社長
婦人服のブランドを持つ会社を、35年営んできました。企画は社内で行い、縫製は国内の工場に頼んで、借りた店舗で売りながら、卸もしています。子どもは継がないと言っています。会社を売るとしたら、ブランドの名前や在庫、取引先、借りている店はどうなるのでしょう。
案内役
衣料品の会社では、運送業や建設業のような業の許可の引継ぎよりも、ブランドの商標・在庫・取引先・店舗の契約が、確かめどころの中心になります。法令と、特許庁・国税庁・公正取引委員会・経済産業省などの資料で確かめた範囲をご案内します。手続きや税の最後の確認は、専門家や各窓口にお願いします。
先に結論
- 国の集計では、2024年度に報告された売り手側の中小M&A 4,940件のうち、卸売業・小売業は792件(16.0%)で、医療・福祉の948件に次ぐ多さでした。服を縫う会社が入る製造業は710件です
- 衣料品の会社の引継ぎでは、ブランドの商標・在庫・取引先・店舗の契約が確かめどころです。古着を扱う古物商の許可は、古物営業法に、事業譲渡や合併で引き継ぐ決まりが見当たりません
- 商標権の移転は、特許庁の原簿に登録しないと効力が生じません。事業譲渡や、社長個人の名義の商標を会社や買い手に移すときは、移転の登録の申請が要り、登録免許税は1件3万円です(商標法35条、登録免許税法)
- 商標権は10年ごとに更新します。更新の申請の期限や、5年分ずつ分けて払う登録料の払い忘れで、権利が消えていないかを確かめておけます
- 在庫は、買い手が「本当にあるか、値打ちが正しいか」を確かめます。季節商品の売れ残りは、通常の値段で売れないことが過去の実績などから明らかなら、税の上で評価損を計上できる例に挙がっています(法人税基本通達9-1-4)
- 縫製などを外に頼む会社は、2026年1月1日に施行された取適法(旧・下請法)を守っているかを、買い手が調べることがあります。シーズン後の売れ残りを外注先に引き取らせることや「歩引き」は、国のガイドラインで違反の例に挙がっています
- 借りている店舗を事業譲渡で渡すには、貸主の承諾が要ります(民法612条)。手数料と手元に残る額は、譲渡額5,000万円で計算すると機関ごとに見られます
国の数字で見る、衣料品の市場とアパレルのM&A
社長
アパレルの会社を売る話は、実際にあるのですか。服の商売は年々厳しいとも聞きます。
案内役
国の統計で、衣料品の売上の大きさと、国の登録機関に報告されたM&Aの件数を見られます。M&Aの件数は、業種の大きな区分でしか絞れません。
経済産業省の「商業動態統計」で、2025年の販売額を見ました(参考表 2025年。業種別商業販売額)。
| 業種 | 2025年の販売額 | 前年比 |
|---|---|---|
| 織物・衣服・身の回り品小売業 | 7兆4,470億円 | 1.3%増 |
| 衣服・身の回り品卸売業 | 6兆5,220億円 | 4.1%減 |
| 繊維品卸売業 | 2兆3,430億円 | 4.8%減 |
商業動態統計は、2025年1月分から、調べる先を選ぶもとの名簿を新しくしました(経済産業省「最近の見直し」)。表の前年比は経済産業省が公表した増減率で、2024年の額と2025年の額を割り算した割合とは一致しません。このため、この記事では2025年の額を2024年以前の額と並べていません。
経済産業省の資料「繊維産業の現状と政策について」(2024年5月)には、次のことが書かれています。
- 市場の大きさ: 織物・衣服・身の回り品小売業の販売額で見た衣料品等の国内市場は、1990年代に入って減り、2000年代以降は横ばい。グラフでは1991年の15.3兆円が最も大きく、2022年は8.7兆円(4ページ)
- 輸入: 国内のアパレルの供給点数は、1990年の約20億点から2022年には1.8倍以上に増えた。2022年の輸入浸透率は数量ベースで98.5%(5ページ。日本繊維輸入組合の調べから作成)
