5 |
| 前払いのときの書類 | 前払いで5万円を超えて受け取るときは、貸借対照表・損益計算書などを事務所に備え置き、契約した人の求めに応じて見せる | 法45条、施行令27条、施行規則105条 |
中途解約で、上の上限より多くを受け取っているときは、残りを返します(消費者庁の特定商取引法ガイド)。授業料を前もって受け取っている分は、これから授業をする約束でもあります。
中小M&Aガイドライン(126ページ)は、買い手の弁護士が行う法務のデュー・ディリジェンスで、重要な契約や、許認可・コンプライアンスなどを調べることが多いとしています。塾では、入塾の契約書と書面のひな形、書面を渡した記録、解約のときの精算のしかたが、その材料になります。法48条1項によれば、契約書面を渡していなければ、クーリング・オフの8日間が数え始まりません。
売り方ごとに、契約の扱いも違います。
- 株式譲渡: 塾を営む会社が契約の相手のままなので、契約はそのまま続く
- 事業譲渡: 保護者との契約を買い手に移すには、相手の承諾が要る(民法539条の2)。買い手が保護者と新しく契約を結び直すなら、その契約は買い手の契約として、期間と金額の条件に当たれば書面の交付やクーリング・オフの決まりが当てはまる(法41条・42条・48条)
- 前受けの授業料: 事業譲渡なら、受け取り済みの授業料と、それに見合う授業をどちらが引き受けるかを、最終契約で決めておける(ガイドライン49ページは、何を譲るかを最終契約の主な内容に挙げている)
講師の雇用・業務委託と、社長が退いたあと
社長
講師は、大学生のアルバイトがほとんどです。業務委託で来てもらっている先生もいます。
案内役
雇っている講師と、業務委託の講師とで、売るときの扱いが違います。どちらも、働いた時間の記録と、支払いが決まりどおりかを、買い手が見ます。
厚生労働省 神奈川労働局のパンフレット(2018年2月)は、授業の1コマ単位で賃金を決める「コマ給」などが原因で、賃金の不払いなどの労働基準法の違反が見られたとしています(1ページ)。主な指摘です。
- 労働時間: 授業の時間だけではない。指示による授業前の準備、授業後の報告書づくり、生徒の質問への対応、研修なども労働時間として把握する(2ページ)
- 賃金: 授業以外の業務の時間単価も示して払う。1日8時間・1週40時間を超えた分は、割増賃金を払う(1〜3ページ)
- 監督指導の例: 報告書の作成やミーティングの時間を記録せず割増賃金を払っていなかった例、1コマの賃金を時間給に直すと県の最低賃金を下回っていた例などが挙がっている(4ページ)
中小M&Aガイドライン(48ページ)は、株式譲渡では未払いの残業代のような簿外債務のリスクが比較的高くなりやすいとしています。売り手が「従業員との労働紛争はない」と表明保証していたのに紛争があった場合に、和解金を売り手が負担する例も挙げています(22ページ)。勤務の記録と賃金の計算は、売る前に見直しておけます。
事業譲渡で講師に買い手の会社へ移ってもらうには、一人ひとりの承諾が要ります(民法625条1項)。業務委託の講師には、別の決まりがあります。
- 労働者かどうか: 業務委託の契約でも、契約の形式や名称にかかわらず、働き方の実態から「労働者」かどうかが判断される(公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省のフリーランスのガイドライン 26ページ)
- 条件の明示: 従業員を使わない個人などに業務を委託したときは、すぐに、業務の内容、報酬の額、支払期日などを、書面かメールなどで示す(フリーランス・事業者間取引適正化等法2条・3条)
- 支払期日: 従業員を使う会社などが委託するときは、授業をしてもらった日から60日以内の、できるだけ短い期間で支払期日を決める(同法4条)
講師の手当ては、社長自身にもかかわります。社長が教室長や講師を兼ねているなら、社長が退いたあとに誰が務めるかを、早めに書き出しておけます。ガイドライン(49ページ)は、経営者による引継ぎの期間や、従業員の雇用を続ける努力を、最終契約で決める主な内容に挙げ、引継ぎには3か月〜1年程度かかることが多いとしています(57ページ)。講師や社員への伝え方は会社を売ることを、家族と社員にいつ・どう伝える?にまとめています。
生徒の個人情報と、保護者への説明
社長
生徒の名簿や成績、面談の記録があります。買い手に渡してもいいのでしょうか。保護者には、いつ話せばいいですか。
案内役
事業を引き継ぐのに伴って渡すなら、本人の同意なしに渡せます。ただ、交渉の途中で見せるときと、引き継いだあとの使い道に決まりがあります。保護者に話す時期は、買い手と前もって決めておけます。