- 作る側: 繊維産業の事業所は約1.3万(2021年。個人経営を除く)で、製造業全体の事業所の6.0%。従業者は約23.1万人(3ページ。経済構造実態調査から作成)
- 分業: 原糸・生地・染色加工・縫製の各工程が分かれた分業の形で、アパレルは中国・東南アジアなどからの輸入に頼る度合いが強まっている(9ページ)
国の「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」は、業種を大きな区分でしか絞れません。衣服の卸や小売の会社は「卸売業、小売業」に、服を縫う会社は「製造業」(繊維工業)に入ります。売り手側の件数です(2026年10月16日に確認)。
| 年度 | 売り手側の全体 | うち卸売業・小売業 | うち製造業 |
|---|---|---|---|
| 2022年度 | 4,036件 | 562件(13.9%) | 584件(14.5%) |
| 2023年度 | 4,681件 | 652件(13.9%) | 686件(14.7%) |
| 2024年度 | 4,940件 | 792件(16.0%) | 710件(14.4%) |
2024年度の卸売業・小売業792件のうち、株式譲渡は559件(70.6%)、事業譲渡は204件(25.8%)で、651件は仲介の支援を受けたものでした。製造業の710件では、株式譲渡が618件(87.0%)です。どちらの区分にも、食品や機械、部品の加工などの会社が入り、衣料品だけの数ではありません。国の登録機関から報告のあった案件だけの集計で、すべてのM&Aを含むものでもありません。
後継者がいないときの道の全体は、後継者がいない会社の選択肢にまとめています。
売り方で変わる、ブランド・在庫・契約の引継ぎ
社長
会社ごと売るのと、事業だけを売るのとで、何が変わりますか。
案内役
株式譲渡なら、会社がそのまま残るので、商標も在庫も契約も会社に残ります。事業譲渡では、一つずつ移します。
| 引き継ぐもの | 株式譲渡 | 事業譲渡 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 会社の名義の商標権 | 会社に残る | 移転の登録をして移す。登録で効力が生じる | 商標法35条 |
| 社長個人の名義の商標権 | 会社か買い手に移すなら、移転の登録が要る | 同じ | 商標法35条 |
| 在庫 | 会社に残る。買い手が数と値打ちを確かめる | 譲る資産として一覧にして決める | 参考資料5・72ページ |
| 取引先との契約 | 原則として続く。チェンジ・オブ・コントロール条項に注意 | 相手の同意を取って切り替える | 参考資料1ページ |
| 借りている店舗 | 借り主の会社は同じ。条項があれば貸主と話し合う | 貸主の承諾が要る | 民法612条、ガイドライン22・56ページ |
| 社員の雇用 | 原則として続く | 一人ひとりの承諾が要る | 参考資料1ページ、民法625条 |
中小M&Aガイドライン(118ページ)は、株式譲渡は一般的に許認可の取り直しや登記の手続きが要らず、手続きが簡単だとしています。事業譲渡は、資産などを一つずつ移す手続きが要り、許認可も原則として取り直しになるとしています。参考資料(1ページ)は、事業譲渡で譲る事業には、ノウハウや知的財産権なども含まれるとしています。
ガイドライン(30ページ)は、買い手が評価する要素として、知名度・ブランド・信用、店舗網、知的財産権、優良な取引先との商流などを挙げています。ブランドを長く育ててきた会社では、その中身を書類で示せるかが確かめどころになります。
ブランドの商標権は、登録で移す
社長
ブランドの名前は、商標の登録をしています。ただ、出したのはずいぶん前で、名義が会社だったか私個人だったか、はっきりしません。
案内役
商標権は、特許庁の原簿に登録してはじめて移ります。誰の名義か、いつまで有効かを、まず確かめておけます。
商標法と特許庁の案内に書かれている、移すときの主な決まりです。
- 登録で移る: 商標権は設定の登録で生まれる(商標法18条)。移転は、相続や合併などの一般承継によるものを除き、登録しなければ効力を生じない(商標法35条で準用する特許法98条1項1号)。合併や会社分割などの一般承継のときは、遅滞なく特許庁長官に届け出る(同条2項)
- 登録までの日数: 特許庁は、申請書に不備がなければ、受付日から土日祝日を除き15日で原簿に登録し、登録の効力は申請書の受付日から生じるとしている
- 登録免許税: 移転の登録は1件3万円。相続や法人の合併による移転は1件3千円(登録免許税法 別表第1 第16号)
- 分けて移す: 指定商品が2つ以上あれば、指定商品ごとに分けて移すこともできる(商標法24条の2)
- 使用権: 他人の商標を使わせてもらう権利(通常使用権)は、相続などの一般承継を除き、商標権者の承諾がなければ移せない(商標法31条3項)。ほかの会社と商標を使わせる・使わせてもらう契約があれば、一覧にしておける
権利者の名義は、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)の登録情報でも見られます。特許庁の案内によると、住所は市区町村までの表示で、申請書を出す前には最新の登録原簿を確かめるよう求めています。
商標権には期限があります。払い忘れなどで消えていないかを、売る前に見ておけます。
| 確かめること | 決まり | 根拠 |
|---|---|---|
| 存続期間 | 設定の登録の日から10年。更新の申請で更新できる | 商標法19条 |
| 更新の申請の時期 | 満了の6か月前から満了の日まで。過ぎても6か月以内なら、登録料と同じ額の割増登録料を払って申請できる | 商標法20条・43条、施行規則10条 |
| 期限までに申請しないとき | 満了の時にさかのぼって消えたものとみなされる | 商標法20条4項 |
| 登録料を前半・後半に分けて払っているとき | 後半の分は満了の5年前までに払う。6か月の追納の期間も過ぎると、満了の5年前の日にさかのぼって消えたものとみなされる | 商標法41条の2 |
| 3年以上続けて日本で使っていないとき | 誰でも、登録の取消しの審判を請求できる | 商標法50条 |
社長個人の名義の商標: 中小M&Aガイドライン(36ページ)は、家族経営の会社では、会社の財産と経営者個人の財産が分かれていないことが多く、整理しておく必要があるとしています。経営者個人の名義の財産で会社の事業に使っているもの(例として社長個人の名義の土地)は、買い手に売るか引き継ぎ、できるだけ最終契約の前に整理しておくのが望ましいとも書いています(55ページ)。社長個人の名義で登録した商標も、会社の事業に使っているなら、会社に移すか買い手に移すかを、早めに決めておけます。
表明保証: ガイドラインの株式譲渡契約書のサンプルは、会社が事業に要る商標権などの知的財産権を持つか使う権利を持ち、他人の権利を侵していないことを、売り手が表明保証する形にしています(参考資料60ページ)。くわしくは表明保証とはにまとめています。
在庫の数え方と値打ち
社長
倉庫には、前のシーズンの服もかなり残っています。これは値打ちとして見てもらえるのでしょうか。
案内役
買い手は、在庫が本当にあるか、値打ちが正しいかを確かめます。税の上で値打ちを下げられる場面も、決まりで限られています。
中小M&Aガイドラインの参考資料(5ページ)は、会社の値段の出し方の一つ「時価純資産法」を、資産と負債を時価で評価し直す方法だと説明しています。在庫(棚卸資産)については、本当にあるか(実在性)と、値打ちのつけ方が妥当かを確かめて、時価にするとしています。値段の考え方は会社はいくらで売れる?にまとめています。