個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、紙の名簿でも、五十音順などで整理して探しやすくしてあれば「個人情報データベース等」にあたり、それを事業に使っていれば、人数の多い少ないにかかわらず「個人情報取扱事業者」になるとしています(2-4・2-5)。
- 渡せる場面: 合併や事業譲渡などで事業を引き継ぐのに伴って個人データを渡すとき、受け取る側は「第三者」にあたらず、本人の同意は要らない(法27条5項2号)
- 交渉の途中: 契約の前に買い手の調査を受けて個人データを見せる場合もこれにあたる。ただし、使う目的と扱い方、もれたときの対応、交渉がまとまらなかったときの対応などを決めた契約を結ぶ必要がある(ガイドライン3-6-3)
- 引き継いだあと: 買い手は、引き継ぐ前の利用目的の範囲で使う。範囲を超えて使うなら、前もって本人の同意が要る。その同意を得るための連絡は、目的外の利用にあたらない(法18条2項、ガイドライン3-1-4)
- 子どもの同意: 本人が未成年で、同意したときの結果を判断する力がない場合などは、親権者などの法定代理人から同意を得る(ガイドライン2-16)
2026年7月17日に公布された改正法は、本人が16歳未満のとき、同意の取得や通知などは法定代理人を相手にすることを明文化しました。施行は、原則として公布から2年を超えない範囲で政令で定める日です(個人情報保護委員会「個人情報保護法等の一部を改正する法律について」5・10ページ)。
保護者に話す時期について、中小M&Aガイドライン(49ページ)は、クロージングのあとに公表すると合意しているなら、それまでは秘密を守る必要があるとしています。事業譲渡では保護者の承諾が要るので、知らせ方と承諾の集め方を、買い手と前もって決めておけます。
| 保護者に伝える前に決めておけること | 株式譲渡 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 契約の相手 | 塾の会社のまま | 買い手に移すには保護者の承諾が要る |
| 前受けの授業料 | 会社が引き続き授業をする | どちらが授業を引き受けるか |
| 生徒の情報 | 会社に残る | 元の利用目的の範囲で引き継ぐ |
| 知らせる時期と、誰から話すか | 買い手と決める | 買い手と決める |
2026年12月からの、こども性暴力防止法の認定
社長
塾の講師の性犯罪の前歴を確かめる制度が始まると聞きました。売ることと関係しますか。
案内役
2026年12月25日に施行される法律で、学習塾は、国の認定を任意で受けられる側に入ります。認定を受けると、講師の確認などが義務になります。事業を引き継いだときの扱いも、こども家庭庁のQ&Aにあります。
「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(こども性暴力防止法)は、2026年12月25日に施行されます(同法施行規則 附則1条)。学習塾などの民間の事業者は、学校などと同じ水準の体制があることについて、内閣総理大臣の認定を受けることができます(法19条1項)。こども家庭庁のQ&A(2026年9月18日改訂)は、学習塾を、法令による認可を受けて教育を行う学校などとは別の、認定の対象の側に挙げ(24ページ)、認定の申請は任意としています(31ページ)。
学習塾が認定の対象の「民間教育事業」に当たるのは、次の5つをすべて満たすときです(法2条5項3号、施行令1条、Q&A 26ページ)。
| 要件 | 中身 |
|---|---|
| 子どもに教える事業 | 子どもに技芸や知識を教えることを目的とし、実際に教えている |
| 6か月以上 | 標準的な修業期間が6か月以上 |
| 対面 | 対面で指導する。オンラインが基本でも、対面の指導も想定されていれば対象 |
| 事業者が用意する場所 | 塾の事業所など、事業者が用意する場所で教える。子どもの自宅は除く |
| 教える人が3人以上 | 雇用の有無や形は問わない |
- 申請の時期: 2026年12月25日から申請でき、認定までは審査などで1〜2か月程度かかる(Q&A 29ページ)
- 認定を受けたあと: 対象の業務に就かせる人の犯罪事実確認を、業務に就かせるまでに行う(認定のときにすでに働いている人は、決められた期間内に行う)。記録の管理、帳簿、定期の報告の決まりもある(法26条〜28条)
- フランチャイズの教室: 本部と加盟店は経営する主体が違うので、それぞれで申請する。教える人が3人未満の教室は、認定を受けられない(Q&A 84ページ)
事業を引き継いだときについて、Q&A(90ページ)は、合併・分割・事業譲渡などで事業を引き継いだ事業者は、前の事業者で研修を受けた人に、改めて研修を受けさせる必要はないとしています。ただし、犯罪事実確認の記録は事業者の間で引き継げないため、引き継いだ側で犯罪事実確認が要ります。売ったあとに買い手が認定を受けるつもりがあるかは、講師の人数や確認の段取りにかかわるので、交渉の中で確かめておけます。認定の手続きや、自社が要件に当たるかは、こども家庭庁に確かめてください。