ガイドラインには、在庫について次のことも書かれています。
- 在庫の操作: M&Aを進める中で粉飾決算が明らかになり、M&Aが難しくなる場合がある。税理士が見つけたときに助言や指導をする不正の例として「期末在庫の操作」が挙がっている(116ページ)
- 在庫の情報の共有: 公認会計士の支援の例として、倉庫の担当と仕入れ・販売の担当の間で在庫の情報を共有し、在庫の値打ちと数をその時々につかめる社内の体制づくりが挙がっている(112ページ)
帳簿の在庫と倉庫にある在庫が合っていることが、話の出発点です。品番・色・サイズ・シーズン・数・置き場所・仕入れの値段を一覧にしておくと、買い手が確かめやすくなります。
税の上での在庫の値打ちには、法人税法の決まりがあります。
| 決まり | 中身 | 根拠 |
|---|---|---|
| 評価の方法 | 原価法(個別法・先入先出法・総平均法・移動平均法・最終仕入原価法・売価還元法)か、低価法から選ぶ | 法人税法29条、施行令28条 |
| 選び方と届出 | 事業の種類ごと、商品・製品・原材料などの区分ごとに選び、税務署に届け出る | 施行令29条 |
| 届け出ていないとき | 最終仕入原価法による原価法 | 施行令31条 |
| 値打ちを下げる(評価損) | 帳簿の額を下げても、原則として損金(税の計算で差し引ける費用)にならない。著しく陳腐化したときなどは、損金経理で帳簿の額を下げると、時価との差までの額を損金にできる | 法人税法33条、施行令68条1項1号 |
国税庁の法人税基本通達は、評価損を計上できる場面を次のように示しています。
- 季節商品の売れ残り: いわゆる季節商品で売れ残ったものについて、今後通常の値段では売れないことが、過去の実績などから明らかなとき(9-1-4)
- 破損や型崩れなど: 破損、型崩れ、たなざらし、品質変化などで、通常の方法では売れなくなったとき(9-1-5)
- 当たらない場合: 物価の変動、作りすぎ、建値の変更などで時価が下がっただけのとき(9-1-6)
在庫の評価の方法や評価損の扱いは、会社ごとに違います。税理士や税務署に確かめてください。
縫製などの外注先との取引と、取適法
社長
縫製は、長年つきあいのある小さな工場に頼んでいます。取引のやり方も、買い手に見られますか。
案内役
法務のデュー・ディリジェンスでは、コンプライアンスも調べることが多いとされています。下請けの取引の法律は、2026年1月から取適法に変わっています。
公正取引委員会によると、2025年5月23日に公布された改正法で、「下請代金支払遅延等防止法」は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(略称:中小受託取引適正化法、通称:取適法)になり、2026年1月1日に施行されました。法律では、発注する側を「委託事業者」、受ける側を「中小受託事業者」と呼びます(2条)。
経済産業省の「繊維産業における取引適正化推進のためのガイドライン」(2025年12月改訂)は、アパレル企業が紡績・織物・染色加工・縫製を請け負う事業者に製造や加工を頼むことを、取適法の「製造委託」の例に挙げています(10ページ)。
- 当てはまる大きさ: 資本金で決まるほか、改正で従業員の数の基準が加わった。製造委託では、従業員が300人を超える会社が300人以下の事業者に頼むときも当てはまる(法2条8・9項)。ガイドラインは、資本金3億円以下のアパレル企業や繊維商社でも、従業員が300人を超えれば対象になるとしている(9ページ)
- 発注する側の義務: 発注の中身を書面や電子メールなどで示す(4条)、取引の記録を作って保存する(7条。ガイドラインは2年間としている)、代金の支払期日を受け取りから60日以内で定める(3条)、遅れたら遅延利息を払う(6条)
- してはならないこと: 受け取りを拒む、支払いを遅らせる、代金を減らす、受け取った後に引き取らせる(返品)、著しく低い代金を不当に決める、などの11の行為(5条)
ガイドラインが繊維業界の違反の例として挙げているものです。
| 行為 | ガイドラインに挙がっている例 | ページ |
|---|---|---|
| 代金の減額(歩引き) | 既製服の縫製を頼んでいる会社が、自社の利益を確保するため、「歩引き」と称して代金に一定率を掛けた額を差し引いた | 24 |
| 返品 | 自社ブランドの衣料品を作らせている会社が、シーズン終了の時点で売れ残った分を引き取らせた | 28 |
| 返品 | 自社の店舗での商品の入れ替えを理由に、衣料品を引き取らせた | 28 |
違反が分かると、公正取引委員会は勧告などを行い、勧告したときは原則として事業者名や違反の概要を公表するとされています(ガイドライン51ページ)。発注の中身を示さなかったときや、記録を作らず保存しなかったときなどは、50万円以下の罰金の決まりもあります(法14条)。経済産業省の資料(2024年5月、50ページ)は、公正取引委員会が2024年3月に、婦人服などの小売りの事業者に対し、歩引きによる代金の減額で勧告をしたことを載せています。
中小M&Aガイドライン(126ページ)は、法務のデュー・ディリジェンスでは「許認可・コンプライアンス・環境問題等」も調べることが多く、株式譲渡では売り手の法的なリスクをそのまま引き継ぎやすいとしています。発注書と取引の記録がそろっているか、返品や代金から差し引く慣行が残っていないかを、売る前に見直しておけます。
反対に、縫製工場など頼まれる側の会社は、取引先との資本金や従業員の数の組み合わせによって、取適法で守られる側になります。主な取引先との取引基本契約に、株主が変わると相手が契約を解除できる「チェンジ・オブ・コントロール条項」がないかを見ておけます(ガイドライン22ページ)。製造業全体の確かめどころは、製造業のM&Aにまとめています。
借りている店舗と、ブランド名・会社名
社長
直営の店は、駅ビルと商店街で借りています。ブランドの名前は、会社の名前と同じです。
案内役
事業譲渡では、店舗を借りる立場を移すのに貸主の承諾が要ります。会社の名前を買い手が使い続けるときの決まりもあります。
- 事業譲渡: 借り主の立場(賃借権)を買い手に譲るには、貸主の承諾が要る(民法612条1項)。承諾を得ずに買い手に店を使わせると、貸主は契約を解除できる(同条2項)
- 株式譲渡: 借り主の会社は変わらない。ただ、賃貸借契約にチェンジ・オブ・コントロール条項があると、契約を続けるために前もって貸主と話し合うことが要る場合がある(参考資料1ページ、ガイドライン22・56ページ)
- 名義の変更: リース契約や賃貸借契約の名義の変更や保証人の変更は、クロージングの前から、リース会社や貸主と話し合いを始めることが多い(ガイドライン56ページ)
駅ビルや商業施設に出している店も、契約書に、株主が変わったときや事業を譲るときの決まりがあるかを見ておけます。敷金・保証金の精算や、内装を元に戻す範囲は、飲食店・美容室の売却にまとめています。
ブランドの名前が会社の名前(商号)と同じときは、会社法の決まりにも気をつけます。
| 決まり | 中身 | 根拠 |
|---|---|---|
| 会社の名前を使い続けるとき | 事業を譲り受けた会社が、譲った会社の商号を引き続き使うと、譲った会社の事業で生じた債務も払う責任を負う。譲り受けたあと遅滞なく、責任を負わない旨を登記するか、両方の会社から相手に通知すれば、その相手には責任を負わない | 会社法22条 |
| 売ったあとの商売 | 事業を譲った会社は、別の取り決めがない限り、同じ市町村と隣の市町村で、譲った日から20年間は同じ事業をしてはならない | 会社法21条 |
ブランドの名前が商号と同じでも、商標権は、上の節のとおり移転の登録で移します。屋号や店の名前が商号にあたるかなど、自分の会社に当てはまるかは、弁護士に確かめてください。