教室の賃貸借と手数料、相談の入口
社長
教室は3つとも借りています。手数料はどのくらいかかり、どこに相談すればいいですか。
案内役
教室の賃貸借は、売り方で扱いが変わります。手数料は計算機で機関ごとに見られます。確かめたいことごとに、聞く先も分けておけます。
- 事業譲渡: 借り主の立場を買い手に譲るには、貸主の承諾が要る(民法612条1項)。承諾なしに買い手に教室を使わせると、貸主は契約を解除できる(同条2項)
- 株式譲渡: 借り主の会社は変わらない。ただ、株主が変わると相手に解除の権利が生じる「チェンジ・オブ・コントロール条項」が、賃貸借契約などに入っていることがある(中小M&Aガイドライン22ページ)
- 敷金: 承諾を得て借り主の立場を譲ったとき、貸主は、敷金から未払いの賃料などを引いた残りを、元の借り主に返す(民法622条の2)
- 話し合いの時期: 賃貸借やリースの名義の変更は、クロージングの前から貸主やリース会社と話し始めることが多い(ガイドライン56ページ)
- 社長個人の土地・建物: 社長個人の名義で塾に使っている土地や建物は、買い手に売るか引き継ぐかを整理する(ガイドライン55ページ)
国の登録データ(2026年10月12日取得)で、仲介の売り手側の最低手数料を届け出た2,506機関の中央値は300万円でした(入力の誤りとみられる10億円以上の3件を除く)。譲渡額が1,000万円なら、その3割にあたります。譲渡額1,000万円で計算する・譲渡額3,000万円で計算すると、機関ごとの手数料と手元に残る額を並べて見られます。計算機は、成功報酬に含まないと届け出た着手金・中間金を足し、月額報酬は足していません。中小M&Aガイドライン(63ページ)は、仲介者・FAの手数料には一般的な法規制がないとしています。小さな会社ほど手数料が手取りに響くしくみは小さな会社のM&Aに、費用の全体はM&Aにかかる費用の全体にまとめています。
確かめたいことごとの、聞く先の例です。
| 確かめたいこと | 聞く先 |
|---|---|
| 入塾の契約・書面・解約の精算 | 消費者庁(特定商取引法ガイドの問合せ窓口)・弁護士 |
| 講師の労働時間・賃金・雇用 | 労働基準監督署・社会保険労務士 |
| 生徒の個人情報 | 個人情報保護委員会(個人情報保護法相談ダイヤル)・弁護士 |
| こども性暴力防止法の認定 | こども家庭庁 |
| 教室の賃貸借 | 貸主・弁護士 |
| 売るかどうか・相手探し | 事業承継・引継ぎ支援センター・仲介会社 |
事業承継・引継ぎ支援センターは、国の委託を受けた機関が全国48か所に置く公的な窓口で、相談は無料です(中小M&Aガイドライン60・66ページ)。くわしくは事業承継・引継ぎ支援センターとはをご覧ください。ガイドライン(130ページ)は、労働・社会保険の手続きは社会保険労務士が関わることも多いとしています。売るまでの流れは会社を売るにはにまとめています。
ほかの業種の確かめどころは、保育園のM&A・介護事業のM&A・飲食店・美容室の売却・クリーニング店のM&Aの記事にまとめています。
よくある質問
社長
個人で営む小さな塾でも、売ることはできますか?
案内役
個人事業主のM&Aは、事業譲渡の形が通常とされています(中小M&Aガイドライン49ページ)。保護者との契約、講師、教室は、それぞれ相手の承諾を得て移します。譲渡額が小さいほど手数料が手取りに響くしくみは小さな会社のM&Aにまとめています。
社長
フランチャイズに加盟している教室は、どうなりますか?
案内役
中小M&Aガイドライン(22ページ)は、株主が変わると相手に解除の権利が生じる条項の例に、フランチャイズ契約を挙げています。加盟の契約を引き継げるか、株主が変わったときにどうなるかは、本部との契約を確かめてください。こども性暴力防止法の認定は、本部と加盟店がそれぞれで申請し、教える人が3人未満の教室は受けられません(こども家庭庁のQ&A 84ページ)。
社長
家庭教師の派遣や、オンラインの授業も同じですか?
案内役
特定商取引法は、家庭教師を学習塾とは別の役務として指定していて、中途解約のときの上限も違います(授業の開始後は5万円か1か月分の授業料の低いほう、開始前は2万円。施行令 別表第4)。こども性暴力防止法の認定は、対面で、事業者が用意する場所で教えることが要件です。子どもの自宅だけで教える事業は当たらず、オンラインが基本でも対面の指導が想定されていれば対象です(Q&A 26ページ)。自社がどれに当たるかは、各窓口に確かめてください。
社長
売るかどうか決めていません。先にそろえておけるものは?