手数料と手元に残る額、相談の入口
社長
手数料はどのくらいかかりますか。どこに相談すればいいですか。
案内役
手数料は計算機で機関ごとに見られます。商標は特許庁、在庫の税は税理士、売るかどうかは公的な窓口でも相談できます。
国の登録データ(2026年10月12日取得)で、仲介の売り手側の最低手数料を届け出た2,506機関の中央値は300万円でした(入力の誤りとみられる10億円以上の3件を除く)。譲渡額3,000万円で計算する・譲渡額1億円で計算すると、機関ごとの手数料と手元に残る額を並べて見られます。計算機は、成功報酬に含まないと届け出た着手金・中間金を足し、月額報酬は足していません。中小M&Aガイドライン(63ページ)は、仲介者・FAの手数料には一般的な法規制がないとしています。費用の全体はM&Aにかかる費用の全体にまとめています。
ガイドライン(37ページ)は、特定の業種や地域に特化した仲介者・FAもあるとし、どんな支援が自分に要るかをよく考えるよう書いています。事業承継・引継ぎ支援センターは、経済産業省の委託を受けた機関が全国48か所に置く公的な窓口で、相談は無料です(60・66ページ)。くわしくは事業承継・引継ぎ支援センターとはをご覧ください。
確かめたいことごとの、聞く先の例です。
| 確かめたいこと | 聞く先 |
|---|---|
| 商標の名義・移転の登録・更新 | 特許庁(登録室)・弁理士 |
| 在庫の評価の方法と評価損 | 税理士・税務署 |
| 外注先との取引(取適法) | 公正取引委員会の相談窓口・弁護士 |
| 店舗の賃貸借・会社の名前・売ったあとの商売 | 貸主・弁護士 |
| 古物商の許可 | 営業所のある地域の警察署 |
| 売るかどうか・相手探し | 事業承継・引継ぎ支援センター・仲介会社 |
売るまでの流れは会社を売るにはにまとめています。ほかの業種の確かめどころは、製造業のM&A・飲食店・美容室の売却・クリーニング店のM&A・運送業のM&A・建設業のM&Aの記事にまとめています。
よくある質問
社長
ブランドだけを、ほかの会社に売ることはできますか?
案内役
商標法は、国や公益の団体の一部の商標や地域団体商標について、譲れない、または事業と一緒でなければ移せないと定めています(24条の2)。それ以外の商標権は、移転の登録をして移す形です(35条)。ブランドの値段のつけ方や税の扱いは、税理士に確かめてください。ブランドと一緒に在庫や店舗も渡すなら、事業譲渡として一つずつ決めます。違いは株式譲渡と事業譲渡の違いで比べています。
社長
売れ残りの在庫は、売る前に処分したほうがいいですか?
案内役
このサイトは、在庫をどうするかの助言はしません。税の上で評価損を計上できるのは、著しく陳腐化したときなど政令で決められた場面で、通達は、季節商品の売れ残りで今後通常の値段では売れないことが明らかなときを、その例に挙げています。物価の変動などで値段が下がっただけでは当たりません(法人税法施行令68条、法人税基本通達9-1-4〜9-1-6)。どの在庫をどの値段で渡すかは、買い手と決めることです。扱いは税理士に確かめてください。
社長
縫製工場を営んでいます。M&Aのことを、取引先にいつ話せばいいですか?
案内役
中小M&Aガイドライン(31ページ)は、取引先や社員には、原則としてできるだけクロージングの後(早くとも最終契約の後)に知らせるとしています。取引先に意図せず話が伝わり、M&Aが止まった例もあるとしています。一方で、取引基本契約にチェンジ・オブ・コントロール条項があれば、前もって相手との話し合いが要ることがあります(参考資料1ページ)。知らせる時期は、まず買い手と話し合って決めます。社員への伝え方は会社を売ることを、家族と社員にいつ・どう伝える?にまとめています。
社長
会社にしていない、個人のブランドです。どう売るのですか?