案内役
入塾の契約書と書面のひな形、書面を渡した記録、解約の精算の記録、講師の労働条件の書面と勤務の記録、業務委託の講師との契約、教室の賃貸借契約、個人情報の利用目的の示し方です。前払いを受けているなら、備え置いている財務の書類も見直しておけます。売り手が準備することはデューデリジェンス(DD)とはにまとめています。
社長
許可の引継ぎがない分、契約と人と教室を、一つずつ確かめるのですね。まず、入塾の書面と講師の契約、教室の賃貸借を書き出してみます。
案内役
株式譲渡なら契約は会社に残り、事業譲渡なら相手ごとの承諾です。書面と勤務の記録は買い手も確かめるので、早めにそろえておくと話を進めやすくなります。手数料は計算機で、法律の当てはめは各窓口や専門家に確かめてください。
このデータについて
- 法令は、2026年10月16日にe-Gov法令検索で確かめました。こども性暴力防止法は、2026年12月25日に施行される版で確かめました
- 特定商取引法の扱いは消費者庁の特定商取引法ガイド、個人情報の扱いは個人情報保護委員会のガイドライン(通則編・2026年6月一部改正)と改正法の資料、こども性暴力防止法の扱いはこども家庭庁のQ&A(2026年9月18日改訂。ページは印字の番号)で確かめました
- 学習塾の売上高・受講生・事業所・講師の数と前年比は、経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」の学習塾の統計表(2024年1〜12月分・年間補正済み)の値です。売上高の上位の企業を対象にした調査で、学習塾の全体の数ではありません。講師の非常勤の割合は、統計表の12月の値から計算しました
- 学習塾費は、文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」の2026年1月16日の訂正版で、ページはPDFのページです
- M&Aの件数は、M&A支援機関登録制度HP「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」で、業種「教育、学習支援業」に絞って2026年10月16日に確かめました。学習塾だけの数ではなく、国の登録機関から報告のあった案件だけの集計です
- 最低手数料の中央値は、M&A支援機関登録制度HP 登録支援機関データベースを加工して作成しました(取得日 2026年10月12日)。仲介の売り手側の最低手数料に0より大きい金額を届け出た機関から、入力の誤りとみられる10億円以上の3件を除いた2,506機関で数えました
- 講師の労働条件の指摘は、厚生労働省 神奈川労働局のパンフレット(2018年2月)によります。中小M&AガイドラインのページはPDFのページです
- このサイトは、特定の仲介会社や買い手、専門家をすすめません。契約・労務・個人情報の扱い、法律や税についての助言は行いません。個別のことは、各窓口や専門家に確かめてください
出典
- e-Gov法令検索 特定商取引に関する法律
- e-Gov法令検索 特定商取引に関する法律施行令
- e-Gov法令検索 特定商取引に関する法律施行規則
- 消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」
- e-Gov法令検索 民法
- e-Gov法令検索 個人情報の保護に関する法律
- 個人情報保護委員会 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)(令和8年6月一部改正)
- 個人情報保護委員会 令和8年 改正個人情報保護法について
- 個人情報保護委員会 個人情報保護法等の一部を改正する法律について
- e-Gov法令検索 学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律
- e-Gov法令検索 学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律施行令
- e-Gov法令検索 学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律施行規則
- こども家庭庁 こども性暴力防止法に関するQ&A(令和8年9月18日改訂)
- e-Gov法令検索 学校教育法
- e-Gov法令検索 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律
- 公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省 フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン(令和8年1月1日改定)
- 厚生労働省 神奈川労働局 学習塾における講師等の労働条件の確保・改善のポイント(平成30年2月)
- 経済産業省 特定サービス産業動態統計調査 調査の概要
- 経済産業省 特定サービス産業動態統計調査 統計表 19.学習塾(2024年1月〜12月分・年間補正済み)
- 文部科学省 結果の概要-令和5年度子供の学習費調査
- 文部科学省 令和5年度子供の学習費調査 調査結果の概要(令和8年1月16日差替)
- 総務省 日本標準産業分類 大分類O 教育、学習支援業
- 中小企業庁 中小M&Aガイドライン(第3版)(2024年8月)
- 中小企業庁 M&A支援機関登録制度「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」M&A形態の割合(教育、学習支援業)
- 中小企業庁 M&A支援機関登録制度「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」FAと仲介の利用割合(教育、学習支援業)
- 中小企業庁 M&A支援機関登録制度「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」M&A形態の割合(全業種)
- 中小企業庁 M&A支援機関登録制度 登録支援機関データベース