案内役
個人事業主のM&Aは、事業譲渡の形が通常とされています(中小M&Aガイドライン49ページ)。個人の名義の商標権は、移転の登録をして買い手に移します。たたむか売るかの比べ方は会社をたたむか、売るかにまとめています。
社長
許可の手続きより、商標と在庫と契約を一つずつ確かめるのですね。まず、商標の名義と期限、在庫の一覧、外注先との発注書と、店舗の契約書を出してみます。
案内役
株式譲渡なら会社に残り、事業譲渡なら一つずつ移します。商標は登録で移ること、在庫は数と値打ちを買い手が確かめることを、先に押さえておくと話を進めやすくなります。手数料は計算機で、商標は特許庁、税は税理士に確かめてください。
このデータについて
- 法令は、2026年10月16日にe-Gov法令検索で確かめました。取適法は、2026年1月1日に施行された改正後の条文です
- 商標の移転の手続きと登録までの日数は、特許庁の「権利の移転等に関する手続」「移転登録申請の受付から原簿への登録まで」で、2026年10月16日に確かめました
- 在庫の評価損の扱いは、国税庁の法人税基本通達(9-1-4〜9-1-6)で確かめました
- 取適法の対象や違反の例は、経済産業省「繊維産業における取引適正化推進のためのガイドライン」(2025年12月改訂。ページはPDFのページで、印字の番号と同じ)で確かめました。ガイドラインは、取り上げた事例が違法かどうかは実際の取引に即して精査する必要があるとしています
- 販売額は、経済産業省「商業動態統計」の参考表(2025年。2026年6月30日公表)の数値表 第1部 第1表です。2025年1月分から調べる先の名簿が新しくなり、公表された前年比は2024年と2025年の額の割り算と一致しないため、2025年の額を2024年以前の額と並べていません。市場の推移・輸入浸透率・繊維産業の事業所の数は、経済産業省「繊維産業の現状と政策について」(2024年5月。ページは印字の番号)で、グラフの値はページを画面に出して読みました
- M&Aの件数は、M&A支援機関登録制度HP「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」で、業種「卸売業、小売業」「製造業」に絞って2026年10月16日に確かめました。衣料品だけの数ではなく、国の登録機関から報告のあった案件だけの集計です
- 最低手数料の中央値は、M&A支援機関登録制度HP 登録支援機関データベースを加工して作成しました(取得日 2026年10月12日)。届出のある2,509機関から、入力の誤りとみられる10億円以上の3件を除いて数えました
- 中小M&Aガイドライン(第3版)と参考資料のページは、PDFのページです
- このサイトは、特定の仲介会社や買い手、専門家をすすめません。商標の手続き、税、取引の法律についての助言は行いません。個別のことは、特許庁・税務署・公正取引委員会などの窓口や専門家に確かめてください
出典
- e-Gov法令検索 商標法
- e-Gov法令検索 商標法施行規則
- e-Gov法令検索 特許法
- e-Gov法令検索 登録免許税法
- 特許庁 権利の移転等に関する手続
- 特許庁 移転登録申請の受付から原簿への登録まで
- e-Gov法令検索 法人税法
- e-Gov法令検索 法人税法施行令
- 国税庁 法人税基本通達 第9章第1節第2款 棚卸資産の評価損
- e-Gov法令検索 製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律
- 公正取引委員会 取適法
- 経済産業省 繊維産業における取引適正化推進のためのガイドライン(令和7年12月改訂)
- 経済産業省 製造産業局 生活製品課 繊維産業の現状と政策について(2024年5月)
- 経済産業省 商業動態統計 参考表(2025年)
- 経済産業省 商業動態統計 最近の見直し
- e-Gov法令検索 古物営業法
- e-Gov法令検索 古物営業法施行規則
- e-Gov法令検索 民法
- e-Gov法令検索 会社法
- 中小企業庁 中小M&Aガイドライン(第3版)(2024年8月)
- 中小企業庁 中小M&Aガイドライン(第3版)参考資料
- 中小企業庁 M&A支援機関登録制度「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」M&A形態の割合(卸売業、小売業)
- 中小企業庁 M&A支援機関登録制度「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」FAと仲介の利用割合(卸売業、小売業)
- 中小企業庁 M&A支援機関登録制度「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」M&A形態の割合(製造業)
- 中小企業庁 M&A支援機関登録制度「登録支援機関を通じた中小M&Aの集計結果」M&A形態の割合(全業種)
- 中小企業庁 M&A支援機関登録制度 登録支援機関データベース
